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2章
クリムダームド・デーモン
しおりを挟むクリムダームド・デーモン L∨ 14
倒すのは簡単だけど、俺がちゃっちゃ片付けても、意味が無い。
俺がいないとき、エース、ヒトミさん、コウくんが協力して対処できるようにしなくちゃね。
それに、クリムダームド・デーモンの雷魔法も見てみたい気もする。
魔法の種類は、火、水、風、稲妻、地震、補助、の6系統。
その中で俺にとって一番ヤバそうなのが、たぶん稲妻系。
核を傷つけられるとあっさり死んじまう俺にとって、一瞬で身体を貫く稲妻は手強いね。
「なーにやってんの、コウ?」
「また、幽霊? 今度は悪魔?」
「真っ昼間から出るわけないでしょ」
コウくんが尻もちをついて後ずさり、ガタガタ震えているよ。
デーモン眼スキル所持者だから見えてるんだ。
それに、持つ事を秘密にしてるんだな。
何となく分かる。
例えば霊感がある人が、見たままを説明したとする。
『そこ、髪の長い女の顔だけが浮いてる』
はいドボン。
まず不気味がられちゃうね。
言ったが最後、誰も近寄って来なくなる。
コウくんもそうなんだろう。
苦い体験から、デーモン眼は内緒。
ただ、このクリムダームド・デーモンが消防車みたいにデカいから、冷静でいられないわけだ。
おっと!
そう余裕こいているヒマはなさそう。
デーモンさんが、ブツブツ呪文を練り始めたよ。
稲妻をぶっ放してくるぞ。
「コウくん、落ち着け! おい、逃げるぞ! コウくんてば!」
「あわわわわわ……」
ダメだこりゃ!
ヒトミさんは、デーモンは見えてないが、危機だと理解はしている。
全然分かってないのはアハートさんだな。
大司教さんに挨拶し始めたぞ。
キキンの安全が確保されました、とかなんとか。
う~む。
やってる場合じゃないんだけど。
えーい、強行手段だね!!
「エース! コウくんを頼む!」
「はっ!」
俺は了解も得ず、いきなりアハートさんを右脇に抱え、左脇にヒトミさんを抱えたよ。
「なな、なにをなさるのです、ヒジカタさんっ!!」
暴れるアハートさん。
パンツ丸見え。
「理由はあとで話しますからっ!」
「うんもーっ! あなたはいつもそうっ!」
アハートさん真横のままですいません。
一方、ヒトミさんは、事情が分かっているだけありお淑やかだね。
「お願いします」
ちょっとだけ顔が紅くなったね。
かわゆい。
たぶん、おっきな胸が、俺の横っ腹にむに~っと押し付ける感じになってるからだよ。
不可抗力だね。
仕方が無いことだね。
奴隷さんたち騒ぎ出すよ。
「わーいいな!」「ずるい、ずるい!」
真実を知らないって呑気だなあ。
「非常事態ですな、ヒジカタさま」
「よくご存知で、大司教さん。では先を急ぎますので」
俺は猛スピードで部屋を出たよ。
猛スピードと言っても、ヒトミさんたちに負担がかからない程度に。
気絶したら可哀想だもんね。
部屋を出て廊下を走る。
エースがコウくんを抱えて付いてくるよ。
これで良い。
魔法使いの素性さえ分かれば、後でなんとでも出来るから。
「――いっ?!」
後ろだ。
追ってくるエースのさらに後ろだ。
豪華仕様の廊下、その真っ赤なカーペットすれすれに飛来する赤黒い水牛もどき。
アンデット・デーモンじゃないか!
追ってくるんだ?
追えるとは思わなかった。
と言うのも、デーモンと魔法使いは、しっぽで接続されていて、しっぽの長さ以上は移動できないはず。
現実に、しっぽの長さを越えて離れてしまったアンデット・デーモンは、千切れたしっぽを残して姿が無くなった。
ふと、デーモンのしっぽが異常に長く伸びていた。
魔法使いのナリオール・キマイのいた部屋まで続いている。
きっと延長ホースみたいに伸びているね。
デーモンもレベル14にもなると、出来る事が増えるんだなー。
それにデーモンは、背中からくの字に曲がった4つの翼を、廊下の幅以上に広げているけど、何故か、壁は壊れない。
すり抜けている。
高級大壺や工芸品などが壁際に飾られているけど、デーモンの翼と接触しても、ぜんぶすり抜ける。
幽霊みたい。
この世界のデーモンは、誰にも見えず、高レベルになるとすり抜けるのか?
