SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)

文字の大きさ
99 / 182
2章

クリムダームド・デーモン

しおりを挟む
 
 クリムダームド・デーモン  L∨ 14

 倒すのは簡単だけど、俺がちゃっちゃ片付けても、意味が無い。
 俺がいないとき、エース、ヒトミさん、コウくんが協力して対処できるようにしなくちゃね。

 それに、クリムダームド・デーモンの雷魔法も見てみたい気もする。
 魔法の種類は、火、水、風、稲妻、地震、補助、の6系統。

 その中で俺にとって一番ヤバそうなのが、たぶん稲妻系。
 核を傷つけられるとあっさり死んじまう俺にとって、一瞬で身体を貫く稲妻は手強いね。

「なーにやってんの、コウ?」
「また、幽霊? 今度は悪魔?」
「真っ昼間から出るわけないでしょ」
 
 コウくんが尻もちをついて後ずさり、ガタガタ震えているよ。
 デーモン眼スキル所持者だから見えてるんだ。 
 それに、持つ事を秘密にしてるんだな。
 
 何となく分かる。
 例えば霊感がある人が、見たままを説明したとする。

『そこ、髪の長い女の顔だけが浮いてる』

 はいドボン。
 まず不気味がられちゃうね。
 言ったが最後、誰も近寄って来なくなる。

 コウくんもそうなんだろう。
 苦い体験から、デーモン眼は内緒。
 ただ、このクリムダームド・デーモンが消防車みたいにデカいから、冷静でいられないわけだ。

 おっと!
 そう余裕こいているヒマはなさそう。
 デーモンさんが、ブツブツ呪文を練り始めたよ。
 稲妻をぶっ放してくるぞ。

「コウくん、落ち着け! おい、逃げるぞ! コウくんてば!」
 
「あわわわわわ……」

 ダメだこりゃ!

 ヒトミさんは、デーモンは見えてないが、危機だと理解はしている。
 全然分かってないのはアハートさんだな。
 大司教さんに挨拶し始めたぞ。
 キキンの安全が確保されました、とかなんとか。

 う~む。
 やってる場合じゃないんだけど。
 えーい、強行手段だね!!
 
「エース! コウくんを頼む!」

「はっ!」

 俺は了解も得ず、いきなりアハートさんを右脇に抱え、左脇にヒトミさんを抱えたよ。
 
「なな、なにをなさるのです、ヒジカタさんっ!!」

 暴れるアハートさん。
 パンツ丸見え。

「理由はあとで話しますからっ!」

「うんもーっ! あなたはいつもそうっ!」

 アハートさん真横のままですいません。
 
 一方、ヒトミさんは、事情が分かっているだけありお淑やかだね。

「お願いします」

 ちょっとだけ顔が紅くなったね。
 かわゆい。

 たぶん、おっきな胸が、俺の横っ腹にむに~っと押し付ける感じになってるからだよ。
 不可抗力だね。
 仕方が無いことだね。
 
 奴隷さんたち騒ぎ出すよ。

「わーいいな!」「ずるい、ずるい!」

 真実を知らないって呑気だなあ。

「非常事態ですな、ヒジカタさま」

「よくご存知で、大司教さん。では先を急ぎますので」
 
 俺は猛スピードで部屋を出たよ。
 猛スピードと言っても、ヒトミさんたちに負担がかからない程度に。
 気絶したら可哀想だもんね。
 
 部屋を出て廊下を走る。
 エースがコウくんを抱えて付いてくるよ。

 これで良い。
 魔法使いの素性さえ分かれば、後でなんとでも出来るから。

「――いっ?!」

 後ろだ。
 追ってくるエースのさらに後ろだ。  
 豪華仕様の廊下、その真っ赤なカーペットすれすれに飛来する赤黒い水牛もどき。

 アンデット・デーモンじゃないか!

 追ってくるんだ?
 追えるとは思わなかった。

 と言うのも、デーモンと魔法使いは、しっぽで接続されていて、しっぽの長さ以上は移動できないはず。
 現実に、しっぽの長さを越えて離れてしまったアンデット・デーモンは、千切れたしっぽを残して姿が無くなった。

 ふと、デーモンのしっぽが異常に長く伸びていた。
 魔法使いのナリオール・キマイのいた部屋まで続いている。
 きっと延長ホースみたいに伸びているね。
 
 デーモンもレベル14にもなると、出来る事が増えるんだなー。
 
 それにデーモンは、背中からくの字に曲がった4つの翼を、廊下の幅以上に広げているけど、何故か、壁は壊れない。
 すり抜けている。
 高級大壺や工芸品などが壁際に飾られているけど、デーモンの翼と接触しても、ぜんぶすり抜ける。 
 
