【全4話】私の婚約者を欲しいと妹が言ってきた。私は醜いから相応しくないんだそうです

リオール

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「お姉様!」
「え、何?」
「お姉様は醜いんですから大人しくしててください!私が全て貰います!」

 どういう理屈なのそれ。
 開いた口が塞がらないとはこの事かしら。

 私もマシュー様も、ただただ呆れてポカンとなってしまった。それをどう解釈したのか。ビリアがドンと私を押しのけてマシュー様の前に出たのだ。

 その強さに負けて、私は床に尻もちをついてしまった。「ラナリア!」と驚いてマシュー様が名前を呼ぶも、ビリアが邪魔で近づいて来れない。

「ほら、マシュー様。こんな弱っちいお姉様よりも。私の方が妻に相応しいと思いません?」
「──き、さま……」
「ああ、照れてらっしゃるのですね。そんな貴方も愛しいですわ。ほらマシュー様、姉よりふくよかで美しい私がお相手して差し上げますよ。まずは誓いのベーゼを……むっふ~」
「ひいいい!!!!」

 たまらず悲鳴を上げるマシュー様。どんどん近付いて来るビリアを押しのける事が出来ず、もう涙目だ。

「マシュー様!」

 慌てて立ち上がろうとするも、ドレスの裾が絡まって邪魔をする。ああ、鬱陶しい!
 そうこうしてるうちに、ビリアの顔がズンズンとマシュー様に近付いている。急がなければ!

 焦れば焦る程、ドレスは絡まり足も絡まり、うまく立てない……。

 誰か、誰かマシュー様を……

 助けて!

 その願いは唐突に届く。

 ゴンッと鈍い音が響くと共に、ビリアがマシュー様から引きはがされたのだ!

「いっだ……」
「この馬鹿者があ!!!!」

 お父様だ。
 騒ぎを聞きつけて走って来たのか、肩で息をしながら父がビリアの頭を思い切り殴ったのだった。

 痛みに頭を抱えるビリア。そんな彼女の首根っこを容赦なく引っ掴むお父様。

 ホッと胸を撫で下ろしていたら、目の前に手が差し出されたのでその主を見上げた。

「マシュー様」
「ラナリア……大丈夫か?」

 心配そうに覗き込んでくるその瞳に安堵して。
 私はギュッとその手を握り立ち上がった。

「マシュー様!マシュー様こそ大丈夫ですか?」
「ああ。どうにか……大丈夫だったよ」

 それは貞操に関する事かしら。ご無事で何よりです。

 安心した私はそっとその体に寄り掛かる。それを優しく受け止めてくれるマシュー様に、私は嬉しくて涙が出そうになった。

 だがまだ終わってない。
 
 私は賑やかな背後を振り返った。

 そこでは……

「この馬鹿娘が!姉の婚約者にせまるとは何を考えてる!?」
「だって!お姉様より絶対私の方が相応しいと思うんです!」

 ギャイギャイと親子喧嘩が繰り広げられていた。

 ビリアが足で床を蹴る。
 ──ドスンッと床が揺れた。いや、建物全体かしら?

 揺れながらお父様が叫ぶ。

「まずはその厚化粧をどうにかしろ!ピエロか!」
「白い肌の方が美しいんです!」
「白すぎるだろ!チークも……もうそれチークじゃないだろ!赤丸になってるじゃないか!」
「この丸がいいんですよ!頬が赤いのって魅力的でしょうが!」
「赤じゃなく馬鹿に見えるわ!あともう少し痩せろ!ちょっとラナリアを小突いたつもりだろうが、完全に張り手になっとる!王子もお前に潰されそうになっとったじゃないか!」

 ビリアはとってもふくよかだ。別にそれが悪いとは言わないけれど、地面を揺らしながら歩くのはちょっと……せめて揺れない程度には痩せた方が健康にいいんじゃないかしら?と思わなくもない。ビリアがそれでいいなら、とあまり強く言ったことは無いが。

 そしてちょっとメイクが独創的だ。それも本人が良いなら……と言わなかったけれど。
 どうも鏡を見ないでやってるらしく、濃いし、ところどころ歪んでたりする。軽くホラー。

 知らぬは本人ばかりなり。
 まあ……ビリアが良いなら(以下略

「お姉様は軟弱すぎるんですよ!マシュー様は私がお守りします、むんっ!」
「むんっ!じゃねえわあ!!!!」

 ブヨブヨだけど太く逞しい腕で力こぶを作るビリア。
 それに対して涙ながらに突っ込む父。

 あとは父に任せて、私とマシュー様は二人きりの時間を過ごしましょう。そっと私達はその場を離れるのだった。

 後日。
 ビリアに全身鏡をプレゼントしたら……屋敷中に悲鳴が響き渡った。

 人のこと言う前に、貴女が鏡を見ようね……。




 ~fin.~



 
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みんなの感想(12件)

ひろ44
2026.01.11 ひろ44
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解除
一色
2025.09.29 一色
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すずまる
2025.05.14 すずまる
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