SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)

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3章

半スライム人 

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 SSSレア・スライム LV 24  

 久々にレベルアップの知らせが提示されたね。
 各種ステータス値、獲得新能力などが続いているその向こう、

 ズウゥゥゥ――――ンッッ。

 立ったまま緑色の血液を吹き流していたエインシェントが、巨木のように倒れたよ。
 地震のような揺れがおき、高く舞い上がった砂煙で一面真っ白だね。

 土にめり込み、小山のように横たわったエインシェントの周囲を、ボーンキラー・ウルフ系のモンスター15~32レベル約40匹が徘徊している。

 1匹がキキン兵に向かって激走する。
 すると他のモンスターたちも、次々とイノシシのように突進してゆく。
 ざっと40匹か。

 早いっ!
 500メートルあった兵とウルフとの距離が半分になる。 
 キキン兵がボウガンを構えた。
 
「打ち方始めっ!」

「「「「はっ!!」」」」

 エインシェントが余りにも巨大だから、ウルフが小さく見えるけど、実際は自動車サイズと大きい。
 ボウガンの矢が大きく弧を描いてウルフに刺さるが、物ともしない。
 
 魔法使い兵10名が下位デーモンを10匹繰り出したよ。
 全長50センチメートルほどのデーモンたちが、火炎を放った――。

「えっ……」
「そ、そんな」
 
 だけど、ウルフの体毛を焦がした程度。
 むしろウルフの怒りを買ったみたいで、突進が早くなったね。

「え、……えっ、えええ――いっ!! 怯むなっ、怯むなぁ――ッ」

 隊長の声が裏返る。

「「「はは――っ!!」」」

 兵たちは取り敢えず、返答したって感じ。

 無理もない。
 数匹のモンスターなら対処できるだろうが、敵は40匹。しかも高レベル。
 キキン兵は100名だから、兵士2名で1匹を倒す計算になる。

 以前、ロアンくん1人でウルフ3匹を瞬殺したけど、あれはウルフがレベル2(生命力25くらい)だったから。
 レベル30(生命力250前後)40匹を相手にして、倒すどころか死者がでそう。  
 いや、全滅する、絶対に。

 兵たちは足止めにもならないボウガン攻撃を止め抜刀した。
 肉弾戦か……。

 ロングソードを両手で構えてはいるけど、へっぴり腰になっちゃって、唇は震え、あ~もう見てらんないなあ。

 俺はダッシュでモンスターの前にまわったよ。
 100メートル後、キキン兵の声が聞こえる。
 
「ヒジカタ……」
「……ヤツは何をする気だ」

 俺はアイテム収納庫を出現させ、モンスターを入れまくったけど、
 キキン兵には、モンスターが忽然と消えたように見えているよ。
 どうしようも出来ない。

「ウルフが消えてゆく」
「な……なんてスピード」
「さっきもドラゴンの首を一瞬で跳ねた。人間じゃねえ。モンスターだ」

 
 ◆

 
 リトル・デーモン 
 
 ~ 忘却魔法 ~ 
 
 10分前までの出来事なら、忘れさせる事ができる。

『ごめんなさい、ご主人さま。10分以上経過したら出来ないんですぅ~』

『あーいやいや。だと思ったんだけど、一応ね』

 リトルに、キキン牢にぶち込んだアシダダムの見張りをさせていたのは2ヶ月前の事。
 現在は、ヴァーチェに帰る大型船内の監視をさせているよ。
 使徒ケイジが、ヒトミさんと強引に関係を結ぼうとした事もあったからね。

 ヴァーチェからキキン国間、禁欲生活ともとれる片道2ヶ月の長い船旅――。
 他の使徒たちが(使徒たち全員がろくでなしとは思わないけど)、
 呪縛の法術が解け、めちゃくちゃ美しくなった主従関係の奴隷(メグミさんたち)に、エッチな行為を強要しないとは言い切れないからね。

