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4、
しおりを挟む長い髪は溺れていたから、ほどけてしまったのだろうか。
目を閉じた顔があまりに綺麗で、男の子だなんて思いもしなかった。
(まさか男の子だったなんて!)
では私があの時した頬へのキスは、つまりは男の子へのキスだったってこと!?
思い出してカッと頬が熱くなるのを感じた。
「フィリア?どうかしたのかい?」
様子のおかしい私に、父が訝し気に聞いてくる。
そこでようやくハッと我に返った私は、慌てて首を振った。
「い、いいえ……ちょっと驚いたもので」
その言葉を父は違う方に汲み取ったようで、ウンウンと頷くのだった。
「そうだろうそうだろう。私も驚いたよ。先日国王から呼び出しがあった時には何事かと焦ったものだったが……まさかこんな嬉しいお話しだとは」
その時の事を思い出したのか、涙を流す父。
「なんでも先月のお茶会でメリッサが王子をお助けしたとかで。そんな心優しいメリッサを是非妻にと王子から申し出て下さったそうなんだ!」
そして母と二人して抱きながら涙する。
けれどそんな二人の様を私は見ることは無かった。
ただただ、父の言葉に呆然とするだけだったから。
王子を助けた?
それって。それってまさか……。
「私が溺れていたところをメリッサが助けてくれたんだ。あの時は本当にありがとう、メリッサ」
「いいえ王子様、当然のことをしたまでですわ」
頭をガーンと殴られるような気分とはこの事だろうか。
ああ、やっぱりそうなんだ。
あの時、溺れていたのはこの目の前の王子で。
そして王子は、あの時助けたのがメリッサだと勘違いしてるんだ……。
気になるのはメリッサだ。
彼女は知ってるはずなのに。
王子を助けたのは私で、自分は私の指示で大人を呼びに行っただけだということを。
彼女はそれを否定しなかったのだろうか?
チラリとメリッサを見たら、彼女も私を見ていて目が合った。
そして一瞬。
本当に一瞬だったけど、ニヤリと彼女は笑い。
そしてすぐにその笑みを消すのだった。
(────!!)
やられた。これは確信犯だ!
全て理解しながら、私が何も言わないのをいいことに、自分の手柄としたんだ!
九歳にしてこのずる賢さ!呆れるやら虚しいやら……けれど全ては自分の責任だ。
真実を話さなかったのは私なのだから。
本当は王子を助けたのは私なんだと今更言ったところで、誰がそれを信じるだろうか?
あのボチョボチョの状態を父も見てるとはいえ……もう今更、なのだ。本当に今更だ。
だから私に出来ることは一つしかなかった。
「おめでとうメリッサ」
そう言って。
妹に。二人に。
笑顔で祝福を述べるだけ。
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