王子を助けたのは妹だと勘違いされた令嬢は人魚姫の嘆きを知る

リオール

文字の大きさ
5 / 27

4、

しおりを挟む
 
 
 長い髪は溺れていたから、ほどけてしまったのだろうか。

 目を閉じた顔があまりに綺麗で、男の子だなんて思いもしなかった。

(まさか男の子だったなんて!)

 では私があの時した頬へのキスは、つまりは男の子へのキスだったってこと!?

 思い出してカッと頬が熱くなるのを感じた。

「フィリア?どうかしたのかい?」

 様子のおかしい私に、父が訝し気に聞いてくる。
 そこでようやくハッと我に返った私は、慌てて首を振った。

「い、いいえ……ちょっと驚いたもので」

 その言葉を父は違う方に汲み取ったようで、ウンウンと頷くのだった。

「そうだろうそうだろう。私も驚いたよ。先日国王から呼び出しがあった時には何事かと焦ったものだったが……まさかこんな嬉しいお話しだとは」

 その時の事を思い出したのか、涙を流す父。

「なんでも先月のお茶会でメリッサが王子をお助けしたとかで。そんな心優しいメリッサを是非妻にと王子から申し出て下さったそうなんだ!」

 そして母と二人して抱きながら涙する。
 けれどそんな二人の様を私は見ることは無かった。

 ただただ、父の言葉に呆然とするだけだったから。

 王子を助けた?
 それって。それってまさか……。

「私が溺れていたところをメリッサが助けてくれたんだ。あの時は本当にありがとう、メリッサ」
「いいえ王子様、当然のことをしたまでですわ」

 頭をガーンと殴られるような気分とはこの事だろうか。

 ああ、やっぱりそうなんだ。
 あの時、溺れていたのはこの目の前の王子で。
 そして王子は、あの時助けたのがメリッサだと勘違いしてるんだ……。

 気になるのはメリッサだ。
 彼女は知ってるはずなのに。
 王子を助けたのは私で、自分は私の指示で大人を呼びに行っただけだということを。

 彼女はそれを否定しなかったのだろうか?

 チラリとメリッサを見たら、彼女も私を見ていて目が合った。
 そして一瞬。

 本当に一瞬だったけど、ニヤリと彼女は笑い。
 そしてすぐにその笑みを消すのだった。

(────!!)

 やられた。これは確信犯だ!

 全て理解しながら、私が何も言わないのをいいことに、自分の手柄としたんだ!

 九歳にしてこのずる賢さ!呆れるやら虚しいやら……けれど全ては自分の責任だ。
 真実を話さなかったのは私なのだから。

 本当は王子を助けたのは私なんだと今更言ったところで、誰がそれを信じるだろうか?
 あのボチョボチョの状態を父も見てるとはいえ……もう今更、なのだ。本当に今更だ。

 だから私に出来ることは一つしかなかった。

「おめでとうメリッサ」

 そう言って。
 妹に。二人に。

 笑顔で祝福を述べるだけ。




しおりを挟む
感想 126

あなたにおすすめの小説

短編 一人目の婚約者を姉に、二人目の婚約者を妹に取られたので、猫と余生を過ごすことに決めました

朝陽千早
恋愛
二度の婚約破棄を経験し、すべてに疲れ果てた貴族令嬢ミゼリアは、山奥の屋敷に一人籠もることを決める。唯一の話し相手は、偶然出会った傷ついた猫・シエラル。静かな日々の中で、ミゼリアの凍った心は少しずつほぐれていった。 ある日、負傷した青年・セスを屋敷に迎え入れたことから、彼女の生活は少しずつ変化していく。過去に傷ついた二人と一匹の、不器用で温かな共同生活。しかし、セスはある日、何も告げず姿を消す── 「また、大切な人に置いていかれた」 残された手紙と金貨。揺れる感情と決意の中、ミゼリアはもう一度、失ったものを取り戻すため立ち上がる。 これは、孤独と再生、そして静かな愛を描いた物語。

母が病気で亡くなり父と継母と義姉に虐げられる。幼馴染の王子に溺愛され結婚相手に選ばれたら家族の態度が変わった。

佐藤 美奈
恋愛
最愛の母モニカかが病気で生涯を終える。娘の公爵令嬢アイシャは母との約束を守り、あたたかい思いやりの心を持つ子に育った。 そんな中、父ジェラールが再婚する。継母のバーバラは美しい顔をしていますが性格は悪く、娘のルージュも見た目は可愛いですが性格はひどいものでした。 バーバラと義姉は意地のわるそうな薄笑いを浮かべて、アイシャを虐げるようになる。肉親の父も助けてくれなくて実子のアイシャに冷たい視線を向け始める。 逆に継母の連れ子には甘い顔を見せて溺愛ぶりは常軌を逸していた。

片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜

橘しづき
恋愛
 姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。    私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。    だが当日、姉は結婚式に来なかった。  パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。 「私が……蒼一さんと結婚します」    姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。

