SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)

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3章

牢屋にて

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 ヒマなんだよね。 
 牢屋って。

 だから、いろんな事を考えちゃう。

 以前、分裂したら、SSたちが生まれたよ。
 いわゆる分裂個体だね。

 だけど、SSレアエンシェントの鋸輪波のこりんぱで分断された時は、別人(SSたち)ではなく、俺の意識が直結し、思うように行動する俺の分身になった。
 
 違いは、体内の核が分裂したかどうか。
 核を残したまま、半分になれば己の分身になり、核を分ければ新しい個体が誕生する。
 核分裂の有無が生命誕生を左右するわけだね。
 やがてスクロールを始めた説明テロップにも、そう記載されているよ。

 試しに、核分裂無しで肉体分裂をイメージしてみる。

 むみゅむにゅ、むみゅむにゅ。
 
 身長80センチメートルほどのスライムが2つできたよ。
 一つは核があり(本体)、一つは核なし。
 もちろんどちらも俺の意識があり、ひょこひょこ進める。

「面白いなあ」

 興味深いから、どこまで小さく分裂できるか試してみたら、3センチまでいけたね。
 だけど、能力値が著しく低くなっている。
 2分すれば能力値も半分に、10に分かれれば能力値も10分の1。
 分裂すればするほど、弱くなる仕組みなんだね。
 
 使い道がないかあ。

 
 ◆


 しかし……。
 ヒマなんだよね。
 ヒマなんだよね、牢屋って。

 事情聴取するってロアンくんが言ってたけど、牢屋番人が食事を持ってきただけで、12時間誰も話に来ないよ。
 店の様子や、張ったばかりのツェーン迷宮結界の様子が気になるね。
 勝手に外に出れるけど、出たら反逆罪? 脱獄犯扱いされるかも。

 ならば――。

「リトルデーモン召喚!」

 メグミさんたちの護衛をさせていたリトルを呼び戻す。
 目前に暗黒色の渦が発生し、そこから、ぴょん、と黄色い三角帽子を被った手の平サイズの悪魔が飛びだしたよ。

「ご主人様ぁ~♪ リトルのご指名ありがと~」

「お疲れさん、頑張ったね」

「えへへへ」

 褒めてやると、もじもじしてはにかんだよ。

 近況を尋ねると、ヴァーチェ国に帰った途端、使徒たちは大人しくなり、リトルは見守るだけだったらしい。

「そうなんだ」

 メグミさんたちは以前の過酷な奴隷扱いから、調理補佐、お使いなど、いわゆる平民のメイドと同等の軽作業をしていると言う。
 読み書きが出来る奴隷は事務を任され、美貌を活かして広報に加わったり。

「呪縛の法術が解け、意思の疎通ができるようになったおかげだと、皆さん喜ばれてます。
 ご主人様と会う機会があったら、ぜひお礼を言って欲しいと」

 よかったなあ。

「それでですねえ……、メグミさんが……」

 ?

「『お姉ちゃんだけじゃなく、私も愛して~♪』と、『3分でヴァーチェ国に来れるなら、いつでも私を食べてぇ~♪』と伝えて欲しいと言ってました」

 あのねえ。

「……ま、まあ、喜んでいるなら、それでいいね」

「はい。
 そうそう、昨日、町民の男性からプロポーズされた方もいましたよ~♪」

「そりゃ、凄い!」

 キキン国もだけど、売買される奴隷と平民との身分差は、ペットと飼い主に近い。
 若々しく美しくなったとは言え、平民が奴隷女性に求婚するなんて、前代未聞のはず。
 
 実は教団が、奴隷たちにもう一度呪縛の法術をかけるんじゃないかと、ちょっと心配だったんだよね。
 『奴隷=器物』な発想だから、所有者(教団)に無断で術を解いた俺は、器物破損の犯罪者扱いかもと。
 
 蓋を開けるとそんな事は全然なくて、

「喋れるようになって帰ってきた奴隷さんを、ヴァーチェ国民は『奇跡のスレイブ』と呼び、側に置くと幸運を招くと言ってますね」

「そこまでなんだ」

 ヴァーチェ国には、まだ呪縛の法術をかけられた奴隷が多くいる。
 奇跡のスレイブが広まり、呪縛の法術を解こうと国が思うようになれば、俺は直ぐに飛んでいって、ヴァーチェ全土を周り、奴隷一人残らず法術を消していくよ。
 
