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2章
商人ギルド
しおりを挟む俺はアシダダムの提示した紙をビリビリに破いたよ。
アシダダムが気をつけろと言っていた意味――。
当初は俺を闇討ちするようなニュアンスだったけど、ハヤテや俺の身体能力の高さに、こりゃダメだ、と狙いを変更したんだ。
ひねり出した案が、魚屋連中と結託して、俺と店主の店舗だけ孤立させる気だ。
「あ~、だから市場で、魚が買えなかったんだ」
「そう……悪いがお前には売れねえ、って言われたよ。
知り合いの漁師たちも、口を揃えて同じだったぜ」
市場だけじゃなく漁師にも圧力をかけたわけか。
従わなければ、仕入れもさせないつもりだ。
考えたなあ。
えげつない、ぼっち作戦。
どうせ戦うのなら、商売で競おうよ。
商売人なんだからね。
「アシダダムは、内区で商人ギルド長もやっているからな」
「商人ギルドって……?」
「ああ~、さっきのアシダダムのやり口そのままだ、ヒジカタさん」
キキンの首都は、城を中心として高い塀に囲まれた貴族連中が住む内区と、その周囲に住む一般庶民たちの外区とに2分される。
店主の店がある東商店街と、俺が今度建てようとしている店舗もこの外区に含まれるね。
外区にいる庶民は、あまり裕福な人たちでないので、商人は外区を相手にせず、みんな内区で店を出しているわけ。
外国から入ってくる武器や貴金属、香料等の良品はほぼ全て内区で取引がなされているんだよね。
「それに商人ギルドが関与するって話しか」
「そういうことだ」
商人ギルドは、内区の商人を全てまとめているから、価格を統一したり(もちろん売り手が有利になるように)、外国から入ってくる品を安価で買い叩いたり、国の代行で税(関税)を徴収したりもするそうだ。
「税までもねえ」
「外国から来た冒険者が内区で剣を買ったら、とんでもない高値で買ってしまった。
安いと思って買った回復ポーションは酒で薄めた粗悪品だった、なんて泣き言を聞いたことがよくある」
「キキン国のイメージ悪くなるなあ、取り締まる役人は何をしているんだ?」
「それが、ほら、グルメグランプリで審査員をやっていた、例の――」
「あ~ビンソン?
寿司屋で追い返したけど、まさか、あいつが担当」
「そう。ビンソンが商人ギルドと裏でつるんで、税をごまかしてるって話しだ」
最悪だな、キキン国。
価格操作に、関税のちょろまかしか。
そりゃまあ、帳簿を誤魔化せば幾らでも出来るだろうよ。
国王さん知ってるのかな、この実態を。
まあ、知ってたら、何かしら手段をとっているだろうけど。
しかし、貪欲だなあ、アシダダム。
宿屋、飲食業、内区じゃギルド長もやってて、ウハウハに稼いでいるだろうに。
さらに、刺し身でも儲けようってわけだよ。
「それでな。……ヒジカタさんが出店しようとしている場所があるだろ。火事があったあそこ……」
「ああ、3階建てにしようかなと思ってるんだよね」
「楽しみにしているみたいだが、悪いことは言わない。管理を国に戻したほうが良い」
「……え、なに、それって、出店するなってこと?」
「ああ、その方が安全ってことだ。
商人ギルドに目をつけられたらろくな事がない。
ギルド長のアシダダムは裏でヤバい事もしてるって話しだ。
現に、あの火事も、ヤツの仕業って噂だ」
放火したってことか?
たしかに、キキン国の表玄関と呼ばれるあの一帯は、アシダダムの店が建ち並んでいる。
ロアイドさんの土地が手に入ったら、統一できて商売はしやすいだろう。
「内区は商人ギルドで掌握しているから、今度は魚屋を牛耳って外区もってわけか。
その第一歩が『キキン国の表玄関』」
「そう言うことだ、ヒジカタさん」
外区の人口は10万人と多いが、下層階級(貧しい)の人たちばかりで、出ている商店も、安い日用品、魚とか鶏肉(犬肉、猫肉もあるらしい)とか、小麦粉も一度石臼で挽いてふるいに残ったふすま入り小麦(B級品)とかを扱う店ばかり。
もちろん安価だから利益も取りづらい。
だから商人ギルドも相手にしていなかった。
ところが4ヶ月ほど前から、外区の魚屋が繁盛している(1階店舗のことね)
刺し身と命名した摩訶不思議な料理を求めて外区の住民はもちろん、内区の貴族や中流階級の人たちまでもが、わざわざ外壁門を越えて買いに来るわけだよ。
一ヶ月1200万ギルも売上る魚屋を、野放しにするわけないか。
「なるほどね。おもしろいじゃないか」
「おもしろいじゃないよ、ヒジカタさん!
アシダダムは恐ろしい男だ。何するか分からないぞ」
だよね。
国王の側近だと言っていたビンソンさんまで、グルだもん。
普通の商人だったら、ビビッて手を引くだろうし、喜んで商人ギルドに参加するかもね。
「ちょっとアシダダムと話しをつけてくるね」
「おいおいおい! ほんと、気をつけろよ、ヒジカタさん。
歯向かったら俺みたいにされるぞ!」
殴られて少し赤く腫れた顔で心配してくれる店主に、俺は笑ってみせたよ。
「……そうだね。ありがとう」
そう言って店主の傷を触る。
「ど、どうしたんだ、ヒジカタさん」
「うん。ちょっと最近、治癒気功を習い始めてね……」
半分は本当。
触れた指先だけをスライム化させ、傷を少し溶解してゆき、同時に店主の皮膚を強くイメージする――。
すると、ほら。
たぶん変形能力の応用だろうね。
傷が治ったというか、殴られて無かったような仕上がりで皮膚が生成されちゃう。
最近、この方法を発見したんだよね。
店主があれあれ、と自分の顔を両手で触りまくっているんだけど。
鏡~、かがみ~って、あちこち探して、なんかおかしい。
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