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1章
サキュバット
しおりを挟むさっきの二手に別れるところまで戻り、今度はもう一つの穴へ。
穴を進むと、天井の高さが100メーターくらいある大きなフロアーに出たよ。
そこに飛来する多数のコウモリが、突然突っ込んできた。
いや……違う、コウモリにしては大きい、大型犬サイズだ。
―――――――――――――――――
魔族 サキュバット LV 7
生命力 110/120
魔法力 232/232
ステータス
攻撃力 13
素早さ 129
知能 23
運 13
『へんげ』
『虜』
――――――――――――――――
「モンスターなんだ!」
全部で8匹、サキュバットたちが高速接近してくるよ。
流石は素早さ129。
目にも止まらない速さで、鋭いくちばし攻撃をしてくるけど、6匹のSSレアスライムたちは軽く躱しているね。
いや、レベル1のSSたちだけ、ちょっとしんどいかな。
ちなみに『目にも止まらない速さ』って言ったのは、一般的な意味で、俺には超スローモーションのように見えちゃってるよ。
素早さの値が高いと、動体視力も一緒に上昇するみたい。
「ピイィッ!!」
ついにレベル1の一匹が攻撃を食らい、泣きながら俺にくっついてきたよ。
「核が傷つかなくてよかったね」
「う、うん……」
涙目になりながら三角にかじられた頭半分を、もそもそ回復させている。
残りの1レベ2匹も「ピィピィ」泣きながら俺にくっついて来たよ。
サキュバットは無理だったみたい。
俺は触手でレベル1のSSたちを抱えて、引き続き攻撃を躱す。
SS3匹抱えたくらいで、速度は落ちないもんね。
「わあ、はやい~」
「たのしい」
「もっと」
SSたち喜んでいるね。
「メリーゴーランドじゃないよ」
「「「はーい」」」
「な、なんなの、このスライムっ!?」
「ちょっと、そこっ! 早く仕留めなさいっ!」
「なによ! あんたこそ、トチッてんじゃん」
「うるさいわね」
サキュバットさんたち会話ができるんだ。
知能が23だからだね。
今の俺なら軽く8匹全部倒せるけど、攻撃はしない。
3レベのSSたちも、避けるだけで、『どうしょう……』って目で俺を見ているよ。
「あのお……サキュバットさん? サキュバットさん? お話しがあるんですけど」
やっぱり会話ができるなら、モンスター同士、平和的に解決したいよね。
別に俺たちは洞窟を攻略しようってわけじゃないんだもん。
ここに来るまで、ボーン・キラーウルフとラミアフィッシュを食べちゃったけど。
そうそう、伝説の剣も無断で貰ったけど……、いいよね、たぶん。
あれって攻略になるのかな?
サキュバットさんたちが攻撃を止めて地面に降りたよ。
二本の脚で立ち、鳥の羽根で覆われたその身体を例えるなら人間コウモリだね。
顔を見合わし、つり上がったまん丸い目をカクカク動かし、首をかしげている。
「スライムって話せたっけ?」
「さあ。でもこの洞窟に入れたんだから、ザコにちがいねえ」
「じゃあ、なんで殺せねーんだよ」
「早いだけのスライムか」
当たりですよ。
「あのですね。私たちは悪さしにこの洞窟に入ったのではありませんから。
あなたたちのボス、エインシェントさんを、チラッと見学したいだけなんですよ」
サキュバットさんたちがビクッと身体を震わせたよ。
ボスをひと目見るって、大それた、恐れおおい発言だったのかな?
「あのお、無理なら弱点でもいいので教えてくれませんか? 人間が立ち向かうのに有効的な装備とかありますかね?」
「……バカかこいつ?」
「所詮スライムだな」
「そうか、きび団子でも持っていれば……」
「あたしら、キジじゃねえしッ!」
「おい、ナメたコイツを、あれでビビらせてやれ」
「あれね」
少ししてウオオオオッ! と雄叫びが轟いた。
緑色の巨体を揺さぶるモンスターが、100メートルある天井に頭をぶつけて登場したよ。
「ビビっただろう、ギガントオーガだ。貴様のようなザコは一撃よ。偶然にしろここまで来たのは褒めてやる。さっさとこの洞窟から出てゆけ」
「……あら」
―――――――――――――――
魔族 サキュバット LV 7
(巨人 ギガントオーガ へんげ中)
―――――――――――――――
さっき一匹のサキュバットが、大岩の陰にこそこそ隠れたけど、能力の『へんげ』を使ったんだね。
俺を脅かしたいんだろうけど、バッチリ見えてんだよね、ステータス確認で。
見せかけだから、強さまはサキュバットのままだね。
SSレアスライムたちは『ステータス確認』できるのに、オーガに驚いてしずく体型をトゲトゲにしているよ。
素直だなあ。
「どうしたスライムども。命が惜しくないのか? ひっひっひ」
10
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