「えーと。
 それで、今回のご用件は、なにかなぁ~」

 リトルが矢印形のしっぽを振り、小首をかしげニコニコしていた。 

「おっと、そうだった。
 動けない俺に変わり、店舗とツェーン迷宮の様子を見てきて欲しかったんだ」

「ええーっ! リ、リトルに、あの世界的なツェーン迷宮を……で、で、ですか……」

 突然、ガニ股になってプルプル震えだしたぞ。
 大げさだなあ。

「ぜ、絶対に、……む、無理だと思いますぅ……」

「大丈夫だって、見るだけだから」

「じゃ、せめて1層目に、……でないと、死んじゃうリトル」

「……ん? 
 外から洞窟の結界の有無を確認するだけなんだけど」

「え……なんだ。そうだったんですか~。よかったぁ~。
 では早速――」

「ちょっと、ちょっと待てリトル! 
 1層目ってなんだ。
 もしかして、お前はツェーン迷宮の各階層どこでも出入り自由なのか?」

 デーモンは亜空間を移動できる。
 確かに、その理屈だったら迷宮だろうと、マグマの中だろうと、宇宙空間だろうと、どこでも実体化可能。

「……いやあ、あのお……」

「ツェーン迷宮の全階層を、くまなく調査するんじゃないかって、勘違いしたんだね」

「はい……」

 予想通り、言い難そうに頷いたよ。
 そりゃ、死ぬよね。
 ノワンダール・ドガーム・デーモンですら、ツェーン迷宮モンスターレベル40~60に手こずったわけだから。
 
 
 ◆


 デーモンの亜空間移動。

 使えるよ、これは。
 リトルでは無理だけど、俺の召喚可能な最強デーモンたちなら、ツェーン迷宮内部の調査が可能かもしれないね。
 それに、以前から気になっていたんだけど……。

「リトル、そのポーチの中に、辞典みたいなのが入っているよね」

「あ~、これですよね」

 リトルが肩から斜めにぶら下げたポーチの中をゴソゴソして取り出した。

「……普通に俺にも持てるんだけど、この辞典。
 おかしくないか?」

 リトルが俺に抱きついたり、キスしたりはできるけど、
 俺ら現実世界の生き物からデーモンに物理攻撃はできない。つまり触れない。
 なぜなら、亜空間の生命体だから。

 だけど、この辞典なら俺にも触れる。
 つまり現実世界、こっち側の品物って事だよね。
 だけど、それなのに、亜空間移動が可能。
 おかしくないかな? 
 
「このポ―チに入れれば、どんな物でも亜空間移動できちゃうんですよーね」
 
「そうなんだ!」

 ん?

 どんな物でも……。

「だったら、俺も亜空間移動可能なんじゃ」

「ご主人様は大きすぎますよー。ポーチに入らないですってぇ」

「でなくて、ほら、こいつなら」

 俺は身体から3センチの個体を生成し、リトルに差し出したよ。

「か……かわいい♪」

 可愛いとナデナデする消しゴムサイズのスライム(俺の分身)のステータス値は、元の俺の約100分の1だね。
 だけど、それでもSSたちよりも、SSレアエンシェントよりも高いよ。
 因みに、こんな感じ。


 ――――――――――――――――――――

 SSSレア・スライム(分裂個体) LV 23  

 生命力 419,430/419,430   

 ステータス

 攻撃力  582,912
 素早さ 3,293,056 
 知能     582,912
 運       582,912

『変形』
『ステータス確認』
『アイテム収納庫』
『分裂』
 その他多数(詳細)

――――――――――――――――――――

 
 ◆

 
「いってきま~す♪」

 リトルがモミジのような手を振りながら、暗黒色の空間に身体を埋めたよ。
 もちろん、ポーチには俺の分裂個体が入っている。
 
 リトルが「到着しましたよー」と言うので、糸のような触手をポーチから出してみると、
 ツェーンの洞窟の前で、恨めしそうな女性の顔が2つある巨大ねずみ、エリゴール・ラットが唸っていた。

 結界は見事に消えていた。


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