妄想女医・藍原香織の診察室

Piggy

文字の大きさ
129 / 309
迷走編

7話【daily work】看護師 佐々木 楓 24歳:ダブルデート(楓編)

しおりを挟む
「藍原先生! 待ってましたよ~、もう、先生がいないといろいろ大変で」

 1週間ぶりに病棟に現れた藍原先生は、いつも通り元気そうだった。

「ごめんなさいね、でも西園寺先生が東海林くんをしっかりフォローしてくれてたみたいで」

 両手を顔の前に合わせて、先生が申し訳なさそうにいう。

「ええ、東海林先生、西園寺先生にめちゃくちゃしごかれてましたよ。藍原先生がいかに普段優しいか、思い知ったんじゃないですかね?」

 西園寺先生、前からSぽいとは思ってたけど。東海林先生相手に、見事なドSっぷりを発揮してたわ。

「あ、そうそう、楓ちゃんに相談があるんだけど」

 藍原先生が意味深に目くばせする。あたしは先生について備品室に入った。

「あのね、お願いがあって……。こないだ合コンで会った小山内くんにデートに誘われたんだけど、大橋くんと楓ちゃんも、一緒に行ってくれない?」
「ええ!? 小山内って、あの、先生にめちゃべったりだった、あの人ですか?」

 もう合コンの最初っから藍原先生狙いで、ずっと引っ付いてて、王様ゲームで一気飲みして酔っぱらった藍原先生を介抱するふりして、そのまま外に連れ出そうとしてた人よね。確か、大橋くんが、来られなくなった新條くんの代わりに急遽声をかけた先輩だっていってた。あの人、まだ藍原先生にいい寄ってるんだ?

「え、先生……小山内くんと、デートしたいんですか?」
「えっと、その……し、してもいいとは思うんだけど、その、二人きりはちょっと……」

 先生、しどろもどろになってる。そうなんだ、先生、まんざらでもなかったんだ? あたし、あの人あからさまにお持ち帰り狙ってる感じがして嫌だったから、そうなる前に大橋くんと一緒に藍原先生を連れて帰ってきちゃったけど……ひょっとして、余計なお世話だったのかな? 何か、ちょっと意外だけど。藍原先生、合コンの間も、グイグイ来る小山内くんと何だか話しづらそうにしてたし。

「でね、大橋くんと楓ちゃんが一緒なら、心強いなと思って……。ね、楓ちゃんも、大橋くんと仲いいんでしょ? もしかして、付き合ってる?」
「え、付き合ってるわけないじゃないですか」
「でも、連絡とり合ったりしてるんでしょ? 今回だって、まさか大橋くんと楓ちゃんが幹事だなんて」
「まあ、たまーに、連絡が来るくらいですよ。あいつ、病棟まで押しかけてきてあたしの連絡先よこせっていうから、つい……」

 う、ちょっと恥ずかしくて少しだけ嘘ついちゃった。藍原先生みたいに純粋な人には、とてもいえないわ……好きでもないのにセックスだけは何となくしてる、なんて……。あの合コンのあとも、何かノリでついホテルに行っちゃって……ううっ、恥ずかしい。絶対いえない、こんなこと! ……ああ、でも、大橋くん口軽そうだから、新條くんに話したりして、それが藍原先生の耳に入ったりしてるのかな……? やだなあ。あたしのあんなとことかこんなとことか、新條くんに話してるのかな……。まあ、今更か。生でやってるとこ、見られちゃってるし。

「ねえ、大橋くんて、まだ楓ちゃんのこと好きなんでしょ? 楓ちゃんはどうなの? 嫌いだったら幹事なんてしないわよね」
「えっと、あいつがあたしをどう思ってるのかは知りませんけど……。まあ誘っては来ますけど、相変わらずノリは軽いし、どこまで本気なのか……。悪い奴じゃないんで、合コンのセッティングは引き受けましたけど……」

 うーん、我ながら歯切れが悪いわ。

「じゃあ、小山内くんと四人で遊びに行く件、引き受けてくれる? 二人きりだと絶対間が持てない気がするの」
「……いいですよ。あいつの都合、聞いときますね」
「ありがとう、楓ちゃん!」

 藍原先生はぱっと顔を輝かせてルンルンでナースステーションに戻っていった。……そんなに、小山内くんのこと、気に入ったんだ? でも……大丈夫かなあ?

 昼休憩のとき、大橋くんにメールしてみた。

――小山内くんが、藍原先生をデートに誘った件、知ってる?
――今日先輩から頼まれた。ダブルデートしてくれって。
――あの人、大丈夫なの? せっかくあたしたちでブロックしたのにさ、藍原先生、意外とデートに乗り気っぽい。
――噂では、結構手が早いって聞くけど。合コンでは新條が来れなくなったから急遽誘ったけど、そうじゃなければ誘わなかった。だってさ、楓さんに手出されたら困るじゃん!?
――藍原先生、二人きりだと緊張するから四人で行きたいって。
――俺は楓さんに会えるなら何でもオッケーイ♡
――じゃああとでこっちの予定送るから、セッティングして。
――了解! また楓さんに会えるの、楽しみだな~♡

 ……やっぱり、手が早いんじゃん。あたしは好きじゃないけど、まあ、藍原先生が気に入ってるんなら、あたしがとやかくいうことでもないよね……?
しおりを挟む
感想 154

あなたにおすすめの小説

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

野球部の女の子

S.H.L
青春
中学に入り野球部に入ることを決意した美咲、それと同時に坊主になった。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

処理中です...