妄想女医・藍原香織の診察室

Piggy

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障害編

19話【Seminar】西園寺 すみれ:ショック療法(西園寺編)

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 受付で、このセミナーに来るにはちょっと年齢層のそぐわない優男を見つけた。何やら、藍原さんと戸叶さんと、二言三言交わしてる。……ひょっとして。
 ちらりと芳名帳をチェック。……やっぱりね。ふうん、なかなかいい男じゃないの。冗談でいただいちゃおうとかいったけど、これは、本気でほしくなっちゃうわね。で? 確か、戸叶さんの地方会で再会したっていってたけど、戸叶さんともしっかり仲良しになっている様子。……なるほどね。これは面白いわ。

 セミナーも終わり、参加者が全員掃けたところで、下っ端はお片付け開始。

「藍原さん、片付けお願いね。戸叶さんは、プロジェクター運んでくれる?」
「はーい」

 元気な返事とともに、戸叶さんがプロジェクターを抱える。彼女を連れて、医局に戻った。さあ、藍原さんには悪いけど、先にお弁当をいただくとしましょうか。
 戸叶さんも、プロジェクターをしまったあとお弁当を開け始めた。あなたの指導医の藍原さんは、お弁当も食べずにひとりで会議室の片づけ中だけど。……まあいいわ。

「参加者の中に、知り合いがいたみたいね?」

 そう振ってみると、戸叶さんは笑顔で答えた。

「はい、何でも、藍原先生の高校時代の先輩だそうで。こんな小さなセミナーで会うなんて、奇遇ですよね~」
「そうねえ」
「藍原先生とは結構仲がよかったみたいで」
「元カレでしょ?」

 戸叶さんがびっくりした顔をした。

「先生、知ってるんですか?」
「ちらっと聞いただけよ。あれはなかなか、モテそうなイケメンよね。恋人、いるのかしら」
「今はいないっていってましたよ」
「あら、詳しいのね、戸叶さん」

 戸叶さんはちらっと私を見ると、黙ってお弁当の続きを食べてる。

「そういう戸叶さんは? 彼氏、いるの?」

 戸叶さんはまた曇りのない笑顔で答える。

「いませんよ~、そんな時間もないし」
「そうね。ひとりの男に縛られると、いろいろと面倒よね。だったら手近なところで適当に楽しむほうが楽だわ」
「うわあ、西園寺先生、男っぽい発言ですねぇ。適当に遊んでるんですかぁ」
「世の中、こんなにたくさんの男がいるのよ。ひとりに絞るなんてもったいないじゃない」
「きゃはは! 名言~」
「あら、戸叶さんもそうなの? いろいろと遊んでる? ……それとも今は、ひとりに絞ってる?」

 戸叶さんは少しだけ考えるような表情をした。

「……そのときそのときで、いいなって思う人、変わるんで。今は……どうかな……」
「ふふ。藍原さんも、ひとりに絞り切れなくて、悩んでるみたいよ?」

 すると戸叶さんは目を輝かせて身を乗り出した。

「やっぱり、そうなんですか!? 彼氏がいるって聞いてましたけど、二股ですか!?」
「ふふふ。二股できない性格だから、悩んでるんでしょ。股なんて何回でも開けるんだから、気にせず何股でもかけちゃえばいいのにね、彼女も苦労性ね」
「きゃはーっ、西園寺先生、ウケる!」

 戸叶さん、とってもうれしそうに大笑いしてる。

「でも……股かけられるほうは、困っちゃうかもね? 藍原さん、器用に遊べる性格じゃないから。うっかり片足かけられた男は……そんな藍原さんに、夢中になっちゃうかもね?」
「……藍原先生、巨乳ですしね」
「別に、乳でたぶらかしてるわけじゃないと思うけど。……男を暴走させる何かが、彼女には、あるのよね……」

