虹の月 貝殻の雲

たいよう一花

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Ⅲ 誓約

25. 愛を確かめ合う(1)

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そして二人は目を閉じ――再び目を開けたとき、そこはもう、見慣れた浴室内だった。
 
二人とも夢心地で、しばらく呆然と抱き合っていた。
魂が肉体に戻り、触れ合った肌が確かな弾力を伴って、お互いの熱を交換しあう。

魔王の腕の中に、全てがあった。
あれほど激しく欲した、たった一人の存在の、全てが。

(ああ……レイ……)

魔王の口から、長く深い吐息が、震えながら吐き出される。
遂に願いが叶えられ、心身ともに完璧にレイと結ばれた喜びが、魔王の胸中に、じわじわと広がってゆく。
魔王は目も眩むような幸福感に包まれながら、レイの頬を大きな手で包みこみ、再び額を重ね合わせて囁いた。

「レイ……私たちは<神聖な誓い>の真の成就を得て、永遠の絆で結ばれた。このさき肉体が滅んでも、私たちはあの『約束の地』で、再び巡りあうだろう。……レイ、何度も非道な振る舞いに出た私を、よく許してくれた。私はおまえに、心からの感謝と、永遠の愛を捧げる」

「ああ……」

レイはどう答えれば良いのか分からず、気恥ずかしさに頬を染め、目を伏せた。
魔王から発せられる感情の波動が、はちきれんばかりの喜びを湛えてレイに届く。<神聖な誓い>については何のことだかさっぱりだったが、魔王がこれほど喜んでいるなら、とてつもなくめでたいことなのだろう。

「良かったな、魔王……嬉しいか?」

「ああ、嬉しいとも。私はこの世一、幸せな男だ……今度こそ、間違いなく。……どうした、レイ? 何か気になることでもあるのか?」

「……ああ……いや……『約束の地』で巡りあうのはいいが……俺はまだ、滅ぶ日のことなんて考えたくない。……ずっとこうして、あんたの体温を感じていたいんだ」

「レイ……!」

魔王はいっそう力を込めて、レイを抱き締めた。骨が砕けるかと思うほどの強い抱擁に、レイが痛みを訴え、魔王は慌てて力を抜いた。

レイは足元に転がっていた石鹸を拾い上げると、濡れた床に直接座りこみ、爪の中にこびりついた汚れを落とし始めた。
それを見て魔王も手に石鹸を持ち、レイの傍に座った。
そして自分の体ではなく、レイの体にその石鹸をゆっくり滑らせる。

「ん……」

レイがピクンと反応する。
首から胸へ、胸から腹へと、魔王の手の中の石鹸が、ぬるりと肌をねぶりながら往復する。
やがて魔王はレイの胸の突起を片手でつまみ、桃色に色づいているもう片方の突起には石鹸を当て、ぬるぬると執拗にこね回した。

「はっ……あぁ……。んん……」

レイは手に持っていた石鹸を取り落とし、魔王の愛撫に身を委ねた。
レイの背後に回りこんだ魔王は、今度はうなじから肩、肩甲骨の周辺、背のくぼみへと石鹸を這わせた。後ろからレイを抱き込むと、魔王は石鹸を両手でこすり合わせ、泡立った掌でレイの胸部をもう一度刺激し始めた。敏感な胸の尖りをまたもや執拗に弄られ、レイが嬌声を上げる。

「んんっ! あっ……はぁっ……! やっ……も……いい、そこは触るな、魔王……!」

はあはあと息を荒げながら、レイは背後からのびた魔王の手を掴み、制止させようとした。

「抵抗するな……レイ。おまえの洗い方はぞんざいだからな……。私が隅々まで完璧に、征服……いや、洗浄してやる」

淫靡な囁きと共に耳たぶを甘噛みされ、レイはビクビクと小刻みに体を震わせた。魔王の熱い息が耳元にかかり、くすぐったい。

「んぁっ……! な、何が……征服……だっ! あっ、ぅああっ!」

絶えまなく続く刺激に、声が上擦り、力が抜けてゆく。
魔王は石鹸のぬめりを帯びた指先で、なおもしつこくレイの乳首をいじり続けた。
やがて魔王は、左手はそのまま胸に置き、右手で再び石鹸を持ち、レイの腰から下へと滑らせた。
股の間で頭をもたげているものには一切触れずに、太腿に石鹸を滑らせ、血の跡の残る肌を、優しくさする。その手を臀部に移動させ、双丘の合間に這わせると、レイがビクリと跳ねた。

「いやだ、魔王! 触るな! ……そこは……自分でする」

魔王はハッとして、手を引いた。

「まだ……痛むのか? ……すまない……レイ」

レイは首を振った。

「違う。痛くはない。あんたの血を飲んだあと、傷は全部、あっというまに塞がった。……痛くない……けど……まだ、怖い」

「……レイ……すまない……本当に……悪かった……」

魔王は繰り返し謝罪の言葉を口にしながら、背中側からレイを抱擁し、なだめるように体中をさすった。
そしてレイの股間で元気に勃たち上がっている部分に、左手でそっと触れた。

