妄想女医・藍原香織の診察室

Piggy

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障害編

18話【Seminar】神沢 隼人:「君は僕としか、セックスできない体なんだ」(藍原編)②

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 心臓がドクンと大きく打った。
 あたしは、先輩としか、セックスできない体なんだろうか? だから新條くんと、うまく行かないの? 違う、そうじゃないはずだ、あたしが新條くんとできないのは、そんな理由じゃなくて……ああダメだ、頭がうまく働かない。

「香織ちゃん。僕にもう一度、チャンスをくれ……」

 そういって先輩は、あたしの首筋に口づけた。しっとりと濡れた柔らかい唇が押し付けられて、思わず体がこわばる。それから先輩の温かい舌がぬるりと皮膚を這うと、一瞬にしてそこから全身に震えが走った。

「ああ……ッ!」

 図らずも漏れた声を聞いて、先輩が嬉しそうに微笑んだ。

「ほら、やっぱり感じてる……」

 ぴちゃぴちゃと音を立てながらうなじを吸われ、抵抗もできずに固まるあたしの背中に、先輩の手が回される。するりとブラウスの下から直接皮膚を這って、さわさわと撫でながら上ってくる。

「あああ……っ」

 それだけであたしは、背中をのけ反って身悶えてしまう。反ったあたしの喉元に唇を這わしながら、先輩の手は背中のブラのホックを外した。

「あっ、ダメ……っ」

 止める間もなく、先輩の手が前に回ってあたしの胸に触れた。

「んん、ふ……ッ」

 じっくりと大事に揉み込むようなその手つきに、思わず吐息が漏れる。内股の奥のほうがジンジンと疼いてきて、先輩の指先があたしの乳首を摘まんだ瞬間、あたしは跳ね上がった。

「ひあっ!」

 バランスを崩して倒れそうになるあたしを、先輩がそのまま会議室のデスクの上に押し倒した。ゆっくりと覆いかぶさってきて、上半身だけのけ反るようになったあたしは、身動きが取れない。

「香織ちゃん……好きだ」

 先輩の手があたしのブラウスをたくし上げる。

「あっ、ダメ、先輩っ、ダメ――ああっ」
 
 無防備なふたつの乳房が先輩の目の前に曝されて、あまりの恥ずかしさに一気に全身が火照る。先輩が熱い吐息を漏らした。

「ああ、香織ちゃん……なんて綺麗なんだ」
「や、ダメ、見ないで……っ」
「どうしてダメなの。僕に見られてるだけで、こんなに体を熱くして。香織ちゃん……言葉でごまかしても、君の体は、正直だよ?」

 いうなり、先輩があたしの乳首をぺろりと舐めた。

「ああああっ」

 おかしいくらいに体がビクビクと震える。

「ああ、香織ちゃん……ずっと、こうしたかったんだ。あの日、遊園地で別れたときからずっと、僕は君に触れたくれて触れたくて……香織ちゃんの体、すごく甘くて止まらないよ……」

 先輩の口が大きく開いてあたしの乳房を覆い、温かく湿った口内で、感じて尖ったあたしの先端が転がされる。反対の乳首も優しくくりくりと舐られ、あたしはもう何も考えられなくなる。
 夢にまで見た、先輩の愛撫。あのときは一方的にあたしが襲ってしまって、何が何だかわからないうちに終わってしまった。でも、本当に望んでいたのは、あんな初体験ではなくて、普段は穏やかな先輩の、情熱的な愛撫――

「んんっ、先輩っ、あっ、やっ、ああ……っ」

 体が、キモチいいといってる。中のほうが熱くなってきて、先輩の体が、あたしに、先輩を好きだと認めさせようとしている。このまま流されたらどんなにかキモチいいだろう。あのときみたいに、本能のままに感じて、先輩とイケたら……。でも、それじゃダメだ。先輩を好きかどうかは、体が決めることじゃない。そうじゃないんだけど、じゃあどうやったらいいのか――どうしたら、自分の本心が見えるのか、わからない。快感に邪魔されて、先輩への気持ちが、見えない。

 先輩のもう一方の手が下半身に伸びて、下着の中に差し込まれた。
 
「香織ちゃん。あの時みたいに、僕を求めて? 僕でキモチよくなって、僕で、イッてよ……」

 あたしは奥へもぐりこもうとする先輩の手首を必死で掴んだ。

「だっ、ダメです! か、体じゃないんです! 先輩を好きかどうかは、そういうことじゃなくて……!」

 そのとき。

 ピロリロリ。ピロリロリ。

 ジャケットのポケットの中で、電話が鳴った。救いの神だ。

「もっ、もしもし!」
『藍原さん? 早く来なさいよ、あなたの分のお弁当、とっといてあるわよ~』
「あっ、はいっ、すぐ行きます!」

 西園寺先生だった。

「あっ、あたし、上司を待たせてるんで! もう行きますっ! ご、ゴミはあとでやるので、ほっといてください!」

 早口にまくしたてて胸元を掻き下ろすと、会議室を飛び出した。廊下をしばらく走ってから、振り返る。先輩は、追いかけてはこなかった。よかった……。

 バクバクに早鐘を打つ心臓を落ち着かせながら、医局を目指す。
 何とか、逃げてきた。でも、これじゃあ解決にならない。次また先輩が現れたら? こんなことを繰り返していたらダメだ。新條くんにも申し訳ないし、先輩にだって悪い。こんなの、二股と大して変わらない……。

 医局に戻ると、西園寺先生がお弁当を食べながらにこやかに手を振っていた。

「お疲れさま、発情中の藍原さん。お邪魔しちゃったかしら?」

 ひええっ!? 心臓はちゃんと落ち着けてから戻ってきたのに、何で!?

「ふふ。見に行こうかどうかすごく迷ったんだけどね~」
「いったい何の話ですかッ! ていうか、先生何者ですか!?」
「何者も何も。電話越しにあんな興奮した声で『もしもしッ!?』なんていわれたら、そりゃあわかるわよ。参加者名簿にあったしね……名前」

 そうか。先生、名簿を見て先輩が来てることを知ってたわけね……。

「……邪魔じゃないです、助かりました」

 観念して、正直にそういう。すると西園寺先生は、意味ありげに笑った。

「助かったかどうかは、まだわからなくてよ?」
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