SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)

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1章

俺が親だから

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 俺が高速で逃げれば、人間の目では捉えられない。

 風が吹いたくらいに思われて終わりだろうけど、間違いなくSSたちが追ってきて、姿を見られちゃう。
 かと言ってSSたち6匹担いで走れば、流石に見つかるだろうなあ。

 ここはもう、人間化して大木の影にうずくまるしかないね。
 ボーンキラー・ウルフに襲われ傷つき、歩くこともできず、誰かの救助を待っていた情けない魚屋さんを装う。

 SSたちは木の枝に擬態だね。
 もし、俺に何かあっても、騒がない、動かない、枝に化けたまま俺の指示(人間化とスライム化)があるまで待機と命令しておいたよ。

 
 ◆


「無事でよかった、ヒジカタさん! 心配したぞ」

 俺はイメージどおり見つかり、店主には泣かれ、青年にはどうしてこんな場所にいるのか質問されたよ。

「すいません、ちょっとドジ踏んでしまって……エへへへ」

「……歩けそうにないな」

 俺の右足の傷(傷のように見せかけてるよ)を確認した青年ロアンが、懐から布を出して、手際よく包帯にしてくれたよ。
 親切な人だな。

 その様子を、大木の枝に化けたSSたちが、じぃ~っと見ている。
 枝の一部を眼玉にして――。
 あ~もう、分からないと思って、キョロキョロしちゃダメだって。

「ここは危険だ。私におぶさりなさい。自宅まで連れてゆこう」

 ロアンが中腰になってくれたんだけど……。

「さっ、遠慮は要らんぞ」

 いや、遠慮とかじゃなく、付いてくるからSSたちが。
 待機と命令しているけど、たぶん。

「私は名衛軍第三部隊所属、ロアンホーリー1等兵」

 名衛軍? 
 自衛軍じゃないんだ。

 あ~、そうか、たしかファーストくんが言っていた、貴族の子供ばかりを集めた軍のことだな。
 城内勤務ばかりで、ろくに武術訓練もせず、自衛軍を小馬鹿にしているとか。

 でも、なんだか話しが違うなあ。
 ロアンくんのウルフを一瞬で倒した剣技といい、高ステータス値といい、相当な戦闘訓練と実戦を経験しないと無理だよ。
 それに、あの小柄な身体で、重そうな長剣を軽々と振り回せるなんて、腕力も相当あるぞ。

 ファーストくんが嘘をついた?
 いやいや、たまたまロアンくんだけが特別凄い人で、たぶん名衛軍でもトップクラスだろうね。
 
 店主が説明してくれたけど、ロアンくんは名衛軍の第三部隊。
 おもにキキン街の治安を守るのが仕事。日本でいう警察だね。
 
「いちおう第二部隊希望なのですが」

 ロアンくんが苦笑いする。
 名衛軍は戦闘能力の高い者はモンスター討伐が主な第一部隊に所属し、順に第二、第三と戦闘が少ない部隊に所属するそうだ。
 つまり、信じられないけど、ロアンくんですら戦闘力が低い部類になるわけだね。

 ちなみにロアンくんは俺の肩までしか身長がないけど、金髪のスーパー美少年だよ。
 端正な顔立ちは貴族の生まれだからかな。

 しかし、名衛軍が凄いのはよく分かったけど、逆にファーストくんが分からなくなってきたよ。

「さあ、みんなが心配している」

「いや、あのお……」

 俺は強引にロアンくんにおんぶされてしまったよ。
 困ったなあ。
 SSたちどうしよう。
 
 店主が照らす明かりの後を、俺を背負ったロアンくんが進む。
 少しづつ遠ざかってゆく大木。
 
「……、……」

 どうしてかな、SSたちが追いかけて来ない。
 たしかに、俺はSSたちに『待機』と命令はしたよ。だけど、あの子たちは無視して俺に付いてくると思っていた。
 追いかけないほうが良いと、察したのかな。
 俺のためを考えて。SSたちなりに――。

 大木の枝がガサガサと揺れ、そこに作られたまん丸い6つの眼は、ぜんぶ俺を見ている。
 潤んでいるのかな。
 なんだか悲しそう。

 いや、悲しいに決まっているじゃないかよ。
 SSたちは生まれたばかりで、初めて見る外界は――、いや全てが、この世界全部が不安だらけのはずじゃないか。

 俺の母ちゃんは、俺たちを産むと洞窟に閉じ込めて放置したよ。
 無責任だと、ずいぶん酷い親だと思ったけど、生まれたばかりのSSたちを放置する俺も同じじゃないかよ、ほんと。

 一人前になるまで俺が、1番頼りになる親が側にいなくてどうする。

 えーい! 
 もう、どうとでもなれっ!!

「……あ、あのう、止まってもらえませんか?」

「どうされました?」

「洞窟のあたりに子供がいるんです。まだ子供が残っているんです!」

「……子供?」
「ヒジカタさん、ここに子供ですか?」

「そう、そうなんだ。迷ったらしくて、偶然見つけて。だけど記憶が無いみたいで」

 俺は人間化のサインをしたよ。

 ガサガサッと枝がしなると同時に、SSたちが人間の子供に変身したよ。
 こっちにトコトコ歩いてくるんだけど。
 もちろん、すっぽんぽんで。
 
 振り返った店主とロアンくんが信じられないって顔をしているんだけど。


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