103 / 309
恋愛編
38-2話【off duty】新條 浩平:遊園地(新條編)②
しおりを挟む
身をかがめて、藍原先生の顔の横から、外を眺める。今だけ、本当の恋人同士みたいな気分を味わっても、いいよね。静かな観覧車の中。夜景を見ながら、ふたりで寄り添って。
隣を見ると、すぐ近くに、藍原先生の横顔。……本当に、思いつきで、デートに誘ったんだ。好きとはいったけど、自分なんかが藍原先生と付き合えるわけはないって頭ではわかってた。だから、思い出に好きな人と一回でもデートできればと思って、誘ったんだ。なのに。……ダメだ、俺、ますます藍原先生のこと好きになってる。どうせ諦めなきゃいけないんなら、もっと傷が浅いうちに、やめときゃよかったんだ。なのに遊園地なんかに誘って、こんなに楽しくて……。
冷えた座席に突いた手が、藍原先生の手に触れた。そっと握りしめたら、先生が振り向いた。ほんのり赤い頬。少しだけ潤んだ目が、大きく開いて俺を見てる。唇はピンクで、ぷっくりと艶めいて……俺は吸い寄せられるように、先生の唇に顔を近づけた。もう少しで触れるというところで、藍原先生がぱっと自分の手のひらで唇を隠した。
「っ……だ、ダメよ新條くん、それは……っ」
「ご、ごめん……つい」
何やってんだ、俺。付き合ってもいない相手にいきなりキスなんか迫って、完全にセクハラじゃん。はあ、またもや自己嫌悪。藍原先生といると簡単に勃起しちゃうし、すぐ触りたくなるし、挙句に……こんなに自制が効かないなんて、俺もう、ただの発情期の猿だ。
それでも、藍原先生は困ったように笑うだけで、怒りも怖がりもしない。ずっとニコニコ優しくて、久しぶりの遊園地は楽しかったっていってくれた。帰りの電車では、うとうと居眠りして俺にもたれてきたりして。そういう無防備なところに、もう俺の心臓はずっとドキドキ、チンコはずっとズキズキしっぱなしだった。
家に着いたのは、すっかり遅くなってからだった。隣同士に並ぶ2枚の扉を見ると、一気に現実に引き戻される。
「えっと、あの、今日は楽しかったわ、新條くん」
「俺こそ、一日中付き合ってくれてありがとうございました。すごく楽しかったです。最高でした」
デートは1回きりの約束だ。ここでお別れしたら、またもとのお隣さんに戻るんだな……。先生は付き合う気はないっていってたし、もうこれからは、さりげなく避けられたりとかするのかな……。そう思うと、切なくなってくる。
「じゃあ、またね。大学、がんばってね」
先生が扉を開ける。もう、行っちゃう。
俺の暴走しっぱなしの本能が、突然先生の腕を引き寄せてその小さくて柔らかい体を抱きしめた。ふわっと、甘い匂いが漂う。
「ちょっ、し、新條くん!?」
先生はすっぽり俺の腕の中に入って、暴れるけど俺は逃がさない。大事に大事に抱きしめて。
「藍原先生。俺、やっぱり先生のこと好きだ。応えてくれなくてもいいから、せめて、これからもお隣さんでいて」
なんだ、この告白。やっぱり俺、カッコ悪い。でも、今の俺の気持ちを伝えなきゃって思ったら、こんなふうになった。藍原先生、伝わったかな?
このまま自分の部屋に連れ込みたい衝動を抑えて、先生の体を離すと、先生は真っ赤になってゆっくり俺から離れた。
「えっと、ありがとう。新條くんのことは、大好きよ。これからも、いいお隣さんとして、よろしくね」
先生はそのままあとずさりするようにして、自分の部屋に帰っていった。
いいお隣さんとして、か。完全に、お断り、されてるよな? でも、今日だって今までだって散々セクハラまがいのことをしてきた俺のこと、好きっていってくれて……拒絶は、しないんだな。それだけでも、ありがたいって思わないと。
全身に藍原先生のぬくもりと匂いを噛みしめながら、俺は、現実の待つ自分の部屋へと戻った。
隣を見ると、すぐ近くに、藍原先生の横顔。……本当に、思いつきで、デートに誘ったんだ。好きとはいったけど、自分なんかが藍原先生と付き合えるわけはないって頭ではわかってた。だから、思い出に好きな人と一回でもデートできればと思って、誘ったんだ。なのに。……ダメだ、俺、ますます藍原先生のこと好きになってる。どうせ諦めなきゃいけないんなら、もっと傷が浅いうちに、やめときゃよかったんだ。なのに遊園地なんかに誘って、こんなに楽しくて……。
冷えた座席に突いた手が、藍原先生の手に触れた。そっと握りしめたら、先生が振り向いた。ほんのり赤い頬。少しだけ潤んだ目が、大きく開いて俺を見てる。唇はピンクで、ぷっくりと艶めいて……俺は吸い寄せられるように、先生の唇に顔を近づけた。もう少しで触れるというところで、藍原先生がぱっと自分の手のひらで唇を隠した。
「っ……だ、ダメよ新條くん、それは……っ」
「ご、ごめん……つい」
何やってんだ、俺。付き合ってもいない相手にいきなりキスなんか迫って、完全にセクハラじゃん。はあ、またもや自己嫌悪。藍原先生といると簡単に勃起しちゃうし、すぐ触りたくなるし、挙句に……こんなに自制が効かないなんて、俺もう、ただの発情期の猿だ。
それでも、藍原先生は困ったように笑うだけで、怒りも怖がりもしない。ずっとニコニコ優しくて、久しぶりの遊園地は楽しかったっていってくれた。帰りの電車では、うとうと居眠りして俺にもたれてきたりして。そういう無防備なところに、もう俺の心臓はずっとドキドキ、チンコはずっとズキズキしっぱなしだった。
家に着いたのは、すっかり遅くなってからだった。隣同士に並ぶ2枚の扉を見ると、一気に現実に引き戻される。
「えっと、あの、今日は楽しかったわ、新條くん」
「俺こそ、一日中付き合ってくれてありがとうございました。すごく楽しかったです。最高でした」
デートは1回きりの約束だ。ここでお別れしたら、またもとのお隣さんに戻るんだな……。先生は付き合う気はないっていってたし、もうこれからは、さりげなく避けられたりとかするのかな……。そう思うと、切なくなってくる。
「じゃあ、またね。大学、がんばってね」
先生が扉を開ける。もう、行っちゃう。
俺の暴走しっぱなしの本能が、突然先生の腕を引き寄せてその小さくて柔らかい体を抱きしめた。ふわっと、甘い匂いが漂う。
「ちょっ、し、新條くん!?」
先生はすっぽり俺の腕の中に入って、暴れるけど俺は逃がさない。大事に大事に抱きしめて。
「藍原先生。俺、やっぱり先生のこと好きだ。応えてくれなくてもいいから、せめて、これからもお隣さんでいて」
なんだ、この告白。やっぱり俺、カッコ悪い。でも、今の俺の気持ちを伝えなきゃって思ったら、こんなふうになった。藍原先生、伝わったかな?
このまま自分の部屋に連れ込みたい衝動を抑えて、先生の体を離すと、先生は真っ赤になってゆっくり俺から離れた。
「えっと、ありがとう。新條くんのことは、大好きよ。これからも、いいお隣さんとして、よろしくね」
先生はそのままあとずさりするようにして、自分の部屋に帰っていった。
いいお隣さんとして、か。完全に、お断り、されてるよな? でも、今日だって今までだって散々セクハラまがいのことをしてきた俺のこと、好きっていってくれて……拒絶は、しないんだな。それだけでも、ありがたいって思わないと。
全身に藍原先生のぬくもりと匂いを噛みしめながら、俺は、現実の待つ自分の部屋へと戻った。
0
あなたにおすすめの小説
月弥総合病院
御月様(旧名 僕君☽☽︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる