25 / 182
1章
俺が親だから
しおりを挟む俺が高速で逃げれば、人間の目では捉えられない。
風が吹いたくらいに思われて終わりだろうけど、間違いなくSSたちが追ってきて、姿を見られちゃう。
かと言ってSSたち6匹担いで走れば、流石に見つかるだろうなあ。
ここはもう、人間化して大木の影にうずくまるしかないね。
ボーンキラー・ウルフに襲われ傷つき、歩くこともできず、誰かの救助を待っていた情けない魚屋さんを装う。
SSたちは木の枝に擬態だね。
もし、俺に何かあっても、騒がない、動かない、枝に化けたまま俺の指示(人間化とスライム化)があるまで待機と命令しておいたよ。
◆
「無事でよかった、ヒジカタさん! 心配したぞ」
俺はイメージどおり見つかり、店主には泣かれ、青年にはどうしてこんな場所にいるのか質問されたよ。
「すいません、ちょっとドジ踏んでしまって……エへへへ」
「……歩けそうにないな」
俺の右足の傷(傷のように見せかけてるよ)を確認した青年ロアンが、懐から布を出して、手際よく包帯にしてくれたよ。
親切な人だな。
その様子を、大木の枝に化けたSSたちが、じぃ~っと見ている。
枝の一部を眼玉にして――。
あ~もう、分からないと思って、キョロキョロしちゃダメだって。
「ここは危険だ。私におぶさりなさい。自宅まで連れてゆこう」
ロアンが中腰になってくれたんだけど……。
「さっ、遠慮は要らんぞ」
いや、遠慮とかじゃなく、付いてくるからSSたちが。
待機と命令しているけど、たぶん。
「私は名衛軍第三部隊所属、ロアンホーリー1等兵」
名衛軍?
自衛軍じゃないんだ。
あ~、そうか、たしかファーストくんが言っていた、貴族の子供ばかりを集めた軍のことだな。
城内勤務ばかりで、ろくに武術訓練もせず、自衛軍を小馬鹿にしているとか。
でも、なんだか話しが違うなあ。
ロアンくんのウルフを一瞬で倒した剣技といい、高ステータス値といい、相当な戦闘訓練と実戦を経験しないと無理だよ。
それに、あの小柄な身体で、重そうな長剣を軽々と振り回せるなんて、腕力も相当あるぞ。
ファーストくんが嘘をついた?
いやいや、たまたまロアンくんだけが特別凄い人で、たぶん名衛軍でもトップクラスだろうね。
店主が説明してくれたけど、ロアンくんは名衛軍の第三部隊。
おもにキキン街の治安を守るのが仕事。日本でいう警察だね。
「いちおう第二部隊希望なのですが」
ロアンくんが苦笑いする。
名衛軍は戦闘能力の高い者はモンスター討伐が主な第一部隊に所属し、順に第二、第三と戦闘が少ない部隊に所属するそうだ。
つまり、信じられないけど、ロアンくんですら戦闘力が低い部類になるわけだね。
ちなみにロアンくんは俺の肩までしか身長がないけど、金髪のスーパー美少年だよ。
端正な顔立ちは貴族の生まれだからかな。
しかし、名衛軍が凄いのはよく分かったけど、逆にファーストくんが分からなくなってきたよ。
「さあ、みんなが心配している」
「いや、あのお……」
俺は強引にロアンくんにおんぶされてしまったよ。
困ったなあ。
SSたちどうしよう。
店主が照らす明かりの後を、俺を背負ったロアンくんが進む。
少しづつ遠ざかってゆく大木。
「……、……」
どうしてかな、SSたちが追いかけて来ない。
たしかに、俺はSSたちに『待機』と命令はしたよ。だけど、あの子たちは無視して俺に付いてくると思っていた。
追いかけないほうが良いと、察したのかな。
俺のためを考えて。SSたちなりに――。
大木の枝がガサガサと揺れ、そこに作られたまん丸い6つの眼は、ぜんぶ俺を見ている。
潤んでいるのかな。
なんだか悲しそう。
いや、悲しいに決まっているじゃないかよ。
SSたちは生まれたばかりで、初めて見る外界は――、いや全てが、この世界全部が不安だらけのはずじゃないか。
俺の母ちゃんは、俺たちを産むと洞窟に閉じ込めて放置したよ。
無責任だと、ずいぶん酷い親だと思ったけど、生まれたばかりのSSたちを放置する俺も同じじゃないかよ、ほんと。
一人前になるまで俺が、1番頼りになる親が側にいなくてどうする。
えーい!
もう、どうとでもなれっ!!
「……あ、あのう、止まってもらえませんか?」
「どうされました?」
「洞窟のあたりに子供がいるんです。まだ子供が残っているんです!」
「……子供?」
「ヒジカタさん、ここに子供ですか?」
「そう、そうなんだ。迷ったらしくて、偶然見つけて。だけど記憶が無いみたいで」
俺は人間化のサインをしたよ。
ガサガサッと枝がしなると同時に、SSたちが人間の子供に変身したよ。
こっちにトコトコ歩いてくるんだけど。
もちろん、すっぽんぽんで。
振り返った店主とロアンくんが信じられないって顔をしているんだけど。
10
あなたにおすすめの小説
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる
静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】
【複数サイトでランキング入り】
追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語
主人公フライ。
仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。
フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。
外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。
しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。
そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。
「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」
最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。
仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。
そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。
そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。
一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。
イラスト 卯月凪沙様より
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる