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妄想編
32話【daily work】西園寺 すみれ:医局(藍原編)
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「さ、西園寺先生は、今から上がりですか?」
なるべく自然に、話しかける。でも……西園寺先生の切れ長の目が、ますます細くなって、あたしをじっと見つめる。……獲物を狙ってる、蛇の目だわ、これは……。
「……ね、いったでしょ」
「え、何がですか?」
西園寺先生がにやりと笑った。
「あの研修医、なかなかのもんだって、いったでしょ」
う……うひゃああああ、やっぱりバレてた!? は、恥ずかしすぎるっ!! やばすぎる、夜の医局で研修医と……あ、あんな、破廉恥な……っ!
「い、いや、あの、あれはですね、先生、その、なんていうか、事故といいますか、意図的ではないといいますか、その~……」
ダメだ、まったくいい訳が思いつかない。もうだめだ、あたし、クビになるかも……。
「あら、気にしなくていいのよ。あたしだって医局やシャワー室で、1回や2回」
「えええっ、しゃ、シャワー室ですか!?」
う、うらやましい……っ! あたしはまだ妄想でしか経験ないわ……。じゃ、なくて! これはさすがに、誤解されすぎてる気がするわ!
「いや、あの、そういうのじゃなくて、本当に……」
すると西園寺先生が笑っていった。
「冗談よ。ああ、1回や2回は本当だけど。あなたが医局で合意の上でそんな破廉恥な行為に及んでいたなんて、思っていないわ」
「あ、そ、そうですか……」
いや、あの、今の一言の中に、ツッコミたいことがいろいろありましたけど……とりあえず、あたしがノリノリで研修医とイチャイチャしてたわけじゃないことはわかってくれてるようで、ほっとする。
そんなあたしの様子を見て、西園寺先生がおもむろにいった。
「……2東、3東、3中央、4東、4西、ICU」
「……は?」
なんですか、それ。
「あの研修医よ。ほぼ各病棟のナースに、手をつけてるわ」
え。岡林くんが? ていうか、どうして西園寺先生がそんな情報を……。
呆気にとられるあたしを横目に、西園寺先生がため息をつく。
「ふう……私もちょっと、見くびっていたわ。まさか、あのICUにまで手を出すとはね。あっぱれよ」
あの、ちょっと、意味がわからないんですけど。
「あら藍原さん、わからない? ICUといえば、オペ看と一二を争う恐ろしさよ。オペ看に比べると、入院患者の件で絡まざるを得ない分、ICUナースのほうが実際は恐ろしいというのは周知の事実。あそこは師長も厳しいからね、研修医がICUナースに手を出したと師長に知れたら、確実にヤられるわ」
え、ヤられるって、ちょっと意味が分かりません……。
「そもそもプライドの高いICUナースは、研修医ごときには絶対なびかないはずなの。それを、あの研修医は、1年目にして! ……やってのけたわけよ。……ふっ、末恐ろしい子ね。ぜひ、お手合わせを願いたいわ……」
いやいや、話がずれてますけど。と思っていたら、西園寺先生が振り向いてビシッとあたしに人差し指を突き付けた。
「というわけで、彼が本気を出したら、あなたなんてイチコロ。実際、あやうくイチコロ状態になるところだったでしょ」
「そ、そんなことありません! ちゃんと抵抗しました、あたしは別に岡林くんを好きとかそういうのではありませんから! ただちょっと、力の差で、危うかったといいますか……あ、そういう意味では、西園寺先生がいらしてくれて助かったといいますか」
西園寺先生は、信じてくれたのかどうかもわからないような笑みをうっすらと浮かべている。
「私の目はごまかせないわよ。……あなた、感じてたでしょ」
「ええええ!?」
急に直球で来られて、言葉に詰まる。な、なんなの、この先生はっ!
「ああ、別にいいのよ、感じてたって。心と体は別物。それはよーく知ってるから。ただ、私がいいたいのはね」
そういうと、西園寺先生が近づいてきて、あたしに囁いた。
「あなた、感じるとね、すごくエロくなるわ。それがね、無意識に男を誘ってるのよ。……あの研修医、まだあきらめないと思うわよ。ま、どっちの方向で収めるにしろ……せいぜい、頑張りなさいね」
そして医局を出ていった。
……なんですか、今のは。またもやツッコミどころが、いろいろありましたけど……。ていうか、岡林くんとあんなことになっちゃったのも、よりによってドエロ肉食女子の西園寺先生に見られたのも、何だか、いろいろとまずいような……。ううう、明日、どんな顔して岡林くんに会えばいいんだろう……。はあ、今から気が重いわ……。
なるべく自然に、話しかける。でも……西園寺先生の切れ長の目が、ますます細くなって、あたしをじっと見つめる。……獲物を狙ってる、蛇の目だわ、これは……。
「……ね、いったでしょ」
「え、何がですか?」
西園寺先生がにやりと笑った。
「あの研修医、なかなかのもんだって、いったでしょ」
う……うひゃああああ、やっぱりバレてた!? は、恥ずかしすぎるっ!! やばすぎる、夜の医局で研修医と……あ、あんな、破廉恥な……っ!
「い、いや、あの、あれはですね、先生、その、なんていうか、事故といいますか、意図的ではないといいますか、その~……」
ダメだ、まったくいい訳が思いつかない。もうだめだ、あたし、クビになるかも……。
「あら、気にしなくていいのよ。あたしだって医局やシャワー室で、1回や2回」
「えええっ、しゃ、シャワー室ですか!?」
う、うらやましい……っ! あたしはまだ妄想でしか経験ないわ……。じゃ、なくて! これはさすがに、誤解されすぎてる気がするわ!
「いや、あの、そういうのじゃなくて、本当に……」
すると西園寺先生が笑っていった。
「冗談よ。ああ、1回や2回は本当だけど。あなたが医局で合意の上でそんな破廉恥な行為に及んでいたなんて、思っていないわ」
「あ、そ、そうですか……」
いや、あの、今の一言の中に、ツッコミたいことがいろいろありましたけど……とりあえず、あたしがノリノリで研修医とイチャイチャしてたわけじゃないことはわかってくれてるようで、ほっとする。
そんなあたしの様子を見て、西園寺先生がおもむろにいった。
「……2東、3東、3中央、4東、4西、ICU」
「……は?」
なんですか、それ。
「あの研修医よ。ほぼ各病棟のナースに、手をつけてるわ」
え。岡林くんが? ていうか、どうして西園寺先生がそんな情報を……。
呆気にとられるあたしを横目に、西園寺先生がため息をつく。
「ふう……私もちょっと、見くびっていたわ。まさか、あのICUにまで手を出すとはね。あっぱれよ」
あの、ちょっと、意味がわからないんですけど。
「あら藍原さん、わからない? ICUといえば、オペ看と一二を争う恐ろしさよ。オペ看に比べると、入院患者の件で絡まざるを得ない分、ICUナースのほうが実際は恐ろしいというのは周知の事実。あそこは師長も厳しいからね、研修医がICUナースに手を出したと師長に知れたら、確実にヤられるわ」
え、ヤられるって、ちょっと意味が分かりません……。
「そもそもプライドの高いICUナースは、研修医ごときには絶対なびかないはずなの。それを、あの研修医は、1年目にして! ……やってのけたわけよ。……ふっ、末恐ろしい子ね。ぜひ、お手合わせを願いたいわ……」
いやいや、話がずれてますけど。と思っていたら、西園寺先生が振り向いてビシッとあたしに人差し指を突き付けた。
「というわけで、彼が本気を出したら、あなたなんてイチコロ。実際、あやうくイチコロ状態になるところだったでしょ」
「そ、そんなことありません! ちゃんと抵抗しました、あたしは別に岡林くんを好きとかそういうのではありませんから! ただちょっと、力の差で、危うかったといいますか……あ、そういう意味では、西園寺先生がいらしてくれて助かったといいますか」
西園寺先生は、信じてくれたのかどうかもわからないような笑みをうっすらと浮かべている。
「私の目はごまかせないわよ。……あなた、感じてたでしょ」
「ええええ!?」
急に直球で来られて、言葉に詰まる。な、なんなの、この先生はっ!
「ああ、別にいいのよ、感じてたって。心と体は別物。それはよーく知ってるから。ただ、私がいいたいのはね」
そういうと、西園寺先生が近づいてきて、あたしに囁いた。
「あなた、感じるとね、すごくエロくなるわ。それがね、無意識に男を誘ってるのよ。……あの研修医、まだあきらめないと思うわよ。ま、どっちの方向で収めるにしろ……せいぜい、頑張りなさいね」
そして医局を出ていった。
……なんですか、今のは。またもやツッコミどころが、いろいろありましたけど……。ていうか、岡林くんとあんなことになっちゃったのも、よりによってドエロ肉食女子の西園寺先生に見られたのも、何だか、いろいろとまずいような……。ううう、明日、どんな顔して岡林くんに会えばいいんだろう……。はあ、今から気が重いわ……。
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