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らがまふぃん投稿開始二周年記念 第一弾
アルファポリス様にて投稿させていただき、みなさまに支えられながら活動して二年が経ちました。いつも楽しく活動出来ているのは、優しく見守ってくださるみなさまのおかげです。これからもほそぼそ頑張って参りますので、これまで同様、温かい目で見守って、お付き合いくださいませ。
アリス十六、十七歳の誕生日に、エリアストが贈ったガゼボと温室のお話しです。
*∽*∽*∽*∽*
「若様、これを半年で造るのは無茶ですな」
「出来ないと」
「ふむ。造るだけでしたら可能です。ですが、奥方様への贈り物でございましょう。我々も、ただ造るだけにはしとうございません」
エリアストは考える。
「職人の誇りにかけて、依頼以上の仕事がしとうございます。私ももう歳です。生涯最後の大仕事となるでしょうな。どうか、胸を張らせていただけないでしょうか」
エリアストも、半端なものを贈りたいわけではない。そんなものは論外に決まっている。母アイリッシュが見込んだ職人の言葉に、エリアストは頷いた。
「ありがとうございます。差し出がましいようですが、半年であれば、ガゼボは如何ですかな」
先を促すように、エリアストは職人を見た。
「この温室の設計図とデザインを見て、閃きましてのぅ。これと揃いのデザインのガゼボであれば、奥方様の今度のお誕生日に間に合います。その次のお誕生日のために、温室の方も平行して進めていこうと考えております。如何ですかな」
「話を詰める」
提案に頷いてもらえた職人は、嬉しそうに微笑んだ。
*~*~*~*~*
十六歳の誕生日、アリスは、その美しさに息をのんだ。
「エル様、なんて、なんて美しいのでしょう」
エリアストにエスコートされながら、ゆっくりとガゼボに向かうアリスは、目に飛び込んできたガゼボの存在に立ち止まる。
真珠のような輝きを放つ、白いガゼボ。
柱は腰の高さまで繊細な彫刻が施され、上部にも下に向かってグラデーションするように彫刻されている。屋根には、三体の天使の像。
「気に入ってもらえて良かった、エルシィ」
贈り物に慣れていないエリアストは、アリスの反応を見るまで不安だった。アリスが否定的な反応を見せるなど、あり得ないとはわかっている。自分の自信のなさが原因の不安。そんなものを払拭するように、アリスはいつも瞳を潤ませ、心からの笑みを見せてくれる。
二人、嬉しそうに歩き出す。
ガゼボに辿り着き、備えられたソファーに座る。アリスは天井を見上げると、またしても感嘆の声を上げた。
そこは、アメジストとアクアマリンの宝石が散りばめられ、星のように煌めいていた。
言葉をなくし、ついに堪えきれず、大きな瞳から涙が零れた。
エリアストは、その涙に愛おしくくちづける。
エスコートしてきた道にはアリスの好きな花々が一面に咲き誇り、時折吹く優しい風に揺れていた。
さあ、あと、二年。
*~*~*~*~*
十七歳の誕生日、アリスは、呼吸を忘れるほどの衝撃を受けた。
ガゼボとお揃いだとわかる温室。ガゼボと同じ、腰の高さまで揃いの模様がガラスに彫られ、また、同じように上部には下に向かってグラデーションするように揃いの模様が彫られている。ガラスを彫っているので、模様が主張しすぎることなく景観を損ねることはない。控え目に存在するだけ。ただこのガラス、中から外は見えるのだが、外から中は見えない。白く美しいドームとして存在する。中から見る模様は控え目だが、外からはハッキリと主張しており、それは最早、美術品だった。
温室の中は、中央にスペースが設けられ、二人、寄り添って座れる程度のベンチが一つ。
温室の入り口側にはガラスの階段。壁となるガラスに沿った、温室の奥へと続く階段を上りきると、温室の半分ほどの高さにまでなる。そこは、テーブルとソファーが置かれたスペースとなっており、ゆっくりお茶を楽しむことが出来た。そこから温室が一望出来、視線をその向こう側の外に移せば、ディレイガルド邸の美しい庭園が一望出来た。
そして夜になると、昼間の顔が一変する。控え目にいたガラスの模様たちは、月明かりを反射して、淡く浮かび上がるのだ。その模様は、温室の花々が光っているようで。
アリスはエリアストにお姫様抱っこをされ、幻想的な光に包まれながら、その階段を上る。
昼間に来たときと違う顔を見せるその光景に、感動のあまり言葉にならずに瞳を潤ませるアリスを、エリアストはひどく満ち足りた笑みで見つめた。
階段を上りきると、アリスを抱いたままエリアストはソファーに座る。
「エルシィ、上を」
促され、顔を上げたアリスは両手で口元を覆った。
昼間は何もないと思われた天井には、天の川。
星空の中にいるようだった。
アリスの目から、涙が零れた。頬を伝う涙に、エリアストは唇を寄せる。
感動のあまり、言葉を発することの出来ないアリス。
長い時間、ただ、二人、寄り添っていた。
「エル様、ありがとうございます」
美しい笑顔を見せるアリスに、エリアストも自然顔が綻ぶ。
「エルシィの喜んだ顔が見られて嬉しい」
顔中にキスの雨を降らせながら、エリアストは喜んだ。
さあ、あと、一年。
あと一年で、アリスを帰さなくていい日が来る。
「エルシィ」
名を呼ぶだけで幸せな存在を、愛しく抱き締め続けた。
*おしまい*
らがまふぃん二周年記念にお付き合いくださり、ありがとうございます。
エル様の愛が詰まった贈り物のお話し、いかがでしたか。
今後の二周年記念といたしまして、
第二弾 R6.10/30 あなたは一体誰ですか?
第三弾 R6.10/31 自分がされて嫌なことは、人にしてはいけません。と、言うことは、だ。
第四弾 R6.11/1 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛
第五弾 R6.11/2 精霊の使い?いいえ違います。
第六弾 R6.11/3 では、復讐するか
第七弾 R6.11/4 美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛
以上のスケジュールでお届け予定です。
お時間の都合のつく方は、是非のぞいていただけると嬉しいです。
これからも、どうぞよろしくお願いいたします。R6.10/29
アルファポリス様にて投稿させていただき、みなさまに支えられながら活動して二年が経ちました。いつも楽しく活動出来ているのは、優しく見守ってくださるみなさまのおかげです。これからもほそぼそ頑張って参りますので、これまで同様、温かい目で見守って、お付き合いくださいませ。
アリス十六、十七歳の誕生日に、エリアストが贈ったガゼボと温室のお話しです。
*∽*∽*∽*∽*
「若様、これを半年で造るのは無茶ですな」
「出来ないと」
「ふむ。造るだけでしたら可能です。ですが、奥方様への贈り物でございましょう。我々も、ただ造るだけにはしとうございません」
エリアストは考える。
「職人の誇りにかけて、依頼以上の仕事がしとうございます。私ももう歳です。生涯最後の大仕事となるでしょうな。どうか、胸を張らせていただけないでしょうか」
エリアストも、半端なものを贈りたいわけではない。そんなものは論外に決まっている。母アイリッシュが見込んだ職人の言葉に、エリアストは頷いた。
「ありがとうございます。差し出がましいようですが、半年であれば、ガゼボは如何ですかな」
先を促すように、エリアストは職人を見た。
「この温室の設計図とデザインを見て、閃きましてのぅ。これと揃いのデザインのガゼボであれば、奥方様の今度のお誕生日に間に合います。その次のお誕生日のために、温室の方も平行して進めていこうと考えております。如何ですかな」
「話を詰める」
提案に頷いてもらえた職人は、嬉しそうに微笑んだ。
*~*~*~*~*
十六歳の誕生日、アリスは、その美しさに息をのんだ。
「エル様、なんて、なんて美しいのでしょう」
エリアストにエスコートされながら、ゆっくりとガゼボに向かうアリスは、目に飛び込んできたガゼボの存在に立ち止まる。
真珠のような輝きを放つ、白いガゼボ。
柱は腰の高さまで繊細な彫刻が施され、上部にも下に向かってグラデーションするように彫刻されている。屋根には、三体の天使の像。
「気に入ってもらえて良かった、エルシィ」
贈り物に慣れていないエリアストは、アリスの反応を見るまで不安だった。アリスが否定的な反応を見せるなど、あり得ないとはわかっている。自分の自信のなさが原因の不安。そんなものを払拭するように、アリスはいつも瞳を潤ませ、心からの笑みを見せてくれる。
二人、嬉しそうに歩き出す。
ガゼボに辿り着き、備えられたソファーに座る。アリスは天井を見上げると、またしても感嘆の声を上げた。
そこは、アメジストとアクアマリンの宝石が散りばめられ、星のように煌めいていた。
言葉をなくし、ついに堪えきれず、大きな瞳から涙が零れた。
エリアストは、その涙に愛おしくくちづける。
エスコートしてきた道にはアリスの好きな花々が一面に咲き誇り、時折吹く優しい風に揺れていた。
さあ、あと、二年。
*~*~*~*~*
十七歳の誕生日、アリスは、呼吸を忘れるほどの衝撃を受けた。
ガゼボとお揃いだとわかる温室。ガゼボと同じ、腰の高さまで揃いの模様がガラスに彫られ、また、同じように上部には下に向かってグラデーションするように揃いの模様が彫られている。ガラスを彫っているので、模様が主張しすぎることなく景観を損ねることはない。控え目に存在するだけ。ただこのガラス、中から外は見えるのだが、外から中は見えない。白く美しいドームとして存在する。中から見る模様は控え目だが、外からはハッキリと主張しており、それは最早、美術品だった。
温室の中は、中央にスペースが設けられ、二人、寄り添って座れる程度のベンチが一つ。
温室の入り口側にはガラスの階段。壁となるガラスに沿った、温室の奥へと続く階段を上りきると、温室の半分ほどの高さにまでなる。そこは、テーブルとソファーが置かれたスペースとなっており、ゆっくりお茶を楽しむことが出来た。そこから温室が一望出来、視線をその向こう側の外に移せば、ディレイガルド邸の美しい庭園が一望出来た。
そして夜になると、昼間の顔が一変する。控え目にいたガラスの模様たちは、月明かりを反射して、淡く浮かび上がるのだ。その模様は、温室の花々が光っているようで。
アリスはエリアストにお姫様抱っこをされ、幻想的な光に包まれながら、その階段を上る。
昼間に来たときと違う顔を見せるその光景に、感動のあまり言葉にならずに瞳を潤ませるアリスを、エリアストはひどく満ち足りた笑みで見つめた。
階段を上りきると、アリスを抱いたままエリアストはソファーに座る。
「エルシィ、上を」
促され、顔を上げたアリスは両手で口元を覆った。
昼間は何もないと思われた天井には、天の川。
星空の中にいるようだった。
アリスの目から、涙が零れた。頬を伝う涙に、エリアストは唇を寄せる。
感動のあまり、言葉を発することの出来ないアリス。
長い時間、ただ、二人、寄り添っていた。
「エル様、ありがとうございます」
美しい笑顔を見せるアリスに、エリアストも自然顔が綻ぶ。
「エルシィの喜んだ顔が見られて嬉しい」
顔中にキスの雨を降らせながら、エリアストは喜んだ。
さあ、あと、一年。
あと一年で、アリスを帰さなくていい日が来る。
「エルシィ」
名を呼ぶだけで幸せな存在を、愛しく抱き締め続けた。
*おしまい*
らがまふぃん二周年記念にお付き合いくださり、ありがとうございます。
エル様の愛が詰まった贈り物のお話し、いかがでしたか。
今後の二周年記念といたしまして、
第二弾 R6.10/30 あなたは一体誰ですか?
第三弾 R6.10/31 自分がされて嫌なことは、人にしてはいけません。と、言うことは、だ。
第四弾 R6.11/1 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛
第五弾 R6.11/2 精霊の使い?いいえ違います。
第六弾 R6.11/3 では、復讐するか
第七弾 R6.11/4 美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛
以上のスケジュールでお届け予定です。
お時間の都合のつく方は、是非のぞいていただけると嬉しいです。
これからも、どうぞよろしくお願いいたします。R6.10/29
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