181 / 182
3章
6ヶ月後
しおりを挟む6ヶ月後、キキン国。
スーちゃんが店主の『スーちゃん寿司』は仕事帰りの男性や、内区のご婦人さんたちで賑わっているよ。
若いカップルがデートで来たり、順番待ちのお客さんが長い列を作っているね。
お客さんの半分以上が常連さん。
酢飯を使用した《にぎり寿司・巻き寿司》が受け入れられているよ。
「ワサビの刺激がたまらんわい!」
「この鼻につ~ん! が良いの~」
病みつきになっちゃったワサビマニアも増殖中。
スーちゃん寿司以外にも、俺たちスライムが出した寿司屋はキキン国外区に2店舗、内区に3店舗、ロアロク国に3店舗。
いずれも好調に売上を伸ばしている。
今後はヴァーチェ国や、エインシェントたちに寿司を食べさせたところ、好評だったので、ツェーン迷宮最下層にも出店しようかと構想を練っているよ。
俺の本業・お魚屋さんも大繁盛。
現在キキン国に3店舗営業中。
朝から鮮度のいいお魚を求めてお客さんが殺到しているよ。
俺たちがスライムだと発覚したあの時と比べたら、今は真逆だね。
実は6ヶ月前。
最下層から地上に戻った直後なんだけど、
収納庫に入れていた眷属化エインシェント3匹を、建設中のキキン外壁より内側に登場させたわけ。
地上だとエインシェントはワイバーンタイプで全長200メートル。人間タイプでも20メートルと巨人だよ。
突然出現した竜人3匹が地響きをさせながら、ヒジカタに戻った俺に近寄って跪いたよ。
静かに「ご命令を」と言い、沈黙しているだけなのに、
キキンの民は逃げ惑い、自衛軍も名衛軍も対抗できず戸惑うだけ。
まあ、でかいから仕方がないんだけどね。
「はい。じゃ、さっき言ったこと、キキンの民に話してみてよ」
「御意」
彼らを連れてきたのは、キキンの住民に、今までの経緯と、ツェーン迷宮がどういった物なのかをエインシェント本人の口から説明させるためだよ。
俺が何を言ってもキキン国王も民も本心から信用しない、そう思ったから。
巨人の長い話しを聞き入るキキンの民。
決めてはランちゃんの一言だった。
「……お手!」
20メーターの巨人が話しを中断し、ギロッと5歳児を睨む。
右手がランちゃんに向かって落とされた。
だけど、直前で開かれて、お手。
本当にお手をしたのだ。
眷属化すると、俺に限りなく近い生命体の命令もきくみたい。
ランちゃんは青ちゃんを連れて巨人の手に乗る。
上げてっ! の一言でランちゃんは天高く上昇し、頭髪をなびかせた。
3体の巨人に囲まれ、上空からじっとキキン城を見据えるその姿は神々しくもある。
「「「「「「おおおおおおおおおお」」」」」」」」
遠くで見守っていたキキンの民からどよめきが上がったよ。
更にランちゃんが、5歳児から一瞬で青いスライムに変化。
「「「「「「…………、…………」」」」」」」」
キキンの民が一斉に絶句したよ。
「あ……蒼き……勇者だ……、……巨人を操りし蒼き勇者」
誰かがそう言った。
「蒼き勇者だって?」
「あの言い伝えの?」
「キキンに古くからある」
「そ、そうだ……。まさしく蒼の勇者じゃないかッ!!」
「道を開けよ」
騒ぎ出した人混みから、ボロボロの衣を纏った老婆が歩み出て杖をかざしたよ。
「蒼きモンスターを連れし蒼き勇者が天から舞い降りて、ツェーン迷宮を鎮め、キキンの民を導かれる……やはり、伝説は真であったか……」
「「「おおおおおお!」」」
そんなナウシカみたいな言い伝えがあったんだ。
「ラ、ランさま……ついて行きます、一生」
「……ご立派になられて……」
ランちゃん信者が涙を浮かべているんだけど。
◆
ランちゃん勇者がツェーン迷宮のボスエインシェントを倒し、キキン国を救った。
俺たちビトスライムは、勇者一族なんだって。
キキンの民が、勝手にそう呼びだしたね。
因みに現在眷属3匹には、ツェーン迷宮から出て来たモンスターを追い返す仕事を与えている。
ツェーン最強の彼らに、敵う者はまずいないからね。
それに2期生たち20匹には、キキン国周辺の森林パトロールをさせている。
そんな感じだから、キキン国の治安は非常に高いよ。
ここ数ヶ月、モンスターを見た人は居ないんじゃないかな。
更に、キキンの国旗デザインだけど。
2羽の鳥が左右に飛ぶシンボルマークに、
しずく型スライムを加えようという案まで出ているよ。
中央の2羽の鳥を、青いスライムが伸ばした触手で取り囲む。
2週間前、キキン国宝画家が見せに来たラフスケッチはそうだったね。
「いや~、何百年続くキキン国旗をですね、わざわざ作り変えるなんて、ちょっとどうです?」
「国王と、国民の要望が強くて」
「はあ……」
そうなんだ。
「国会会議で本決まりしたら、ポラ便で連絡しますので」
「はい」
ポラリス郵便。
通称『ポラ便』
4ヶ月前。
アイテム収納庫に入れたまま、すっかり忘れていたサキュバット一族を全員外に出したね。
と言うのも、殆どのモンスターは空を飛べない。
飛行できる彼らは、運送業が最適と思ったからね。
最初、彼らは驚き抵抗したけど、分裂個体で取り囲み状況を説明。
ポラリスくんが中心(社長)となり、運送会社で人間と関わり合う生き方はどうだろう。
戦って食うだけの社会より、人間と対等に共存してみないか?
そう説得したところ、快諾。
アハート事務所と俺が仲介し、国王に運送業の許可を得たよ。
今では、キキン国とロアロク国の主要地に30店舗を設けている。
今後、マナスル大陸全域と周辺諸国にも支店を開設予定だ。
ちなみに、俺たちの店舗の商品配達もやってもらっているよ。
各ポラリス支店の店先と宅配ボックスに、
獲れたての魚、刺し身、寿司各種の宣伝ビラと注文用紙を配置。
一番人気は、にぎり寿司だね。
各地から予約注文が続々と入ってくるよ。
もちろんクール便で配達。
各地に俺たちの商品が行き渡る。
嬉しいなあ~。
20
あなたにおすすめの小説
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる
静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】
【複数サイトでランキング入り】
追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語
主人公フライ。
仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。
フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。
外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。
しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。
そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。
「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」
最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。
仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。
そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。
そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。
一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。
イラスト 卯月凪沙様より
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる