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3章
業火
しおりを挟む広さは直径30メートル高さ20メートルほど。
中央にエインシェント像があり、松明の明かりを受けている。
今までと同じ部屋だけど、血塗られた石床にエインシェントの肉片があった。
最初の部屋だ。
俺が入って直ぐの部屋。
ここは復活光線が降らない仕様なのか。
「ここだ! ここ!」
「ここだねー」
「そうそう」
最高速度を維持したまま、SSたちが床に描かれた赤色の魔法陣を示したよ。
転移した場所は、ここだって言いたいわけね。
よーし!
後はこの先の緩やかな螺旋廊下を抜ければ外だよ。
スキルが使える。
今まで、こんなに、スキルのありがたみを感じた事はないよ。
なんとかなる!
「なんとか、なりそうだよ!」
「「「「「「「わ~~~~~い♪」」」」」」」
ちゅるん、ちゅるん、ちゅるん、ちゅるん、
――ちゅるるるるるんっ!!
しずく型カプセルが床を滑る音すらも、喜んでるみたいだね。
俺を先頭に螺旋廊下を駆け上がろうとした時、風を斬るような音がした。
瞬間身震いがして、全ての細胞包装を急停止させた。
「……どうしたんです、お父さま?」
「きゅー?」
「上がらないの」
「……いいから、静かに……」
自分のカンを信じた。
ビトくんが壁から出てきて、2本の触手を交差させたよ。
そうか、ビトくんも行くなと言うんだね。
俺も賛成。
少しして、
ワイバーンタイプのSレアやSSレアのエインシェントが、前方の螺旋階段から続々と部屋に飛び入ってきた。
全部で18匹。別部隊だ。
俺たち目掛けて極薄の輪――、エインシェント専用スキル・鋸輪波を飛ばしてきたよ。
高速で回転する輪に触れると、鉄でも岩でも線を引いたように切れる。
遅れて、ゴオオオオオッッと螺旋階段から共鳴音が鳴いた。
「きっ、きゅーっ!!」
鋸輪波は青ちゃんの尖ったしずくの先端を削り、後ろの石床にめり込んで消えた。
他のSSたちにも鋸輪波が襲って来たぞ。
狙いを俺から、倒しやすいSSたちに変更したようだ。
手裏剣のようなリングが超高速で迫って来るけど、標的のSSたちは全員俺の細胞で包んでいるので、スイスイ躱せるよ。
――ゴオオオオオオッッ!
ところが、爆炎まで吐きやがったぞ!
部屋が火の海だよ。
部屋の酸素を一瞬で消化し終え、それでもエインシェントの口から竜巻のような炎が噴出し続けている。
「熱いんだけど、ヒジカタ」
「キィ……キュ……」
「なんとかならないの?」
仲間の身体がアイスみたいに溶けてゆく。
「……う、うん……」
エインシェントの身体は熱耐性が高い。
だけど、身体の80%以上を水分で構成する俺たちスライムは低い。
灼熱部屋に長くいると、スライム細胞が蒸発し、いずれ核にもダメージが加わる。
早く外へ出ないと全滅だ。
だがしかし、1つしかない出口は、瞬間転移したのだろう人間タイプに戻ったSSSレアエインシェント・オボスが立ち塞がっていて、迂闊に突進できないんだけど。
一度、後退するか。するしかないか……。
いや、ジリ貧になりそうな予感がする。
とすれば――――。
仰いだ俺の目線の先だ。
天井で旋回するエインシェントたちにぶつかり、すり抜けるビトくんと眼があった。
ビトくんは懸命に触手を動かしている。
そのジェスチャーの意味を直ぐには理解出来なかったけど、
「ありがとね、ビトくん。やってみるよ!」
仲間を残して俺は、炎を巻き上げて垂直ジャンプしたね。
身体をロケット形態にして、狙うは天井だよ。
この部屋は、遺跡の一番上に位置している。
だから天井の向こうは外。きっと青空が広がる世界。
壁を素通りできるビトくんは、自分で見て知っているんだよ。
ここからなら、天井を破っても出られると。
高速で迫る鋸輪波を3度避けて進んだ先に、エインシェントが5匹立ちはだかった。
俺が天井を突き破ったら、外に出れる。
だから邪魔をする。
考えは間違っちゃいないよ。
エインシェントが爆炎を飛ばしてきた。
避けれない。
いや、避けるべきじゃない。
次に天井を破る間にSSたちが焦げスライムになりそうだもん。
爆炎を真正面で受けたまま突き進み、触手刀で5匹斬る。
殺しはしない。生命力値をゼロにすると、俺に経験値が流れ込むから。
29レベに成ってから、エインシェント4匹分の経験値を得た俺には、もう、後10匹しか倒せない。
斬ったのはエインシェントの翼だ。胴体の付け根に触手刀を入れ両断した。
翼が無ければ飛べないし、翼を落とした程度なら死にもしない。
爆炎を吐こうとするその口先も触手刀で切断した。
3匹目は翼を2つ分断し、4匹目は鼻口から下を切り捨てる。
5匹目の翼に触手刀を落とした時――。
「…………馬鹿め」
そう言い捨てたオボスの言葉の意味は直ぐに分かった。
オボスが右手を動かすと、俺が斬ったはずの翼が、胴が、口先が、動画の逆再生のように戻ってゆく。
ワイバーンは落下せず、2発目の爆炎を放った
ダメだ。
ダメだダメだ。
――ダメだ。
死なない程度に加減して対処できる相手じゃない。
中途半端な攻撃では絶対に助からない。
自分も生きて仲間も助かるなんて――。
俺は死を覚悟していたのに、ほんと。
炎柱を躱して進み、エインシェントの首を跳ねた。
急速に生命力値を『0』にした戦士の切断面から体内に侵入し、スライム細胞を冷却する。
同時に触手6本を腹部から出して、天井を背にしているエインシェント6匹の首を落とす。
6枚の半透明なステータス板が、生命力値『0』になった途端、千の粒子となり四散した。
後3匹……。
4匹目を倒せば活動停止。
落下するエインシェントを待たず、SSたちをジャンプさせ、エインシェントの身体に突っ込んだ。
ズボボボボボ――――。
指示もしないのに、SSたちは自身の細胞を冷やしつつ、エインシェントの内部を溶解吸収(栄養補給)。
本能だね~。
6体の亡骸に入ったまま天井に向けてジャンプさせる。
爆炎を浴び火ダルマになったSS入りエインシェント。
「全員で天井をぶち破るぞ!!」
「「「「はーい」」」」
10
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