「んっ! ……あぁ……!」

ビクッとレイが反応し、湿った吐息をもらす。
今度はレイが拒絶しないのに安堵して、魔王はぬめった指先で竿の裏側をなぞった。

「はぁっ……! あっ! くぅっ……!」

仰け反ったレイの後頭部が、魔王の肩に当たる。
黒い髪が濡れて肌にはりつき、なまめかしく光っている。欲情をそそるそのさまに興奮しながら、魔王は張りつめたレイの肉茎をやんわりと掴んだ。

「はっ……んんっ……ふ……はぁっ、はっ……」

レイが切なげに喉を震わせる。
魔王は右手に持った石鹸の、丸く角の取れた部分を優しくあてがい、睾丸から竿の根元、中程、先端へと、ゆっくりと滑らせた。先端の張り出た部分と、竿の合間をぐるりとなぞりながら刺激すると、レイがすすり泣くような声を上げた。

「あぁっ……はっ……ん、んぅっ……!」

愛撫に応えて鳴くその声を聞いているだけで、魔王の欲望は怒張し、今にも達してしまいそうだった。

「いい声だ……レイ……もっと聞かせてくれ……」

魔王の重低音の囁きが、レイの耳元を弄る。
レイは羞恥に頬を染め、魔王に軽く肘鉄を食らわせた。

「聞くなっ……! 耳をふさげ!」

予想通りの反応に、魔王の口から忍び笑いがもれる。

「あいにく、両手とも忙しい……」

「なら、俺がふさいでやる!」

レイが腕を上げたとき、魔王が口の中ですばやく呪文を唱えた。

「くっ……!」

レイの両手首が一つにまとめられ、見えない力で拘束される。

「レイ、おとなしくしていろ……。羞恥心など吹き飛ぶくらい、良くしてやる……」

魔王は熱い息を吹きかけながら、ねっとりと絡みつくように、唇と舌を使ってレイの首筋をねぶった。途端にレイが、ガクガクと身悶える。

「ぅああっ……! あっ、んくっ、あ……!」

魔王は左手でレイの竿部分をぬちゃぬちゃとこすりあげながら、右手に持った石鹸で敏感な先端部分を円を描くようにこね回した。

「ひっ……ぅく、あっあっあっ!……やっ、んあああっ!」

くちゅくちゅ、ぬちゅぬちゅと、卑猥な音をたてながら、魔王の手でこすられる肉竿が、泡を立ててゆく。
魔王は石鹸を床に落とすと、両手の指を巧みに使い、レイを絶頂へと導いていった。

「んくっ、うっ、はあっ、あっ! ひっ……!」

魔王の言葉どおり、レイは羞恥をかなぐり捨て、淫らに悶えながらよがり始めた。誘うように両脚を大きく開き、喉を反らして快楽に身を委ねている。
股間の欲望からだらだらと先走りの蜜が溢れ出し、石鹸と混じり合う。白い泡に包まれ、滑りがいっそう良くなると、魔王は人差し指と中指に若干強めに力を込め、竿をこすり上げる速度を速めた。

「ひっ……! うくっ!……ぅあっ! はあっ、はあっ、あっ……魔王! あっ……あっ、あぐっ! んあああああっ!」

間断なく与えられる快感に酔いしれ、レイはぎゅっと目を閉じた。
魔王は左手で竿をしごきながら、右手の掌で亀頭部分をすっぽりと包みこみ、回転させながらぬるぬると摩擦した。
レイの声が一際高くなる。逼迫ひっぱくしたその息遣いに、魔王は絶頂が近いことを感じ取り、突然愛撫の手を止めた。
絶頂間際で刺激を絶たれ、レイが不満の声を上げる。

「はあっ、はあっ、……んっ……まっ、魔王……!」

焦れたレイが首を巡らせ、魔王を見上げる。快楽に涙を滲ませた目で、続きをねだる。
それには応えず、魔王は泡にまみれた手をレイの腹へと滑らせた。
限界まで張りつめたレイの欲望は、置き去りにされてビクビク震えている。それを無視し、魔王はレイの下腹部をゆるく圧迫しながら撫でさすった。

「んっ……んんっ……。くっ……うう……、ま……魔王っ!」

求めるものを得られない苦しさに、レイが縋るような目を魔王に向けた。
赤く腫れ上がった半開きの唇から、切なげな声がもれ出る。上気した肌は誘うように欲情の色に染まり、ぷっくりと立ち上がった桃色の乳首が、触れられるのを待っているかのようだ。扇情的に反らされた喉を、汗と唾液が糸を引いてつたい下りてゆく。――それらを舐るように視姦し、魔王はごくりと唾を飲み込んだ。

(たまらぬな……)
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