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3章
いよいよオープン
しおりを挟む翌日10:00
何も言えないまま、オープンを迎えたよ。
∪字型の突き出し厨房には、5センチ高めにセットされた踏み台の上に、愛くるしいSSの姿が2名。
部屋の四隅には製氷猫が桶の魚を食べながら冷気をそよそよ出し、室内を24℃でキープしてくれている。
客席はもちろん満員。
その半数以上が、1号店のヲタク風常連客。
《ラブラブ・ランちゃん》《ミキちゃん好き好き》など、ファンが掲げる旗が壁に立て掛けられ、続々と注文が入っていた。
「はい! 本マカト3皿」
「出来たよ! ブリ2皿、ワサビ抜き」
「こっちは、レインボウ巻き」
「お持ち帰り用にぎり盛り合わせ50貫、あがり~」
「サーモン2皿、あじ3皿、イワシ2皿どうぞ~」
それを軽々こなしているSS2名。
しかも笑顔で、
望めば握手もしたりして(おもちゃのマジックハンドで)、
萌え萌えきゅんきゅん! と萌えサービス付きで。
ウエイター・ウエイトレス役の若手スタッフは、みな呆然。
ランちゃん、ミキちゃんの補佐役の若手も唖然。
早い早い。
ランちゃんミキちゃんとも触手を使わず、人間の手だけをフル回転させてにぎり寿司と巻き寿司を作っている。
しかも口頭で注文してくるのを誰が何を何皿かを記憶している。
スタッフはお客さんごとに書き留めるだけで精いっぱい。
「こ、こ、こんな五歳児見たことねえ!」
「し、社長。なんですか? なんなんですかこの娘たちは!?」
「見ての通り、ベテランだよ」
「あわわわわ~」
「はい。5番テーブルのお客ちゃん、おあいそ~。ディードンちゃん、お会計よろちくー♪」
「なんで、俺の名前を……」
「記憶力がいい娘なんだよね」
ステータスが見えちゃうSSレアだもん。
この様子だと大丈夫そうだね。
心配なのはネタとシャリの残数かな。
夜7時まで営業予定だけど、後3時間くらいで底をつきそう。
俺は、寿司屋同様に本日オープンの1階魚屋のフロアーに降りて様子を見つつお手伝い。
ここはSSのジンとポラリスくんと、若手スタップ8名の合計11名でまわしているよ。
寿司ほど製造が難しくないのと、みんな経験者なので安心。
お昼どきになると、寿司屋に入りたいお客さんと、ロアイドさんの居酒屋に入りたいお客さんとで、1kmの行列ができたよ。
寿司屋に、アイテム収納庫に保管していたつくりたてのシャリとネタをこっそり追加しに来たら、みんな昼食もとらずに動きまわっていたよ。
そのまま夕方を迎え、夜7:00。
最後のお客さんを笑顔で送り、閉店。
「お疲れさま~」
「終わった終わった!」
ランちゃんとミキちゃんが、厨房の掃除を始めたよ。
「お……、おつかれ……」
新人スタッフ10名に元気はない。
疲労が顔に出ていて、何も食べてないからヘロヘロだね。
慣れない接客と、最後の金銭の受け渡し、一日中立ちっぱなしも原因だろうね。
精神と肉体がクタクタで、黙って客席に腰をおろしたまま、うなだれている。
「ちょっと青ちゃんと散歩行ってくるねー」
速攻で掃除を終え、ゴミも捨て終え、皿も湯のみも洗い終え、刺身包丁も綺麗に研いだランちゃんが、スキップしながら4階に駆け上がる。
ミキちゃんは、スタッフひとりひとりに、自分なりに気づいた事、こう直したら良いと思える事を、話しているね。
「なんて、体力なんだ……」
「5歳児なのに」
「信じられない」
「だけど、真実だわ」
「半信半疑だったけど、馬鹿にしていたけど……」
「見たか、あの速度……」
「ああ、にぎり寿司も巻き寿司も、信じられねえ速さだった」
「きっとヒジカタ社長の指導のおかげだわ」
「小さい頃から英才教育を施されているんだわ」
「ヒジカタマジック!」
「人間、かくも強く早くなれるものなのか!?」
そりゃそうだよ、人間じゃないんだもん。
「「「「「教えてください、社長!」」」」」
「「「「「ぜひ、わたしたちにも、ご指導をっ!!」」」」
うーん。
うう~ん。
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