【完結】小さなマリーは僕の物

miniko
恋愛
マリーは小柄で胸元も寂しい自分の容姿にコンプレックスを抱いていた。 彼女の子供の頃からの婚約者は、容姿端麗、性格も良く、とても大事にしてくれる完璧な人。 しかし、周囲からの圧力もあり、自分は彼に不釣り合いだと感じて、婚約解消を目指す。 ※マリー視点とアラン視点、同じ内容を交互に書く予定です。(最終話はマリー視点のみ)

愛されていないはずの婚約者に「貴方に愛されることなど望んでいませんわ」と申し上げたら溺愛されました

海咲雪
恋愛
「セレア、もう一度言う。私はセレアを愛している」 「どうやら、私の愛は伝わっていなかったらしい。これからは思う存分セレアを愛でることにしよう」 「他の男を愛することは婚約者の私が一切認めない。君が愛を注いでいいのも愛を注がれていいのも私だけだ」 貴方が愛しているのはあの男爵令嬢でしょう・・・? 何故、私を愛するふりをするのですか? [登場人物] セレア・シャルロット・・・伯爵令嬢。ノア・ヴィアーズの婚約者。ノアのことを建前ではなく本当に愛している。  × ノア・ヴィアーズ・・・王族。セレア・シャルロットの婚約者。 リア・セルナード・・・男爵令嬢。ノア・ヴィアーズと恋仲であると噂が立っている。 アレン・シールベルト・・・伯爵家の一人息子。セレアとは幼い頃から仲が良い友達。実はセレアのことを・・・?

悪役令嬢と誤解され冷遇されていたのに、目覚めたら夫が豹変して求愛してくるのですが?

いりん
恋愛
初恋の人と結婚できたーー これから幸せに2人で暮らしていける…そう思ったのに。 「私は夫としての務めを果たすつもりはない。」 「君を好きになることはない。必要以上に話し掛けないでくれ」 冷たく拒絶され、離婚届けを取り寄せた。 あと2週間で届くーーそうしたら、解放してあげよう。 ショックで熱をだし寝込むこと1週間。 目覚めると夫がなぜか豹変していて…!? 「君から話し掛けてくれないのか?」 「もう君が隣にいないのは考えられない」 無口不器用夫×優しい鈍感妻 すれ違いから始まる両片思いストーリー

【完結】想い人がいるはずの王太子殿下に求婚されまして ~不憫な王子と勘違い令嬢が幸せになるまで~

Rohdea
恋愛
──私は、私ではない“想い人”がいるはずの王太子殿下に求婚されました。 昔からどうにもこうにも男運の悪い侯爵令嬢のアンジェリカ。 縁談が流れた事は一度や二度では無い。 そんなアンジェリカ、実はずっとこの国の王太子殿下に片想いをしていた。 しかし、殿下の婚約の噂が流れ始めた事であっけなく失恋し、他国への留学を決意する。 しかし、留学期間を終えて帰国してみれば、当の王子様は未だに婚約者がいないという。 帰国後の再会により再び溢れそうになる恋心。 けれど、殿下にはとても大事に思っている“天使”がいるらしい。 更に追い打ちをかけるように、殿下と他国の王女との政略結婚の噂まで世間に流れ始める。 今度こそ諦めよう……そう決めたのに…… 「私の天使は君だったらしい」 想い人の“天使”がいるくせに。婚約予定の王女様がいるくせに。 王太子殿下は何故かアンジェリカに求婚して来て─── ★★★ 『美人な姉と間違って求婚されまして ~望まれない花嫁が愛されて幸せになるまで~』 に、出て来た不憫な王太子殿下の話になります! (リクエストくれた方、ありがとうございました) 未読の方は一読された方が、殿下の不憫さがより伝わるような気がしています……

姉の婚約者に愛人になれと言われたので、母に助けてと相談したら衝撃を受ける。

佐藤 美奈
恋愛
男爵令嬢のイリスは貧乏な家庭。学園に通いながら働いて学費を稼ぐ決意をするほど。 そんな時に姉のミシェルと婚約している伯爵令息のキースが来訪する。 キースは母に頼まれて学費の資金を援助すると申し出てくれました。 でもそれには条件があると言いイリスに愛人になれと迫るのです。 最近母の様子もおかしい?父以外の男性の影を匂わせる。何かと理由をつけて出かける母。 誰かと会う約束があったかもしれない……しかし現実は残酷で母がある男性から溺愛されている事実を知る。 「お母様!そんな最低な男に騙されないで!正気に戻ってください!」娘の悲痛な叫びも母の耳に入らない。 男性に恋をして心を奪われ、穏やかでいつも優しい性格の母が変わってしまった。 今まで大切に積み上げてきた家族の絆が崩れる。母は可愛い二人の娘から嫌われてでも父と離婚して彼と結婚すると言う。

処理中です...