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迷走編
29話【daily work】渡辺 弘 63歳:癒着性イレウス(藍原編)
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渡辺さんのCTが出来上がったので、チェック。……うん、改善傾向。渡辺さんは癒着性イレウスを繰り返しているおじさん。若いころに虫垂炎の手術をしていて、お腹の中がわりと癒着している。そのせいで、ときどき腸閉塞を起こして何度か入院を繰り返している。今回もいつもみたいにイレウスチューブで様子を見るだけで改善しそうだけど、あまり手こずるようなら、癒着している部分の再手術になるかもしれないって、外科の先生からの意見。
「渡辺さーん」
病室に入ると、今日は奥様がいらしてた。渡辺さんは中小企業の社長をしている、ちょっとしたお金持ちらしくて、入院のときはいつも個室。すごく品があって、ときどき面会に来る奥様も、いつもしっかり化粧してお綺麗。ぱっと見、奥様のほうがかなり若くて、たぶん40台中盤……? 美魔女、っていうやつなのかもしれない。つややかな茶色に染めた長い髪を肩下まで下ろしてるんだけど、これがまた、枝毛とかなさそうなさらさらヘア。エステにでもいってそうなお肌。
「渡辺さん、CTもよかったですよ。明日から、少しずつ食事を開始していきましょう」
そう話すと、奥様がぱっと笑顔になった。
「よかったわね、あなた」
渡辺さんはうっすら微笑んででうなずいてる。
「先生、明日食事を開始したら、また急に悪化する可能性はありますの? 私、明日は用事で参れないんですが……」
「大丈夫だと思いますよ。詰まらないように、流動食からになりますし、様子がおかしかったらすぐやめますから、大した問題にはならないと思います」
そう説明すると、奥様はほっとした顔で頭を下げた。
「ではわたくし、これで……」
奥様が去ったあと、渡辺さんがニコニコして話しかけてきた。
「ふふ、妻の美余は心配性で、困ったもんですよ」
「とんでもない。あんなお綺麗な奥様に愛されていて、いいじゃないですか」
「ふふ、そう見えますか? 美余はね、明日は用事などといっていましたが、あれね、一日がかりのエステなんですよ……。毎週行っているようでね、まったくいい年して、恥ずかしいもんですよ」
「あら、そんなことないですよ。女性らしいじゃないですか。だからいつも、あんなにお綺麗なんですね」
渡辺さん、いいながらも終始ニコニコしていて、これは愚痴なのか、ノロケなのか!?
ナースステーションに戻ると、楓ちゃんが寄ってきた。
「先生、今渡辺さんのとこ行ってました? 今日は奥様でした?」
「? ええ、奥様の美余さんが面会に来てたわよ。どうかしたの?」
楓ちゃんが意味ありげに笑う。
「ふふ、先生、明日は火曜日ですよね? 火曜日、誰が面会に来るか、見ておくといいですよ」
「どういうこと?」
楓ちゃんは目を輝かせながら小声で囁いた。
「火曜日になると、必ず、秘書の若い女の人が面会に来るんです。あれ絶対、不倫相手だと思いますよ」
ええっ、そういう話!? そ、それは気になるわね……!
「でも、秘書なら面会に来るのは普通じゃない? どうして不倫相手だと思うの?」
「だって、絶対奥さんが来ない日に来てるし、連絡先のキーパーソンの記録にも、一番目が奥様で、二番目がその人になってるし。だいたい、あの秘書、いっつもスーツでパリッと決めてデキる女風の眼鏡かけて澄ましてますけど、どことなくエロいんですよね……」
「……それは、眼鏡かけたスーツの秘書だから、自然とエロく見えるのでは……」
「でもね先生、女の勘では、あの人、絶対黒ですよ! 先生もそれとなく注意して見ていてくださいよ?」
「わかったわっ!」
来たわね、これは。美魔女妻に内緒で若い女秘書と不倫する、絶倫中年男! 何かの官能小説みたいじゃないの! あんなに品よく穏やかそうに見えて、なかなかやるわね……。って全部、あたしの勝手な妄想だけど。明日が、楽しみだわ!
「渡辺さーん」
病室に入ると、今日は奥様がいらしてた。渡辺さんは中小企業の社長をしている、ちょっとしたお金持ちらしくて、入院のときはいつも個室。すごく品があって、ときどき面会に来る奥様も、いつもしっかり化粧してお綺麗。ぱっと見、奥様のほうがかなり若くて、たぶん40台中盤……? 美魔女、っていうやつなのかもしれない。つややかな茶色に染めた長い髪を肩下まで下ろしてるんだけど、これがまた、枝毛とかなさそうなさらさらヘア。エステにでもいってそうなお肌。
「渡辺さん、CTもよかったですよ。明日から、少しずつ食事を開始していきましょう」
そう話すと、奥様がぱっと笑顔になった。
「よかったわね、あなた」
渡辺さんはうっすら微笑んででうなずいてる。
「先生、明日食事を開始したら、また急に悪化する可能性はありますの? 私、明日は用事で参れないんですが……」
「大丈夫だと思いますよ。詰まらないように、流動食からになりますし、様子がおかしかったらすぐやめますから、大した問題にはならないと思います」
そう説明すると、奥様はほっとした顔で頭を下げた。
「ではわたくし、これで……」
奥様が去ったあと、渡辺さんがニコニコして話しかけてきた。
「ふふ、妻の美余は心配性で、困ったもんですよ」
「とんでもない。あんなお綺麗な奥様に愛されていて、いいじゃないですか」
「ふふ、そう見えますか? 美余はね、明日は用事などといっていましたが、あれね、一日がかりのエステなんですよ……。毎週行っているようでね、まったくいい年して、恥ずかしいもんですよ」
「あら、そんなことないですよ。女性らしいじゃないですか。だからいつも、あんなにお綺麗なんですね」
渡辺さん、いいながらも終始ニコニコしていて、これは愚痴なのか、ノロケなのか!?
ナースステーションに戻ると、楓ちゃんが寄ってきた。
「先生、今渡辺さんのとこ行ってました? 今日は奥様でした?」
「? ええ、奥様の美余さんが面会に来てたわよ。どうかしたの?」
楓ちゃんが意味ありげに笑う。
「ふふ、先生、明日は火曜日ですよね? 火曜日、誰が面会に来るか、見ておくといいですよ」
「どういうこと?」
楓ちゃんは目を輝かせながら小声で囁いた。
「火曜日になると、必ず、秘書の若い女の人が面会に来るんです。あれ絶対、不倫相手だと思いますよ」
ええっ、そういう話!? そ、それは気になるわね……!
「でも、秘書なら面会に来るのは普通じゃない? どうして不倫相手だと思うの?」
「だって、絶対奥さんが来ない日に来てるし、連絡先のキーパーソンの記録にも、一番目が奥様で、二番目がその人になってるし。だいたい、あの秘書、いっつもスーツでパリッと決めてデキる女風の眼鏡かけて澄ましてますけど、どことなくエロいんですよね……」
「……それは、眼鏡かけたスーツの秘書だから、自然とエロく見えるのでは……」
「でもね先生、女の勘では、あの人、絶対黒ですよ! 先生もそれとなく注意して見ていてくださいよ?」
「わかったわっ!」
来たわね、これは。美魔女妻に内緒で若い女秘書と不倫する、絶倫中年男! 何かの官能小説みたいじゃないの! あんなに品よく穏やかそうに見えて、なかなかやるわね……。って全部、あたしの勝手な妄想だけど。明日が、楽しみだわ!
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