39 / 182
1章
仕組み
しおりを挟む「サキュバットのボスって『エインシェント』じゃないの?」
「はい、そうです」
オーガにへんげしていたサキュバットが言うには、『エインシェント』はツェーン迷宮の最深部に眠る古竜で、サキュバットとは無関係のモンスター。
最上部(1層目)には、『ボーンキラー・ウルフ』『べーゼ・ラミアフィッシュ』『サキュバット』の3種だけが生息しており、サキュバットが最も数が多い。
サキュバットのボスは女王蜂みたいに、産卵で数を増やすと言う。
俺の母ちゃんと同じだね。
ラミアフィッシュは、モンスターと言うより魚に近く、交尾で産卵し数を増やすね。
ボーンキラー・ウルフだけが特種だそうだ。(これは後ほど説明)
「へーっ、てっきり『エインシェント』が全モンスターのボスかと思ってたよ」
「モンスター同士、稀に共存する種もいますが、ほとんどが敵です。私が知るのは、この階層と直ぐ下の階層だけなので、なんとも言えませんが」
「なるほど、じゃ下の階層から侵略して来ることもあるんだ」
「いえ、今のところ階層ごとに結界が張られていて、強いモンスターやレベル(各階層ごとに数値が異なる)により、通過できません」
洞窟の入口にあったゴムみたな膜が各階層を仕切り、強いモンスターが上がって来られない仕組みね。
「だけど、近年その結界が弱くなっており、何年か後には無くなると予想され、困っています」
「困る?
……ああ、上がってきた強いモンスターに、サキュバットは間引きされるってわけか」
「はい。なので、外界に本拠を移す計画がありまして……」
「それがキキン国の支配ね。キキンの自衛軍、総サキュバット化なわけね」
「はい……」
結界の弱体化。
こりゃあ、人間にとっても深刻な問題だな。
下のモンスターが地上に出てきたとき、人間だけで対処できるだろうか。
「じゃ、1番下にいる『エインシェント』は、相当強いんだな」
「だと思います。見たことないのでなんとも言えませんが」
「なに話ちてるの」
「ちゃんと飛ばないと」
「そうですね~、はい」
このサキュバットは、SSたちに頭の触覚みたいなのを引っ張られても、にこやかだなあ。
内心でムカついてるって感じもしない。
自衛軍に化けていたサキュバットとだいぶ違う。
そうか、このサキュバットはレベル7。
洞窟の結界を通過できないレベルだから、洞窟勤務なんだ。
洞窟勤務って、なんか、言い方が変だね。
いちおう訊ねてみるか。
「ギガントオーガに『ヘンゲ』してたけど、以前俺を脅したのもキミなのか?」
「あ、はい。そうです」
正直だな。
つまり洞窟に踏み込んで来た人間(外敵)や、ボーンキラー・ウルフを始末したことはあるだろうけど、外に出てキキンの民に危害を加えていないわけだ。
と言っても、キキン国の支配計画を影で支えていたわけで……やっぱり同罪?
うーん。
「脅せと仲間に命令されたのか」
「まあ、そうですね。脅す役は、みんなやりたがらないので、よく振られますね、ははは」
「……」
コイツって、頼まれるとNOと言えない性格なんじゃないのか?
「さっき、どうして逃げなかったんだ?」
「いちおう任されたので」
「仲間が逃げたのに?」
「ええ、まあ」
「普通、自分より強い敵に襲われたら、さっさと逃げるだろう。律儀に任務を遂行して死んだら元も子もないぞ。変なとこで真面目だなキミは」
「まあ、ははは」
コイツ、いつも損な役回りを引き受ける性格か。
サキュバットにもいるんだなあ、俺みたなヤツが。
「なあ、キミの名前はなんだ」
「私ですか? ポラリスと言いますが、どうかしましたか」
「どうかしましたって、ただ名前を訊ねただけだよ」
「ああ、そうですね……」
サキュバットの表情は分かりづらい。コウモリだもんね。
だけど、なんとなく暗いオーラが漂っているよ。
ああ、そうか。
「確かに俺は、ボスとの話し合いの結果により、全サキュバットを収納庫送りにするかもしれないけど、ポラリスくん、キミが生涯人間に危害を加えないと誓うなら、このまま洞窟にいてもらうよ」
「えええええっ!」
驚き、背中を丸めてしまったポラリスくん。うっかりSSたちを落としてしまう。
慌てて転んだSSを起こすけど。
「「「ぶーぶー」」」
「あー、みんな。そんなに刺しちゃダメだって!」
「「「ぶーぶー」」」
SSたちは金串みたいにさせていた触手を、しぶしぶスライムボディに収めたよ。
「なにやってるの、ポラリス!」
「ちゃんとしないと、ぐるぐるに入れちゃうからね」
「ごめんねえ、みんな」
ポラリスと呼び捨てにされても、苦笑いして頭を下げているよ。
刺された脚や腕から血が流れ、痛いだろうに、無理して。
「しかたがないなあ」
「ゆるしてあげるね」
「こんどはやさしく飛んでよね、ポラリス」
SSたちが再びポラリスくんに飛び乗ったよ。
「人間に一生尽くしますので、よろしくお願いします」
「いや、そこまでしなくても良いから」
「……はい、でも」
ポラリスくんは舎弟の気質があるのかな。
「はやくしてよね」
SSが触覚をクイクイ引っ張ったよ。
「あ、あの……、手綱じゃなので」
「気にしなきゃいいじゃん」
「けちんぼ」
「きゃっきゃっ♪」
人間に尽くす以前に、SSたちにおもちゃにされているんだけど。
気の毒だなあ。
10
あなたにおすすめの小説
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる
静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】
【複数サイトでランキング入り】
追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語
主人公フライ。
仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。
フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。
外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。
しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。
そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。
「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」
最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。
仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。
そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。
そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。
一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。
イラスト 卯月凪沙様より
スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる