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3章
キキン上空
しおりを挟むアンフィニ大司教の依頼を、拒否する使徒は誰もいない。
全員が異次元に繋がる投入口に進んで入ってくれたよ。
例外が1人いるけど。
「やだ。暗いの怖いよ、狭いとこイヤだよー」
「きゅーきゅー」
青いスライムを連れた外見5歳児のランちゃんだね。
やれやれ。
◆
ギュ――――――ンッ!!
全員をアイテム収納庫に収め、ロケット形態て戻ったキキン国上空。
雲ひとつない快晴だけど、雷鳴が轟き、広大な放牧農耕地一帯に無数の稲光が、蜘蛛の巣のように走っていたよ。
入道雲のようなデーモン5体が浮遊しながら、稲妻魔法を連発しているからだね。
『ご苦労様です』
『……お、……主か……』
ドガーム・デーモンは顔を強張らせ、地上を睨み続ける。
他の5体も必死に、各種魔法を放っていた。
『ん? 苦戦してるの』
『少しな……』
デーモンさんたちの生命値が半分まで減少していた。
『攻撃されたわけ?』
地上は、モンスターで死屍累々だよ。
物理攻撃を受けつけないデーモンさんは、以前、稲妻魔法《サンダー》一発で、レベル40~80のモンスター100体を葬ったそうだ。
もちろん無傷でね。
だからデーモンさんを傷つけるモンスターがいるとは思えないんだけど。
いや――?!
ダメージを全く受けていない初見のモンスターが20体、4種類いるぞ。
『あれか!』
『……うむ』
いずれも40~60の高レベル。
小さいから分からなかったよ。
『!!』
突然、衝撃が発生。
飛行速度を優先にしたロケット状の俺の身体に何かが貫通したぞ。
直径3センチの穴が開いていて、中の肉が溶け落ちてゆく。
高温で焼いたように熱い。
俺にも見えないかった……。
早すぎた、というわけじゃないと思う。
そもそも見えない攻撃、ビームだろう。
俺の眼が視認できるのは、波長で言うと紫外線から赤外線の範囲まで。
それより外れた、γ線やX線、未知のビームはまず見えない。
デーモンも俺と似たような眼の構造なんだろうね、ヤラれるわけだ。
穴を修復しつつ改めて見下ろすと、初めて見るモンスターたちが、ニヤニヤしていたよ。
ニヤニヤって変?
本当に気持ち悪く、ニヤニヤしているんだけど。
ズロー・スコーピオン
巨大なサソリだ。
でも人間の顔のようなのが背中にあり、薄笑いしてやがる。
好きになれない。好きになる気はないけど。
シュヴェル・グラディウス
頭の先が剣のように尖った、ステゴサウルスのようなモンスター。
こいつにも、人の顔が頭部にあり……キモい。
うぇ~、俺と目が合っちまった。
テネブラ・ワーム
土管のように太い、ミミズ系モンスター。
先端に人の顔面。
基本、ミミズが嫌いです。
人面ミミズだと、なおさらです、はい。
エリゴール・ラット
人の顔付き頭部(恨めしそうな女性の顔面)が2つある巨大ねずみ。
どうして人の顔なんだろう、可愛らしく生まれて欲しい。
全モンスターが地上で見たこともない高レベルなので、迷宮モンスターだろう。
ウルフ系モンスターより、ずっと深い階層に巣食うと見たね。
見えないビーム攻撃で、デーモンさんたちがダメージを受けている。
なにか対策をしないとね。
『えーと、そうだな~。
ドガーム・デーモンさん、聞くけど、この戦闘地域の大気にチリ成分を増やせるかな?』
『チリだと?』
『そうそう、水蒸気とか、いわゆる小さな不純物』
『なにを、わけがわからん』
『敵の攻撃を《見える化》するのに必要なんだけど』
『?』
『よく雲の隙間から射し込む光の帯があるよね、天使の梯子(はしご)と言うけど。
大気中にある水蒸気や細かいチリに光が影響され、目に見える現象だよ。
理科で習った『チンダル現象』、覚えてるかな?』
『……、……』
理科とかデーモンさんに言っちゃダメだったね。
『それと同じことを、敵のビームでやっちゃおう、ってわけね。
今日のキキンは雲ひとつない快晴だから、ビームが見えにくいわけね――』
ビームは見えないだけで、存在しないわけじゃないからね。
『なるほど。見えないビームに色をつけるのか』
『そうそう』
分かってくれたみたい。
『任せろ、造作も無いことよ』
ゴロ……ゴロゴロゴロ……。
上空に暗雲が立ち込みはじめ、湿度が上昇、靄(もや)がかかったようになったよ。
『これでどうだ?』
『うん、いいかもー』
突然、白い光線が身体をかすめる。
デーモンさんたちの真横にも。
光速だから、見えても避けられないと思ったけど、キモ系モンスターのちょっとした動き、初動作から、放つタイミングが分かる。
それに俺たちが早く動き回れば、敵さんも当てるのが難しい。
『原理が分かれば、対策も立てられるわ』
デーモンさんたちが自身の身体を小さくさせてゆく。
標的が小さいと当てるのも大変だよね。
予想通り、ビームは明後日に飛んでゆき、全然当たらない。
『さて、逃げてばかりじゃダメだね。攻撃してみようか』
デーモンたちの魔法攻撃で倒せない敵なら。
俺は剣化させた触手を左右2本作り、高速飛行で巨大サソリに接近し、
――切断。
――切れない?!
