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2章
治療
しおりを挟む「放っといてください! ボクに関わらないでください!」
うーん。
怪しい男と思われてるなあ、俺。
コウくんの怪我を治したいのだけど。
俺の獲得能力のどれかで治せるかな。
探す前に、テロップが流れだしたよ。
治癒魔法を使えるデーモンさんの一覧だね。
~ リトル・デーモン ~
~ アンデット・デーモン ~
~ クリムダームド・デーモン ~
~ ダークドレアム・デーモン ~
・
・
・
・
どんどん出てくるなあ。
最初のでいいや。
リトルデーモン召喚
『お久しぶりでーす! ご主人様ぁ~♪ リトルだよぉ』
ぴょこん、と手の平サイズの悪魔が登場したよ。
『あー、どうも。昨日はありがとね』
『ううん。指名してくれただけで、嬉しいよぉ~。大好き♪』
いきなりほっぺにキスし、そのまま俺の肩に座ったよ。
俺の首筋に背中をあずけてスリスリ。矢印型のしっぽが揺れている。子犬みたい。
馴染んじゃったなあ、リトルちゃん。
『今日のご用件は、なーにかなぁ~』
『あの子、お腹が痛いみたいなんだけど、治せるかな?』
『えっへん! 補助呪文はリトルのおはこだよぉ~』
そう言って俺の肩にしっぽの先を突き刺し、ごにょごにょ呪文開始。
『はい! おまたせぇ~、ぱんぱかぱーん!』
『もう終わったんだ』
「えっへん♪」
コウくんが、あれっ? と言って立ち上がり、お腹を撫でて首をひねったね。
不思議なんだろう、俺をじぃ~っと見ている。
どんなに目を凝らしても、君を治療したリトルの姿は見えないよ。
『あのぉ……、ご主人様~、今日もいいかな……』
『ああ、チップだね。いいよいいよ』
回復呪文で消費された生命力50に、もう1000ほど加えてあげたよ。
『んーもう。ご主人様ったら太っ腹~。だーいすきぃ♪』
チュッチュッしまくりなんだけど。
リトルちゃん曰く――、デーモン仲間の誰に聞いても、俺みたいに気前が良い主人はいないと言う。
『実はね~、あんまり見せたくないんだけどぉー』
ぶら下げたポーチの中から、いそいそと出したのは。
『名刺?』
他のデーモン仲間も俺に召喚して貰いたいらしい。
そんなわけで、リトルちゃんに写真付きプロフィール名刺を渡したという。
そんな凄い主人(俺だよ)がいるなら、ぜひ紹介しろ、と強制的に名刺を俺に渡すよう押し付けられたそうだよ。
何枚あるんだよ、トランプみたいじゃん。
クリムダームド・デーモンって、すげー怖い顔。
ダークドレアム・全長250メートルって、デカすぎ。
『あのぅ~、ご主人様。これからもリトルだけを、ごひいきにして欲しいなぁ~』
『そうだね。慣れたリトルちゃんが良いかな』
「わーい♪」
黄色い三角帽子を揺らしてピョンピョン跳ねてるね。
『出来ればだけどー。ご主人様に、専属で囲って欲しいかなぁ~、なんて。
てへ。言っちゃった。図々しいかなリトル』
京都の舞妓さんを身請けするみたいな?
お妾さん制度?
~専属で囲う~
デーモンを常時登場させ続ける行為
利点
召喚時間、しっぽ接続不要。主人の命令と同時に魔法発動。
魔法威力、5割増し。
欠点
在中費用発生。24時間、生命力1000消費。(一ヶ月契約で)
魔法消費量、1割増し。
『あのう、お得な割安1年契約もあるから、考えてみてね~』
詳しいパンフレットを渡され、ストローフォークを振りながら消えたよ。
保険の勧誘みたいだなあ。
わなわな震えているコウくん。
ちょうどリトルが消えた場所を指さしているけど、まさか見えてた?
召喚した主人にしか見えないのが、この世界のデーモンのはず。
ステータスを確認したら。
―――――――――――――――――――
人間 コウ・キョウサキ 17歳 男
生命力 35/43
攻撃力 26
素早さ 27
知能 47
運 26
『デーモン眼』
―――――――――――――――――――
デーモンだけを視認できる特殊能力『デーモン眼』
だからだね。
「ヒジカタ様は魔法も使われるのですね。ボクなんか、何もできない」
疑問を自己解決したみたい。
だけど、コウくんは俯き、下唇を噛んで、少し悲しそう。
「あ、ボクとしたことが、お礼を言い忘れていました。……ありがとうございました」
「いいよいいよ。君だって、ヒトミさんを助けたじゃないか。大怪我までして」
ハッと顔を上げるコウくん。
「み、見てたんですか?!」
奴隷が主に抵抗する。
きっと初めてだったに違いない。
男にしてはやけに細く痩せた腕。躾けだろうか、痛々しい焼き印が押されているよ。
「好きな人の為なら、身を犠牲にしたって構わない。カッコ良かったと思う」
「え……あ、ち、違いますよ。ボ、ボクはヒトミさんを……そんな」
横を向き、耳まで真っ赤。オロオロし始めたぞ。
分かりやすいなあ~美少年。
「だっ、だいたい、ヒトミさんの彼氏はヒジカタ様じゃありませんか! ……ボクなんかが」
「な……っ、なに言ってるのかな~。俺は35歳、ヒトミさんは20歳だよ。恋愛関係が成立する歳じゃないぞ」
「そ、そうなんですか……?」
「もちろんだよ。俺にしてみれば、ヒトミさんは可愛い妹みたいだし、ヒトミさんも兄貴同然に俺を慕っている。
恋愛経験がないコウくんには、恋人に見えちゃったか?」
頷くコウくん。
「おいおい。しっかりしろって!」
「……そ、そうですよね……、ほんと、そうですよね……」
コウくんの顔が、ぱあーっ、光明が差し込んだみたいに晴れてゆく。
両手を合わせ、キラキラした視線を俺に向けてきたよ。
「ヒ、ヒジカタ様……」
「言っとくが、俺は恋愛の神さまじゃないぞ」
「いえ、そんなんじゃなく、ボクでも大丈夫でしょうか。ボクなんかで大丈夫でしょうか?」
「ヒトミさんと付き合いたいわけね」
おー、白い顔が、リンゴみたいになっちゃった。分かりやすい。いい子だ。
「もちろん! さっきみたいに、ぶつかって行けば、きっとヒトミさんの心に響くよ」
「ぶ、ぶつかる……」
「打ち明けるって意味ね。告白だよ、ちょっと聞いてる?」
大丈夫か、コウくん。ぶつぶつ言ってるけど。
「出来るだろうか、このボクに……緊張して言葉が……」
「当たって砕けろの精神だよね」
「告白する前に砕けそう」
「うーん。がんばれ」
そう言ってコウくんを励ましたものの、俺の心は後悔の念が膨れ上がっている。
日本にいたときも、似たような事があったっけ。
所詮俺はスライムだから、と理屈で納得できたら、幸せなんだろうけど。
SSSレアスライムなんだから、感情面も、SSSレア級にず太くならないのかなあ。
10
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