170 / 182
3章
千兆
しおりを挟むどこからだろうか、天井からでも廊下からでもなく、微かな声が聞こえてきた。
『大番狂わせだ』
『わたし、大逆転ッ!!』
『まさか、全滅って……』
『――は、どうなってる』
『次は誰が出る』
『オボスかしら』
SSたちはせっせと消化吸収に勤しんでいて、何も聞こえていない。
俺の、SSSレアスライムの聴力で、ぎりぎり拾える野太い男の声と、女性の声も少し。
この世界・最下層を支配する種・エインシェントたちの会話だろう。
何処からか俺たちを見ていやがる。
『やめろよ、――ならないから』
『おお、やっぱり』
『大丈夫か? ――成立しないだろ』
ならない?
成立しない?
聞こえない単語がある。
しかし、いったいどこから、俺たちを見ているんだ。
監視カメラのような物が部屋の何処かにあるのか。
何故、襲ってこない。遊ばれている嫌な感じ。無性にイライラする。
まあ、良いよ。それならそうで。
早いとこ分裂個体を作って逃げ道を探そう。
どうやって地上にもどるかを考えないと、集中しないと。
焦る心を落ち着かせ、6つの廊下それぞれに個体を飛ばした。
すると、6つの個体の視界と意識が、高熱を感じた途端プツッと途切れた。
地上で分裂個体が焼き消された、あの時と全く同じ状況、同じ感覚。
「どうちたの、パパ?」
「ヒジカタ、なにぼーっとしてんの」
「どうされました、お父さん?」
「個体、帰ってきませんね」
「賭けだ……」
聞こえなかった単語が『賭け』だと今知った。
「?」
「地上で遊んだときは、居なかったな、キミは……」
突然正面の真っ暗な廊下から、声が届いた。
この部屋には、俺たち以外誰も居なかったはずなのに。
揺れる松明の光を受けて、石床から30センチメートルほど浮いている身長180センチほどの人間タイプが1体。
モンスターと呼ぶには、人間らしい顔つき体つき。
悔しいけどイケメン。耳にピアス、爽やかなポロシャツにジーンズ姿。
5本指の素手。武器らしい物は無く、さっきの戦闘員とは真逆。
ただ1本、脚と同じサイズの尻尾があり、
頭上に浮かぶ半透明なステータスウインドウには、
~ SSSレア・エインシェント LV 48 ~
と表示されていた。
20匹のSS2期生たちが、俺の後ろに飛び退いてトゲトゲのスライムになったよ。
トゲトゲのトーテムポールが5連4つできた。
「ゼロ階層の覇者ヒジカタさんとその一族。
断りもなく、キミたちを招待した。まずは、心からお詫びをさせてもらう」
深々とお辞儀をしたよ。
ランちゃんを始め、SS一同が、スライム目をまん丸にしたよ。
「ヒジカタさん。私の名は『オボス』
どうかな、私は。キミたちの好みを反映した姿にしたのだが」
低音の心地よいボイス。
「ああ、私のレベルかな?
ご覧の通り、長く生きたわりにはまだ、こんなところ」
こんなところ。
こんなところ、と謙遜するわりには、
オボスと名乗るエインシェントの生命力値は、俺の10桁『億』に対し、16桁『千兆』。
驚異的と言うか天文学的数字だけど。
「ここはレベルが上がらなくてね。
それに比べ、ゼロ階層は上がりやすい。
様々な生物が棲息し、科学の進歩も著しい。
結界が弱体化したお陰で、初めてゼロ階層に行ってみて驚き、そして素晴らしさを知った。
ゼロ階層なら、私の一族も更なる繁栄が約束されよう」
「……、……」
「そこで、エインシェント一族は、ゼロ階層移住を決めた。
この案件は、会議でも全員一致で可決された。
どこで、まずはゼロ階層覇者ヒジカタ一族を招待しようではないか、と言うわけだ。
ご理解したかな」
「あのお…………、オボスさん?」
「おお! 知能が高いのに、返事をしないので、怒っているかと心配だった。
なんだろう。なにか質問があれば気軽に言ってくれ」
「はあ…………。
あのですね。招待って……、その、あの、さっきの戦いがですか」
「うむ。
私の一族とヒジカタさんの一族。
ステータス値で既に勝敗は決しているが、実戦しないと分からない。
そこで、復活光線をつかい招待戦闘をしたまでだ。
予め趣旨連絡をすべきだったかもしれないが、知って戦うのと、知らずに戦うのとでは、本気度が違うと思い、こうなった。
だが、まさか精鋭10人が、ヒジカタさんに瞬殺され、しかも吸収されるとは意外だった。
国民も観衆者も驚いているぞ」
なんか、俺たちが悪者に成っちゃってるぞ。
「ヒジカタさん一族の強さは分かった。
さて。どうだろう、ここは正々堂々と殺し合いで決めようではないか、ゼロ階層の所有権を」
「……は?」
「どうされた」
「いや、所有権……って……」
知能が高いから、もしかしたら、平和的に会話で解決できるかも、と期待していたけど、
なんで『正々堂々と殺し合い?』をするわけ。
感覚おかしくない?
まあ、そもそも、SSたちをさらった挙句、エンドレスバトルを強要する連中相手に、平和を期待した俺がアホなんだけど。
「いや、あのですね。
そもそも、地上、ゼロ階層ですけど、俺に所有権はないですし、地上を私物化もしてないですよ」
「なんだと!
私の知らぬ、ヒジカタさんより更に強い一族がいるのか!
むむむむむ…………」
「いや、そうでなくて――――」
俺は自分の考えを交えて地上の暮らしを、一番多い人間という種が平和的だと言う事を、分かりやすく説明したよ。
そして、エインシェント一族が、ゼロ階層(地上)に移住希望。
移住という言葉の意味に、最悪な状況が過ぎったけど。
殺し合いで決める、と平気で言い切るイケメンに無駄だと思ったけど、
それでも、ダメ元で、以前1層目の覇者・サキュバットにも勧めた『人類との共存』を、
『平和』を強調して話してみた。
平和だから科学が進歩するし、文化も栄えるとも添えて。
「…………ヒジカタさんの話しだと、ゼロ階層は、最弱一族人間が最も数が多く文化も栄え、最強一族ヒジカタさんが戦わずして、まさかの同居?
魚屋家業をして人間の食文化繁栄をサポート?
それで、私たち一族もそれに習えと?」
「……いや、そのお……」
「……ふふふふふふ…………あっははははははは」
高笑いする顔が、人間の骨格から爬虫類系に変化してゆく。
SSたちが再びトゲトゲ・トーテムポールに。
「弱者が栄えた文化や科学は、弱者のためにあるもの。
平和は、世界を勝ち取った一族が、後々に広めれば良い。違うか、ヒジカタさん?」
うむむむ。
返答に困るなあ。
「さあ~、始めようか。最強一族同士。
復活光線なしのバトル。今度は私も参加させてもらうよ」
10
あなたにおすすめの小説
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる
静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】
【複数サイトでランキング入り】
追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語
主人公フライ。
仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。
フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。
外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。
しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。
そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。
「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」
最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。
仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。
そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。
そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。
一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。
イラスト 卯月凪沙様より
スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる