SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)

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3章

青白い空間 その1

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「た、助けてッ!」

 ビトくんが乱打されている。
 何かで刺されている。
 姿は見えないが、痛みは伝わるよ。

「何処にいるんだ、ビトくんッ?!」

「こっ、ここッ……」

 赤黒い人形を蹴散らし、声のする方に向かった。

「わっ……、わからないッ! 何処だッ?」 

 この部屋は、たったテニスコート程度の大きさだぞ。
 なのに、SSSの俺でもビトくんの姿が確認できない。

「くふふふふ…………」

 シキアキの笑い声が遠のいてゆく。

 部屋中に発生していた人形も、霧が晴れるように消滅してゆき、
 部屋には元からあったテーブルや椅子が残っただけ。 
 誰もいない。
 ビトくんの声もしなくなったよ。

 あの人形たちが、ビトくんを亜空間に連れ込んだのか。
 仮にそうだったとして、こっちの世界の生物が、亜空間で生存できるのか?

 分裂個体(ビトくん)に意識を向けてみる。 
 生きててくれよ。

「……神よ」

「おっと! お、驚かすなよ、ビトくん!
 いつからそこにいたんだよ」

 ビトくんが人間モードでほくそ笑みながら、ビンソンが通ったドアを開けていたよ。

「ついさっきからです」

「へ~、気づかなかったよ。凄いな」

「そうですか~?」

 笑うビトくんなんて初めてみたぞ。
 俺と一緒にいてまだ1日足らずなのに、もう人間らしい表情をマスターしたんだ。
 凄いな。
 
「追いましょう、早く」

「そうだな」

 人間(ビンソン)の脚なら、まだこの建物の中だろう。
 高速移動でビンソンを探したね。
 5秒で、野球場2個分、5階建てのアローズ館を全スキャンしたよ。 
   
「いないんだけど」

「ほんとですね、神よ」

 美人秘書二人も、受付嬢も見あたらない。
  
「外に出たのかな」

「……いえ、……たぶん、地下だと」

「地下?」

「はい」

 もちろん、地下室の存在も視野に入れていたよ。
 だから、軒下の空間や、他にも隠し通路や屋根裏、壁の隙間など、隠れそうな場所には、念入りに触手をすり込ませて視認した。
 それでも発見できなかった。
 ビトくんだって、見てて知っているだろうに。

「カンです。神よ」

「……カンか」

 考えられなくはないよ。
 なにせ、あの秘書たちは亜空間の物質(人形)を操る。
 亜空間を通り、地面のずっと下、普通なら行けない50メートル、100メートル地下に独立した空間があって、そこにビンソンを避難させた――とかね。
 
「まあ、そういうカンは大切だと思うよ、うん」

 意外と正解だったりする。
 ずっと野生で生きたビトくんだからこそ、カンを大切にするんだね。
 ビトくんのカンに頼る前に。

「ビトくんは、ここにいてね」

 館外に逃げた可能性を潰すよ。

 アローズ館を中心にして半径5キロ範囲を高速移動してビンソンを探してみる。
 建物の内部や井戸の中まで隅々ね。
 住民たちのプライバシーを侵害したけど、やっぱりいない。
 30秒もかかっちゃった。
 
「いや~、おまたせ、ビトくん。
 さて、地下だけど、どこ辺から潜ればいいのかな」

 ビトくんが示したのは、アローズ館の1階スタッフ更衣室の床下だったよ。

「さっき確認したけど、この地下なの?」

「……たぶん」

「そんな顔するなよ、信じるから」

 さっそく床の隙間から軒下に降り、先端がドリル状のミミズ体型になって地中に潜ったね。

 ドリルを高速回転させ約1分後。
 地下200メートル進んだところで、土がなくなったよ。
 ひゅーん、と100メートルほど落下し、スライム形態で着地する。
 
「へ~、ビトくんの言ったとおりだ。地下空間があったぞ」

 青白く発光する巨大石柱が等間隔で、俺が落ちた100メートル上の青白い岩盤を支えていたよ。
 周囲の岩壁も青白く光り、陽の光が届かない地中なのに、空間全体が神秘的な青色に染まっている。
 空間は奥へ向けて右に曲がっており、続いているみたい。

「へ~、ビトくんのカン、凄いじゃん」

「神に褒められて幸せです」

 びっくりしたよ。
 突然、背後から声が聞こえたから。

「なな、なんだよ、ビトくん! 来てたんだ」

「はい」

 いや~、意外だったよ。
 10~20分遅れるかと思っていたから。
 と言うのも、俺が分裂個体を動かすのと、ビトくん(他人)では違うから。

 分裂個体は俺の分身。俺自身だよ。
 だから、どんな状況でも俺が宿れば個体能力を100%発揮できる。俺(本体SSSレアスライム)の速度に付いて来れる。

 だけど、ビトくんは違う。
 ――身体をドリルにして潜る、しかも俺レベルに早く――、なんて事は、初めて自動車を運転するのに近いよ。
 個体能力を100%発揮するほうが珍しいだろうね。
 ビトくんは、たった1日で俺の分身を使いこなしているわけだから、よほどセンスが良いって思うよ、ほんと。 

「神よ」

「ん、どうした?」

「……」

 ビトくんが、触手の先端を矢印状にしたよ。
 1キロメートルくらい先。岩陰に建物の一部が見えていたね。

「あそこにビンソンがいる、と言いたいの?」

 頷くビトくん。

「そうか」

「……」

「じゃ、行こうか」

「はい」

 ビトくんと共にキューブ状の建物に向かったね。
  
 
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