 もしメグミさんたちが襲われたら、リトルが魔法で助ける。
 リトルだけて手に負えないようなら、俺に連絡する仕組み。
 
 リトルの話しだと、使徒たちがいろいろしてきたみたい。やっぱりね。
 だけど、全てリトルが未遂で終わらせ、ボディタッチすらさせない徹底ぶり。

 使徒たちはリトルの存在を知らないから、

『不思議な力だ……』
『奴隷たちは強い守護霊が憑いている』
『おお、神よ!』

 とか騒いで、奴隷たちを恐れているね。
 
 そんな忙しいリトルに、心話で忘却魔法を訊ねてみた。
 期待より確認の意味でね。

 エインシェントを倒した俺は、一応正義の味方のはずなんだけど、兵たちは俺を快く思ってない。
 
 荒れ地や山、池をさら地にした時は大喜びし、賞賛してくれたのに、
 まあ、俺は上半身人間、下半身スライムなキモい『半スライム人』。
 仕方が無いか……。
 
 時間の巻き戻し、兵たちの記憶の書き換え、
 窮地を乗り越える方法を心の中で強く意識しだけど――。

 
 ~ SSSレア・スライム LV 24 の獲得能力に存在しない ~


 とテロップがスクロールしたよ。
 今の俺では無理ってことか……。
 ショックです。はい。

 キキン兵たちは、もと来た道を徒歩で帰ってゆく。
 もちろん俺に一言もなしにね。
 なんだか、寂しい。
 
「……」

 おっと感傷にふけっているヒマはないよ。
 エースたちと合流して崩壊したハゲ山の坑道に行ってみた。
 
 建築が始まってなくて良かったよ。

 直径50メートルの巨穴が伸びる先は真っ暗で何も見えない。

「どうします、お父様?」

「ここからモンスターが出てくる、たぶん」

 ツェーン迷宮の何層目かに繋がっていると思う。

「でも、だからって……」

「結界を張れないかな?」

 結界を一度張ってしまえば通過できない。
 劣化すると、レベル1のモンスターから通れるようになるけど。

「お父さん。結界も生成できたのですか?」

「いや、出来ないよ。
 ヴァーチェ国に帰っちゃったアンフィニ大司教に、また来てもらうんだよ」

 リトルの話しだと、そろそろ船がヴァーチェに到着する。
 
「来てくれますかね」

「頼めば、たぶん」

「ランを連れていけば、良いかも、お父さん」

「なるほど」

 ヒトミさんも一緒にね。


 ◆


 飛行で外区に戻る途中。
 
 エインシェントの警戒がまだ解かれてないのか、空に赤の狼煙が連続で3つ上っていた。 
 見下ろす街道はいつもより人通りが少なく、武装した兵団が西に向かっている。
  
 魚屋『ヒジカタ』の行列は無くなり、店内は従業員のみ。
 店先の登りを片付け、店じまいをしている。

「大変です、社長! 住民がツェーン迷宮のちかくで、ボーンキラー・ウルフに襲われました!」

 ドルン・エレイドくん30歳がツルツルの頭を光らせ言ったよ。

「15人が死亡……負傷者も」
「外区に戒厳令が出ました!」

 俺がこの地に住んで初めての戒厳令。
 他店の木戸が閉まっていたのはそのせいか。

「状況は深刻なの?」

「はい。ボーンキラー・ウルフは数匹ではなく、20数体とも50数体とも。
 さまざまな噂が飛び交っていて」

 この世界のモンスターは大きく2種類に分かれる。

 卵、胎児、分裂で子孫を増やすタイプと、湧いて数を増やすタイプ。

 『湧く』とは特定の場所(ポイント)で、一定の時間が経過すると、異次元からドロップする。
 主に、モンスターが巣食う洞窟などの深い階層に湧く場所(ポイント)があり、
 ボーンキラー・ウルフはその湧くタイプに属し、キキンだとツェーン迷宮内でしか湧かない。

 しかしだ。
 ツェーン迷宮の結界は、コンクリートのように強化されたばかり。
 この2ヶ月間、1体も確認されていなかったのに。 

「どうやって出てきたんだ?」 

「分かりません。全く!」

 50体もだ。
 50体もウルフがハゲ山の坑道から出て、50キロも離れたツェーン迷宮に移動した?
 いや考えられないよ。

 迷宮近くで、湧く新しいポイントが出現したのか? 
 俺はキキン国内の溜池を埋め立て、小山を削りさら地にし、アハートさんの希望通りにあちこち地形を変えた。
 その弊害なのか。