ギャギギィ――ッ、と硬質化した触手が火花を散らす。
ズロー・スコーピオンの硬い皮膚に、俺の触手が負けたぞ。
離脱し旋回する。
飛行形態から、本来のスライム状で急降下再接近する。
今度は外皮の継ぎ目に柔らかい触手で挿入してから硬質化だね。
ぬるっ!
『上手くいったよ』
中で触手刀を縦横に動かせる。
悲鳴も上げず、巨大サソリは死んだよ。
人面が、悶絶の顔をしている。キモい。
このズロー・スコーピオンに限らず、他のキモモン(キモい系モンスター)も外皮が硬かったり魔法耐性がある。でも身体の内部からだと倒すのは簡単だ。
上空で見ていたデーモンさんたちが、魔法の方法を変えたみたい。
キモモンたちが悶絶死してゆく。
広範囲に指定していた魔法を、キモモン一体の身体の内部20☓20☓20センチに変更したらしい。
結果、キモモン体内に電流が走ったり、内蔵が燃えたり氷結したりして、キモモンが死亡したわけだ。
『お見事です』
『ふっふっふ。とにかく助かったわ、主のおかげだ。礼を言うぞ』
『良いですって、良いですって!
それより、俺は迷宮に向かうけど、後は任せて大丈夫ですか?
なんだったら、もう4体ほど、デーモンさんを追加応援させますけど』
『4体もか……』
合計10体のデーモンさんでキキンを守ってもらうよ。
いや、俺の召喚できる最強デーモンを出すべきかもしれない。
見たことないけど。
『俺の事は気にしなくて大丈夫だから』
『……うむ』
ついさっき、ヴァーチェ国での事だ。
アンフィニ大司教さんにツェーン結界が消滅した話しをした。
世界各国の迷宮に出向き、結界作成強化を長年に渡り成し遂げてきた大司教が言うんだ、間違いないだろう。
ツェーン迷宮は世界でも類を見ないSSSレベルの最強ダンジョン。
今から約一万年前に誕生し、推定最下層は2000階。
当然ボスに辿り着くまでに湧くモンスターも桁違いに強く、レベルは100超えだとか。
つまり、今いるキモ系モンスターは序の口になる。
まだまだ、これから、もっと手強いモンスターが出てくる可能性がある。
因みに迷宮のボス・SSSレア・エインシェントの推定レベルは200超えらしい。
レベルが1つ上がるたびに、ステータス値が2倍になるSSSレアタイプモンスター、
200レベだと、ステータス値は何桁なんだろうね。
まあ、とにかく、俺(まだレベル23)なんか相手にもなりそうにないよ。
半年前。
エインシェントを見にツェーン迷宮に入った。
せいぜい50階程度だろうと、ファーストくんが倒すと言うくらいだから、エインシェントは大したことないと思ってたからね。
でも、無謀な行為だったわけだ。
SSSレアモンスターは、世界で俺だけじゃなかったわけだ。
まあ、最下層まで行けるわけないけどね。
とにかく、大急ぎで結界を張ったほうが良い。
『……願う』
少し考えて、ドガーム・デーモンさんが言った。
迷宮の仕組みを話したわけじゃないのに、察したみたい。
『そうだね。そうしたほうが良いと思う』
結界が作成できるかどうか分からない今、ここで食い止めないとキキンが崩壊する。
俺の店も、SSたちの思いも、アハートさんも、何もかもが。
◆
結局、俺が召喚できる強いデーモンから順番に16体召喚したよ。
残ったデーモンは、たぶん戦闘には向かないだろう。
デーモンの全指揮をドガーム・デーモンに任せ、俺は迷宮の入り口に向かった。
飛行中、高レベルキモモンを発見したので倒しながら飛ぶ。
予想通り、迷宮付近にも高レベルキモモンが15体いたね。
バスッ! ズバッ!
ドスッ! ドスッ! ズバッ!!
一体残らず20秒であの世に送り、着地して安全確認だ。
幽霊屋敷のような、オドロオドロしい雰囲気の迷宮入り口に松明を燃やす。
真っ暗な内部にも、ランタンを幾つか配置し明るくするよ。
これで、外からモンスターが出てくる過程が見える。
さっそくランちゃん青ちゃんコンビとヒトミさんを収納庫から出し。
そして、使徒30人と結界張りに使用する道具も出す。
「……、なっ!?」
「こ、……これは」
使徒30人が驚いている。
一応前もって、『ヴァーチェ国から、キキン国へ一瞬で移動するから、驚かないでね』と説明したんだけど、
心まで染みてなかったわけだね。
最後にアンフィニ大司教さんを実体化させると、使徒たちが目を見開いて俺に向かい唱えはじめたぞ。
「祓ったま! 清ったま!」
なんだろうなあ~。
俺を得体のしれない何かと、恐れてのこと?
「……ここは、キキンなのか、ヒジカタ殿?」
「そうですよ、司教さん」
「うむ、なるほど。ヒジカタ殿の言うとおり、一瞬だったのう」
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