道楽草

十三岡繁

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自分とそれ以外

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 最近考えるのは、自分自身とそれ以外との境界である。そんなもの考えるまでもなくわかるだろうと言われるかもしれないが、本当にそうだろうか? AさんとBさんがいて、Aさんが自分自身だとすればBさんはそれ以外である。これは分かり易い。しかし例えばAさんが爪が伸びて来たから切ったとする。切る前の爪はAさんの一部でありAさん自身であったわけだが、切った途端に爪はAさん以外の存在になる。髪の毛でも話は同じだ。

 自分自身と世界の境界線があって、その境界線から外の存在が自分以外の存在だとする。その境界線は皮膚かも知れない。しかし垢すりに行ったらどうだろう? さきほどまで自分自身であり、世界との境界でもあった皮膚の古い部分は自分以外になってしまう。自分の肉体と繋がっているものは自分自身で、離れてしまったものがそれ以外といえるのだろうか? しかし例えば爪なんかは、根元から生えてしばらくは皮膚とくっついているが、もっと伸びれば皮膚とも離れて、本体の影響を受けない状態になる。そうなるともう、くっついているだけで自分では無いような気もする。

 がん細胞はどうだろう? それは好ましい存在ではないが、確かに自分自身の一部に他ならない。しかしそれを手術で切り取ってしまった場合、切除されたがん細胞は自分自身ではなくなる。癌細胞は特別な存在なんだろうか? であれば現在の科学技術では不可能だが、自身の体を左右真っ二つに切って、それでも生存できるようになったとしよう。右と左のどちらが自分自身という事になるのだろうか?

 現在実験に使われているがん細胞の殆どは、HeLa細胞というとある女性のがん細胞を増殖させたものだ。もちろん本人は既に亡くなっている。組織を採取するときに本人の承諾は得ていなかったそうだ。DNAの異常を修復する技術が確立すればクローンも作れるのだろうか? そのがん細胞は彼女自身では無いという事で本当にいいのだろうか?

 一方体の中には自分以外の生物が、細胞の数以上に生息している。ウィルスを生物としてカウントしなくても、細菌類だけで物凄い数だ。これはやはり自分自身では無いような気がする。しかし自身の細胞の中には、そのDNAを独自に持つ、ミトコンドリアという存在がある。これはかなり原初の頃に、従来あった細胞と結合してしまった他生物だ。これも純粋に自分自身と考えていいのだろうか? もし今後他のDNAを持った存在が、同様に各細胞と結合してしまった場合どうなるのだろう?

 物理的にもっと分かり易い例だと、昔のアニメ『マジンガーゼット』に出て来る敵役で、アシュラ男爵というのがいた。これは体の半分半分が別の人間で、それがひとつになっていた。彼らはどちらが自分自身なんだろうか? ミトコンドリアも自身であれば、二人でひとつの自分自身なんだろうか?

 別にどうでもいい話かもしれない。どう定義するかだけの話という気もする。しかし未だにしっかりと定義されたことはないかもしれない。それはそんな必要が無いからだろう。しかしとても気になる。
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