 いや、仮にそうだったとしても、いきなり50体はおかしい。
 
「あれ……?」

「そうなんです! ランさんとミキさんが、血相を変えて出ていかれ――」

 ツェーン迷宮に向かったな。
 
「ちょっと捜してくる。エースとハヤテは待機してて欲しい」

「「はい!」」

 言い残し、俺は建物の陰に入りジャンプしたね。
 道にそってツェーン迷宮に飛行していると、林の中だ。

 ドドドドドド――――、と轟音と共に木々をなぎ倒し激走する、
 ヌーの群れ……?
 いや、サイズが違う……、信じられないけど、ボーンキラー・ウルフの群れだ!
 その数、ざっと100体。
 どれもレベル30以上。

 情報の倍の数じゃないか!
 いや、ここだけじゃないかもしれない。
  
 先頭、軽自動車サイズのウルフの背中に、剣化した触手を突き刺しているのは、5歳児のランちゃんだ。
 ミキちゃんが、ウルフの前足を切断し動きを止めても、後続のウルフがつんのめったウルフを乗り越え、踏みつけ、突進は止まらない。

「どうなんてんだよ?」

「「あっ! ヒジカタ」」

 俺に気付いた2人がジャンプして空中に来る。

「迷宮の結界が消えてるのよ!」

「あたちたちじゃ止められないのッ!」

「結界が消滅?! 
 2ヶ月前に強化したばかりなのに」

「そうなの。
 どんどん出てきてるの!」

「まじかよ。
 止めないと、キキンが。
 外壁が無い外区は――」 

 ウルフの群れが林を抜けたよ。
 勢いは止まらず、丘を駆け上がるその先、移動式やぐらの前では、
 モンスター討伐が主な戦闘力が高い名衛軍(めいえいぐん)第一部隊と自衛軍が、ボウガンで応戦を開始したよ。
 
 空中を矢が雨のように飛ぶ。
 ウルフに突き刺さるが、雪崩のような突進は止まらない。

 ダメだ、こりゃ。
 全滅するぞ。

「「ヒジカタなんとかしなさいよッ!」」

「もちろんだよ。
 さあ、出ろッ!」



 ノワンダール・ドガーム・デーモン


 
 ゴゴゴゴゴゴゴ……。
 と暗雲が立ち込めだし、雷鳴が起きる。
 上空に、深緑色の体長100メートル級のデーモンが登場した。
 
『久しぶりよのう、お主』

『ほんとだね。
 さっそく依頼だよ。この子たちと協力してあのウルフ連中を始末して欲しい。
 キキン兵に危害がないようにだけど、出来る?』

 以前、見せてもらった魔法は、今までのデーモンの魔法とは比べ物にならないほど強力で、広範囲だった。

『ふっふっふ……我に不可能はないわ』

 デーモンの巨大シッポ(ドラム缶サイズ)が俺の背中に刺さる。
 ブスッと音がしたけど、痛くもなんともないね。
 静かに俺の生命力(41,943,040/41,943,040)が消費されはじめたよ。

『このシッポ接続だけど、俺とドガーム・デーモンさんはどこまで離れても良いの?』

『うむ。我の尻尾の長さは100キロメートル。気にするでない』 

『んじゃドガーム・デーモンさん、後は任せたから』

『急用があるのか?』

『ちょっとね』

 ランちゃんとデーモンを置いて、俺はツェーン洞窟に飛んだよ。
 元栓を閉めないとダメだ。


 迷宮上空に到着。

 見下ろすと、洞窟からウルフ系らしきモンスターが、ぞろぞろ出てきていた。
 しかもハイレベル。深い階層のモンスターだよ。
 迷宮の各階層を仕切る結界が消滅しているんだ。
  
 降り立ち、洞窟に入ってみる。
 抵抗がない。簡単に素通りできたぞ。

「……」
 
 俺でも結界を張れないか、自問(じもん)してみる。



 ~ SSSレア・スライム LV 24 の獲得能力に存在しない ~


 
 だよね。
 出来たら、都合良すぎるよ。

 大司教さんを呼んで結界を張ってもらおう!



 
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