SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)

文字の大きさ
96 / 182
2章

ロダン家

しおりを挟む

 なんだろうなあ~。
 情報を得られないまま、フォールは地下牢に連行されてしまった。
 神父さん曰く、深くなればなるほど、《魔縛の法術》をかけやすいそうだよ。
 理想は洞窟だってさ。

 付いて行きたかったけど、一般人は立ち入り禁止だって。

「申し訳ないです。この第3庁舎(警察署)の取り調べ室にヒジカタさんを入れたこと自体異例中の異例ですから」

 とロアンくん。

「そうなんだ」

「ありがとうございます。アハートのことで、いろいろと……、
 あの……、本当にアハートはヒジカタさんと何もないんですよね」

「あたり前ですって!」

 
 ◆


 速攻で地下牢のフォールを連れだし、あれこれ自白させようかと思ったけどやめた。
 代わりに、リトルデーモンをロアンくんの側に残すことにしたよ。

 現世界(この世界)に1年在住するリトルは、俺からどんなに離れていても、会話可能。
 しかも4次元空間を移動できるから、一瞬で呼び寄せられるんだよね。
 
『なにかあったら、直ぐ俺に連絡するんだぞ』

『はぁ~い♪ ご主人様』

 ロアンくんにはリトルは見えないしね。
 
 俺は魚屋店舗に戻ることにしたよ。
 アハートさんが生きている以上、ビンソンに命を狙われるはず。



 1階。

「まだ、寝てると思うわアハートさん」

「そうですか、ありがとうございました」

 店主の奥さんにお礼を言い、寿司店舗のお茶を持って3階に向かったよ。
 ノックすると、ソプラノの声で返事があった。
 
 アハートさんは俺の布団に横になっていたよ。
 流石に素っ裸じゃないぞ。あたり前だけど。

 涼しげなアクアブルーのワンピースのスカートたけから、真っ白い脚が伸びているよ。

「ありがとうございます、ヒジカタさん……」

 起き上がり、じっと俺を見つめるアハートさん。

 顔色は良い。ちょっと眠そう。
 さっきまで瀕死の状態だったんだ。完璧じゃないよね。
 俺の渡したお茶を飲んでくれた。

 どうやって助けたのか訊ねないよ。

 店主や奥さんに常々、『俺、最近、魔法が使えるようになったんだよね~』と言っていたから、奥さんが『ヒジカタさんの魔法じゃない』とアハートさんの疑問を解決したのかもしれないね。
 
「あの……言い難いのですが」
 
 俺はゆっくりと、アハートさんの家が全焼したと告げたよ。
 大事なことだもんね。
 犯人の魔法使いは捕まり、ロアンくんが地下牢に入れたことも。

「そうですか……」

 悲しそうに俯き、薬指にはめられた光る銀の指輪に触れる。
 ロダン家の家紋入り指輪。 
 焼けてしまい、遺品と言える物は、指輪くらいなのだろう。
 
 俺は話しを続けたよ。
 ゆっくりしていられないから。

「最近、ビンソンに恨みを買う事がありましたか?」

「ビンソン? 関税とギルドを取り締まるビンソン様ですか」

「はい」

 何かあるはず。

「……いえ……」

 そうか……。普通はそうだろう。
 貴族でもないロダン家の長女を殺しても、ビンソンは何も得しないから。
 そもそも、接点があるのかな、2人は。

「あ、もしかして……私が立候補したことかしら」

「立候補?」

「はい。先日、キキン国王と面会することがあり、直接、父の役職にと」

 亡くなったアハートさんの父親のことだね。
  
「父は、生前キキン王から絶大な支持を得ていて、自衛軍でありながら、区画整理、関税、商人ギルドを取り締まる役人に抜擢されていました」

「現在ビンソンがやっている仕事か」

「はい。父が亡くなり、急遽ビンソン様が一時的に後任されましたが」

「……が?」

「あ、いえ……」

「ビンソンの評判が悪いって、言おうとしたんだね」

「ご存知なのですか?」

「そりゃ、まあ、有名だからね」

 関税ちょろまかしたり、商人ギルド長のアシダダムと結託し価格操作など、私腹を肥やしまくり。
 政治に疎い1階店主ですら知ってんだもん。

「ビンソン様は悪い方ではありません。賄賂は役人なら大なり小なり受け取っています」

 まあ、日本の政治家もそうだろうし。

「私は……私は父の意思を継ぎたい!」

「……お父さんの職務を、つまり役人になりたいわけだ」

 下っ端役人じゃなく、ビンソンレベル。
 政治に参加するキキン国の重要役人にだね。
 すごいな。
 
 外区の周囲を、内区と同じ強度の壁で囲う計画の提案者は、アハートさんの父親だと言う。

 そうだったんだ。

 素晴らしいアイデアだと思うよ、お父さん。
 だけど、よく聞いたらスケールでかいね。

 外区の密集街から遠く離れた、麻、亜麻、小麦、とうもろこしなどの農地。
 牛、馬、羊などの酪地。
 それらを含めた広大な半径20キロくらいの土地を、全部囲っちゃう構想だもん。
 
 莫大なお金と人、時間が必要だね。
 やりがいのある仕事だと思うけど。

「キキン外区壁建設計画は遅々と進んでいません」

 まあ、そうだろうね。
 ビンソン仕事しそうにないもん。

「私には荷が重いかもしれませんが、父の秘書を3年しており、父の仕事は熟知しているつもりです」

 分かってきたぞ、ビンソンの考えが。
 今のおいしい役職をアハートさんに奪われそうだから、火災事故に見せかけ消そうとした。
 アハートさんが死ねば、自分の職位は安泰だもんな。

 しかも、この世界の魔法使いは最高の暗殺者だし。
 
 無詠唱で、ただ突っ立っているだけ。
 デーモン眼を持たない限り、誰が魔法使いか分からないからな。
 
「生前の父の口癖は、『公務は民のためにある』でした」

「おお!」

 ビンソンやアシダダムと大違いだね。
 キキン王も見抜いていたから、生前のお父さんを重要ポストに置いたわけだ。
 となると、キキン王も少なからず、今の体質――代々、闇ギイン家に公務の一部を任せる――、を嫌ってのことかな。
 自衛軍でも有能な者なら、公務に抜擢する。
 キキンの古い仕組みを変えたがっていると見たね。

「で、どうなの? 国王さんも、アハートさんにやらせたい感じ?」

「はい。色よい返事を頂きました。
 来月でビンソン様が赴任1年となり、切りが良いから、そこから私にやってみろと」

「すこい! すごい! おめでとう」

「10日後におおやけに正式発表して、そのまま職務につきます」

 そうか!
 良い国になるぞ、キキンは。

 問題はビンソンだな。
 黙っているはずないね。
 

しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

処理中です...