4次元を行き来する実態がないような生き物だから、幽霊の仲間みたいなもんなんだろう。
試しに、触手をデーモンに飛ばしてみたよ。
カスッと空振り。
なるほど、物理攻撃はダメってことね。
宿舎を出て、石畳の歩道を門に向かって走ったよ。
デーモンさんは、まだ追ってくる。
しっぽって何処まで長いんだろう。
今までのデーモンとずいぶん違うな。
さて、どう対処しようか……。
『リトルっ! 聞こえるかリトルデーモン!』
俺は、ロアンくんにつけているリトルを呼んだよ。
何もない空間が渦を巻き始め、中心からぴょーん、と三角帽子のミニ悪魔が飛び出してきたね。
『お待たせ~、ご主人様ぁ~♪』
スリスリ、チュッ♪
『俺の話しを聞いていて欲しい』
『はーい』
俺は走りながら、コウくんとみんなに説明したよ。
「いいか、コウくん、よく聞けよ。君が司令塔だ。
デーモン眼を持つ君が指示しないと、アハートさんも、ヒトミさんもみんな死ぬ」
「ふええええっ?! ボ、ボクがですか……ッ!」
「そうだ。見えるだろ、あの牛の化けモン」
「は、はい!」
「見えるのは、俺とコウくんしかいない。みんなは見えない。だから、俺がいないときは君が指示しないと」
「わ、わかりました。がんばりますっ!」
「よし、いい子だな。
今後、デーモンを発見しだい、まず誰が魔法使いなのかを特定する」
「今後? えっ、待ってください。今後って、アレどうするんですか、アレ!」
「あ~、アレね。アレは気にしないでいい。
俺はまず手順を説明している。デーモンを消す流れを話している。しっかり覚えて欲しい」
「は、はあ……?」
「魔法使いの特定は簡単だ。
デーモンのしっぽを辿ってゆき、しっぽの先が刺さっている人間が魔法使い。
分かったら直ぐにみんなに教える」
「分かりました」
「よし」
「で、アレを召喚した魔法使いが誰なのか分かるかな?」
「はい。灰色の髪をした掃除婦ですけど」
「よし、正解だ。
聞いたかエース」
「はいっ! お父さま!」
「エース。
お前にデーモンは見えない。
見えない物は無視でいいから。
エースの仕事は、魔法使いの生命力と魔法力を削ぐこと。
魔法使いを殺す必要はない。デーモンに吸い取られる生命力と魔法力を先に消費させるわけだ。
わかるな。
生命力と魔法力がなくなれば、デーモンだって面白くないだろう。
報酬なしで働くほど、デーモンが偽善者とは思えない。
たぶん、しっぽを引き抜いて、『またの依頼を待ってます』とか言ってサヨナラするはず」
「了解しました、お父さまっ!」
「よし。
で、リトル?
今の俺の理屈で、デーモンを消せるかな」
『はい。オッケーでぇ~~す。
デーモンは自力で生命力と魔法力を作れないから、人間から貰うしかないんですよねー』
そうだったんだ。
『だから、ご主人様の説明通り、生命力と魔法力がない魔法使いなんか、相手にしませんからー』
やっぱりね。
「では、さっそく、行ってまいります」
「頼むよ、エース」
エースはコウくんを抱えたまま、大きく迂回して宿舎に戻ったよ。
数秒後。
「きゃあああああああああああああああああああ」
エースが戻って来たよ。
コウくんではなくナリオールをお姫様抱っこで激走だ。
どこを?
はい。
時計塔のてっぺんに登って急降下したり、
闘技場の外周をマッハで飛んだり、
空をジグザグ飛行したり、宙返りしたり、反転したり、
ちなみに俺たちにだけ見えるくらいの速度だね。
キキン内区を絶叫だけが轟いていたけど、今はもうそれもないよ。
「おかえり、エース。おつかれさん」
「この程度でよろしいでしょうか」
「じゅうぶんだとおもうよ」
アイドルみたいな容姿のナリオールが、
う~~ん。ゲロまみれ。
白目がむいている。
微かに呼吸しているから、死んじゃいないと思うけど。
エースは美人でも、容赦ないなあ。
ちなみにエースも、ナリオールのゲロを浴びちゃって、アハートさんに自前のハンカチでフキフキして貰っている。
嫌~な顔したデーモンが、暗黒色の渦に入っていくよ。
収入ゼロになるのかな。
こっちもお疲れ~。
ごめんね。
今度、俺が召喚してあげるからー。
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