 幽霊みたい。
 この世界のデーモンは、誰にも見えず、高レベルになるとすり抜けるのか?
 4次元を行き来する実態がないような生き物だから、幽霊の仲間みたいなもんなんだろう。

 試しに、触手をデーモンに飛ばしてみたよ。
 カスッと空振り。
 
 なるほど、物理攻撃はダメってことね。

 宿舎を出て、石畳の歩道を門に向かって走ったよ。
 デーモンさんは、まだ追ってくる。
 しっぽって何処まで長いんだろう。
 今までのデーモンとずいぶん違うな。
 
 さて、どう対処しようか……。

『リトルっ! 聞こえるかリトルデーモン!』

 俺は、ロアンくんにつけているリトルを呼んだよ。
 何もない空間が渦を巻き始め、中心からぴょーん、と三角帽子のミニ悪魔が飛び出してきたね。

『お待たせ~、ご主人様ぁ~♪』

 スリスリ、チュッ♪

『俺の話しを聞いていて欲しい』

『はーい』
 
 俺は走りながら、コウくんとみんなに説明したよ。

「いいか、コウくん、よく聞けよ。君が司令塔だ。
 デーモン眼を持つ君が指示しないと、アハートさんも、ヒトミさんもみんな死ぬ」

「ふええええっ?! ボ、ボクがですか……ッ!」

「そうだ。見えるだろ、あの牛の化けモン」

「は、はい!」

「見えるのは、俺とコウくんしかいない。みんなは見えない。だから、俺がいないときは君が指示しないと」

「わ、わかりました。がんばりますっ!」

「よし、いい子だな。
 今後、デーモンを発見しだい、まず誰が魔法使いなのかを特定する」

「今後? えっ、待ってください。今後って、アレどうするんですか、アレ!」

「あ~、アレね。アレは気にしないでいい。
 俺はまず手順を説明している。デーモンを消す流れを話している。しっかり覚えて欲しい」

「は、はあ……?」

「魔法使いの特定は簡単だ。 
 デーモンのしっぽを辿ってゆき、しっぽの先が刺さっている人間が魔法使い。
 分かったら直ぐにみんなに教える」

「分かりました」

「よし」

「で、アレを召喚した魔法使いが誰なのか分かるかな?」

「はい。灰色の髪をした掃除婦ですけど」

「よし、正解だ。
 聞いたかエース」

「はいっ! お父さま!」

「エース。
 お前にデーモンは見えない。
 見えない物は無視でいいから。  
 エースの仕事は、魔法使いの生命力と魔法力を削ぐこと。
 魔法使いを殺す必要はない。デーモンに吸い取られる生命力と魔法力を先に消費させるわけだ。
 わかるな。
 生命力と魔法力がなくなれば、デーモンだって面白くないだろう。
 報酬なしで働くほど、デーモンが偽善者とは思えない。
 たぶん、しっぽを引き抜いて、『またの依頼を待ってます』とか言ってサヨナラするはず」

「了解しました、お父さまっ!」

「よし。
 で、リトル? 
 今の俺の理屈で、デーモンを消せるかな」

『はい。オッケーでぇ~~す。
 デーモンは自力で生命力と魔法力を作れないから、人間から貰うしかないんですよねー』

 そうだったんだ。

『だから、ご主人様の説明通り、生命力と魔法力がない魔法使いなんか、相手にしませんからー』

 やっぱりね。

「では、さっそく、行ってまいります」

「頼むよ、エース」

 エースはコウくんを抱えたまま、大きく迂回して宿舎に戻ったよ。

 数秒後。

「きゃあああああああああああああああああああ」

 エースが戻って来たよ。 
 コウくんではなくナリオールをお姫様抱っこで激走だ。
 どこを?

 はい。
 時計塔のてっぺんに登って急降下したり、
 闘技場の外周をマッハで飛んだり、
 空をジグザグ飛行したり、宙返りしたり、反転したり、
 
 ちなみに俺たちにだけ見えるくらいの速度だね。 
 キキン内区を絶叫だけが轟いていたけど、今はもうそれもないよ。
 
「おかえり、エース。おつかれさん」

「この程度でよろしいでしょうか」

「じゅうぶんだとおもうよ」

 アイドルみたいな容姿のナリオールが、

 う~~ん。ゲロまみれ。
 白目がむいている。
 微かに呼吸しているから、死んじゃいないと思うけど。
 エースは美人でも、容赦ないなあ。

 ちなみにエースも、ナリオールのゲロを浴びちゃって、アハートさんに自前のハンカチでフキフキして貰っている。
 
 嫌~な顔したデーモンが、暗黒色の渦に入っていくよ。
 収入ゼロになるのかな。

 こっちもお疲れ~。
 ごめんね。
 今度、俺が召喚してあげるからー。


しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

処理中です...