 本当に、彼女のフェロモンは、独特で。触らなくてもわかる柔らかなあの女体から漂う、甘ったるくて淫靡な香り。あんなにあからさまなのに、それでいて奥ゆかしい匂い。私だって、早く味わいたくて仕方がない。ついうっかり指導医セミナーで手を出しちゃったから、もう警戒されちゃって、さすがの鈍感さんでも、なかなか私とふたりっきりにはなってくれない。でも、それがまた、攻め甲斐があっていいのよね……。藍原さんは可愛いから、そんな彼女の本気の恋愛は応援してあげたい。真面目な彼女が嫌がらないように、いかに誘導して落とすか……。ふふ、久々に腕が鳴るわ。

「ごちそうさまでした! あたし、会議室の片づけ手伝ってきますね! 先生はもう上がりですよね?」
「ええ、お先に失礼するわ」
「お疲れ様でした!」

 戸叶さんは元気に医局を出ていった。時計を見る。あれから20分経っている。……もうそろそろかしら。
 携帯電話を取り出す。3コールで出た。

『もっ、もしもし!』

 あらあら、上ずった声で、何てわかりやすいのかしら。やっぱりこっそり見に行くのが正解だったかしらね……。

「藍原さん? 早く来なさいよ、あなたの分のお弁当、とっといてあるわよ~」

 いいところで邪魔しないでください、って怒られちゃうかしら。でも、タイミングとしては、ばっちりよね。いろいろと……。

 しばらくして戻ってきた藍原さんは、頑張って隠そうとしてるけど、やっぱり甘い香りが残り香のように漂ってる。……いいわねえ。藍原さんをこんなにしちゃう元カレくん。やっぱり、決着がついたらいただいちゃおうかしら。

「お疲れさま、発情中の藍原さん。お邪魔しちゃったかしら?」
「……邪魔じゃないです、助かりました」

 ふふ、藍原さん、正直ね。いい傾向だわ、なんだかんだいっても私を信用して、体の悩みや彼氏のこと、話してくれるんだものね。可愛い甘ちゃんね。でも、本番はこれから……。

「助かったかどうかは、まだわからなくてよ?」

 藍原さん、意味もわからずきょとんとしてる。ふふ、これが戸叶さんだったら、ちゃんと察するんでしょうけど。

「……あの、梨沙ちゃんは?」
「……先に帰ったわよ」
「あ、そうですか……」
「何か用事?」
「あ、いえ……」
「片づけは終わったの?」
「まだです」
「あ、そう。まあ、先にお弁当食べてからゆっくりやればいいわよ」

 藍原さん、そわそわしてる。

「……そんなにウズウズするんだったら、ヤッてくればよかったのに」
「ひえ!? そ、そういう問題じゃないです、あたしは西園寺先生とは違うんで!」
「彼も今ごろは、ウズウズしてるんじゃない? うふふ、私が代わりに慰めてあげちゃおうかしら」
「や、やめてくださいよっ」
「ああ、そうだった。あなた、自分は煮え切らないくせに、ほかの女にも渡したくないんだったわね」
「そ、そういうことじゃないですけど! その、なんていうか、先輩の意思を無視してそういうことするのは、ふ、不健全だって、思うだけです」
「あらあら、絵に描いたような真面目ちゃんねぇ。……じゃあ、先輩の同意があれば、いいわけね?」
「……それはもちろん、そうですよ……」

 あらあら、トーンダウンしちゃって。自分でも、自信が持てないのね。いくら考えても答えが出ないなら……やっぱりショック療法が、必要かしら。

 時計を見る。戸叶さんが出ていってから、15分。……もういいかしら。

「……藍原さん。会議室のゴミ、ちゃんと処理を頼むわね? もうすぐ警備の見回りの時間だから、それまでに退室しないとめんどくさいわ」
「わかりましたっ! 先生、今日はお疲れ様でした」

 藍原さんは手早くお弁当を平らげて、すぐに医局を出ていった。さて、と。明日が楽しみだわ……。
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