美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛

らがまふぃん

文字の大きさ
39 / 72
結婚編

しおりを挟む
 新章開始です。ご都合主義に進みますので、笑って許して下さるとありがたいです。


*~*~*~*~*


 国の筆頭公爵家、ディレイガルドの嫡男の結婚式には、王族はもちろん、近隣諸国からも錚々そうそうたる顔ぶれが集まる。
 ディレイガルド公爵家嫡男、エリアスト・カーサ・ディレイガルドと、ファナトラタ伯爵家長女、アリス・コーサ・ファナトラタの結婚式まで、あと三ヶ月となった。
 一日でも早く結婚をしたいエリアストの意向により、アリスが十八になるその日に式を挙げる。アリスの誕生日はデビュタントより前なので、王族へのお披露目より先に結婚をすることになる。これは異例のことだ。十八で確かに結婚は認められるが、通常は十八を迎えても、デビュタントより後に式は行う。決まりはないが、王族への礼儀として、貴族たちはそうしている。だが、この結婚に関して言えば、エリアストを知る者たちは、当然のことと受け入れていた。
 国を挙げての祝い事に等しい式。通常であれば、各所への連絡や準備などに大わらわのはずだ。けれど、ディレイガルド公爵家とアリスは、以外とのんびりしていた。理由として、婚約を結んだ当初から、アリスを逃がす気のない公爵家が着々と準備をしていたからだ。あと残ったことと言えば、式に着るドレスの最終採寸のみ。これは、式の一月前に行われるので、本当にいつも通りの日々を送るだけだ。
 「やっとアリスちゃんがウチの子になるのね。長かったわあ」
 夫人の言葉に、一緒にお茶をしていたアリスは微笑んだ。
 「ありがとうございます、お義母様。わたくしも、心待ちにしておりました」
 夫人は優雅に微笑む。
 「本当にあの子、見る目だけはあったわねぇ」
 感心感心、と夫人は嬉しそうに言った。最初こそは、本当にどうなることかと思った。息子がとんでもない生き物に見えた。ディレイガルドは代々奇人変人の集まりだが、うまくそれを共存させていた。だがエリアストは違う。剥き出しだった。それを、こうもうまく包んでくれる存在を見つけるとは。
 「アリスちゃんは凄いわ。あの子と会ったの十三歳でしょ?わたくしだったら逃げ出していたわ。あんな怖いモノから」
 自分の息子にそれはあんまりな言い方ではないだろうか。アリスは苦笑する。
 「そうですね、なんでしょう。上手く言えないのですが、突然わかった気がしたのです」
 「わかった?」
 「はい。エル様は、無垢すぎたのだと思います」
 無垢、なんて、あの息子からかけ離れすぎていないだろうか。
 夫人は微妙な表情を浮かべる。それを見てアリスは困ったように笑った。
 「善意も悪意もわからないまま、すべてを受け入れてしまうように感じました」
 「うーん、そうなの?うーん、息子のことなのにわからないわ」
 首をかしげる夫人は、どこか少女のようで愛らしかった。
 「まあいいわ。アリスちゃん、あの子のこと、これからもよろしくね」
 「はい。わたくしもエル様と一緒に成長できるよう努力して参ります」
 夫人とアリスは微笑み合った。


*~*~*~*~*


 「え、何あの子。女神?」
 「殿下!」
 「いやいやいやいや、見てよ、レンフィ。マジ女神」
 「言葉が乱れ過ぎです!それに騎士服とは言え身軽に動き過ぎです!」
 「わかったわかった。血圧上がるよ、レンフィ」
 「殿下!」
 「ララ殿下、そろそろ戻りましょう。団長が鬼になっていそうです」
 「だねぇ。ま、ディレイガルドの花嫁も見られたし、今日はここらで帰るとしよう。あー、あの女神様は人妻になっちゃうのかぁ。残念だなぁ」
 「ララ殿下が人妻とか言うといかがわしいですね」
 「シャール隊長!」
 「ほらほら、レンフィが倒れちゃうから帰ろっか」


 *つづく*
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

廃妃の再婚

束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの 父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。 ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。 それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。 身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。 あの時助けた青年は、国王になっていたのである。 「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは 結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。 帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。 カトルはイルサナを寵愛しはじめる。 王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。 ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。 引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。 ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。 だがユリシアスは何かを隠しているようだ。 それはカトルの抱える、真実だった──。

これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー

小田恒子
恋愛
この度、幼馴染とお見合いを経て政略結婚する事になりました。 でも、その彼の左手薬指には、指輪が輝いてます。 もしかして、これは本当に形だけの結婚でしょうか……? 表紙はぱくたそ様のフリー素材、フォントは簡単表紙メーカー様のものを使用しております。 全年齢作品です。 ベリーズカフェ公開日 2022/09/21 アルファポリス公開日 2025/06/19 作品の無断転載はご遠慮ください。

悪役令嬢の涙

拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。

どなたか私の旦那様、貰って下さいませんか?

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
私の旦那様は毎夜、私の部屋の前で見知らぬ女性と情事に勤しんでいる、だらしなく恥ずかしい人です。わざとしているのは分かってます。私への嫌がらせです……。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 政略結婚で、離縁出来ないけど離縁したい。 無類の女好きの従兄の侯爵令息フェルナンドと伯爵令嬢のロゼッタは、結婚をした。毎晩の様に違う女性を屋敷に連れ込む彼。政略結婚故、愛妾を作るなとは思わないが、せめて本邸に連れ込むのはやめて欲しい……気分が悪い。 彼は所謂美青年で、若くして騎士団副長であり兎に角モテる。結婚してもそれは変わらず……。 ロゼッタが夜会に出れば見知らぬ女から「今直ぐフェルナンド様と別れて‼︎」とワインをかけられ、ただ立っているだけなのに女性達からは終始凄い形相で睨まれる。 居た堪れなくなり、広間の外へ逃げれば元凶の彼が見知らぬ女とお楽しみ中……。 こんな旦那様、いりません! 誰か、私の旦那様を貰って下さい……。

あなたの愛が正しいわ

来須みかん
恋愛
旧題:あなたの愛が正しいわ~夫が私の悪口を言っていたので理想の妻になってあげたのに、どうしてそんな顔をするの?~  夫と一緒に訪れた夜会で、夫が男友達に私の悪口を言っているのを聞いてしまった。そのことをきっかけに、私は夫の理想の妻になることを決める。それまで夫を心の底から愛して尽くしていたけど、それがうっとうしかったそうだ。夫に付きまとうのをやめた私は、生まれ変わったように清々しい気分になっていた。  一方、夫は妻の変化に戸惑い、誤解があったことに気がつき、自分の今までの酷い態度を謝ったが、妻は美しい笑みを浮かべてこういった。 「いいえ、間違っていたのは私のほう。あなたの愛が正しいわ」

本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います <子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。> 両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。 ※ 本編完結済。他視点での話、継続中。 ※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています ※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

処理中です...