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ディレイガルド事変編
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このお話しは、後味悪く感じるかも知れません。
かなり暗い話になります。
ささやかにネタバレになりますが、ディレイガルドを怒らせるとは、そういうことなのです。
容姿や犯罪に関する内容が含まれますので、お読みになる際はご注意下さい。
*~*~*~*~*
エリアスト・カーサ・ディレイガルド。
キレイ。
顔も、名前も、キレイ。
アリス・コーサ・ファナトラタを一途に愛するその心が、キレイ。
キレイ。キレイね。
エリアスト・カーサ・ディレイガルド。
全部キレイ。全部、ぜぇんぶ、キレイね。
アーリオーリ国の第二王女アフロディーテ・ロロニス・アーリオーリが処刑をされて、だいぶ落ち着きを取り戻した頃。
「如何されますか、ご当主様」
ディレイガルド家家令オルガサレスが、一枚の手紙をエリアストに渡した。無言で目を通したエリアストは、握り締めて皺になったその手紙を護衛に渡す。
「この手のものは続く。探せ」
明らかに部屋の温度が下がった。地の底から響くような声が、エリアストの怒りを如実に現わしている。護衛は手紙を受け取ると、一礼して急ぎ部屋を後にした。
「奥様には如何されます」
オルガサレスの言葉に、エリアストはグッと眉を寄せた。
「怖がらせるな。内々に処理を」
「畏まりました」
オルガサレスが一礼して部屋を去る。一人残された執務室の椅子に、深く座り直す。
怪文書。新聞の切り抜きで文が綴られていた。
“エリアスト・カーサ・ディレイガルドと別れろ。”
「くだらん」
怪文書を思い出し、吐き捨てるようにエリアストは言った。たとえアリスが別れたいと言ったところで、それは無理な相談だ。アリスと別れるくらいなら、アリスを殺して自分も死ぬ。自分以外の者と幸せになる姿なんて見たくないし、考えたくもない。何より、アリスが自分と別れると言うはずがない。あり得ない前提の話など、不快なだけだ。そんな想像をさせられただけで、この犯人には生き地獄を味わわせてやらなくては。
エリアストの様子がいつもと違う。何か、悩んでいるようだ。
「エル様、何かございましたか」
ベッドに入ると、アリスが心配した声音でエリアストにそっと囁いた。エリアストはグッと詰まる。
些細な変化にも、いつも敏感に察知してくれる最愛の人。本当に自分をよく見てくれていることに、愛しくて仕方がなくなる。けれど、今回は気付いて欲しくなかった。あんなもの、知られたくないし、知る必要もないものだ。だからアリスに何も気付かれることなく、処理をしてしまいたかったのに。
「そう、だな。すぐに解決するはずだから、エルシィは何も心配しなくて良い」
まあ、無理な相談だ。相手はアリス。自分が敵うはずもない。
知らなくて済むものは知らないままでいて欲しい。けれど気付いたのなら、誤魔化すことはしない。詳しくは話せなくても、何事かがあったことはきちんと報せる。そして、解決を見るまでは、外出を制限してもらわなくてはならないことも。本日を含めて五日間は、領地の仕事に携わる予定なので、邸にいる。だから、アリスも邸にいる。その間に解決させようと思っていたため、外出制限の話をする予定はなかったのだが。気付かれたのなら、万が一を考えて伝えておく。
「はい。ですが、わたくしに出来ることがございましたら、何なりと仰ってくださいましね、エル様」
穏やかに微笑むアリスを抱き締める。
「ああ。いつもありがとう、エルシィ」
この腕の中に、すべての幸せがある。離せるはずがない。離してなるものか。
*つづく*
冒頭でアリスを旧姓で呼んでいるのはワザとです。間違いではありません。
かなり暗い話になります。
ささやかにネタバレになりますが、ディレイガルドを怒らせるとは、そういうことなのです。
容姿や犯罪に関する内容が含まれますので、お読みになる際はご注意下さい。
*~*~*~*~*
エリアスト・カーサ・ディレイガルド。
キレイ。
顔も、名前も、キレイ。
アリス・コーサ・ファナトラタを一途に愛するその心が、キレイ。
キレイ。キレイね。
エリアスト・カーサ・ディレイガルド。
全部キレイ。全部、ぜぇんぶ、キレイね。
アーリオーリ国の第二王女アフロディーテ・ロロニス・アーリオーリが処刑をされて、だいぶ落ち着きを取り戻した頃。
「如何されますか、ご当主様」
ディレイガルド家家令オルガサレスが、一枚の手紙をエリアストに渡した。無言で目を通したエリアストは、握り締めて皺になったその手紙を護衛に渡す。
「この手のものは続く。探せ」
明らかに部屋の温度が下がった。地の底から響くような声が、エリアストの怒りを如実に現わしている。護衛は手紙を受け取ると、一礼して急ぎ部屋を後にした。
「奥様には如何されます」
オルガサレスの言葉に、エリアストはグッと眉を寄せた。
「怖がらせるな。内々に処理を」
「畏まりました」
オルガサレスが一礼して部屋を去る。一人残された執務室の椅子に、深く座り直す。
怪文書。新聞の切り抜きで文が綴られていた。
“エリアスト・カーサ・ディレイガルドと別れろ。”
「くだらん」
怪文書を思い出し、吐き捨てるようにエリアストは言った。たとえアリスが別れたいと言ったところで、それは無理な相談だ。アリスと別れるくらいなら、アリスを殺して自分も死ぬ。自分以外の者と幸せになる姿なんて見たくないし、考えたくもない。何より、アリスが自分と別れると言うはずがない。あり得ない前提の話など、不快なだけだ。そんな想像をさせられただけで、この犯人には生き地獄を味わわせてやらなくては。
エリアストの様子がいつもと違う。何か、悩んでいるようだ。
「エル様、何かございましたか」
ベッドに入ると、アリスが心配した声音でエリアストにそっと囁いた。エリアストはグッと詰まる。
些細な変化にも、いつも敏感に察知してくれる最愛の人。本当に自分をよく見てくれていることに、愛しくて仕方がなくなる。けれど、今回は気付いて欲しくなかった。あんなもの、知られたくないし、知る必要もないものだ。だからアリスに何も気付かれることなく、処理をしてしまいたかったのに。
「そう、だな。すぐに解決するはずだから、エルシィは何も心配しなくて良い」
まあ、無理な相談だ。相手はアリス。自分が敵うはずもない。
知らなくて済むものは知らないままでいて欲しい。けれど気付いたのなら、誤魔化すことはしない。詳しくは話せなくても、何事かがあったことはきちんと報せる。そして、解決を見るまでは、外出を制限してもらわなくてはならないことも。本日を含めて五日間は、領地の仕事に携わる予定なので、邸にいる。だから、アリスも邸にいる。その間に解決させようと思っていたため、外出制限の話をする予定はなかったのだが。気付かれたのなら、万が一を考えて伝えておく。
「はい。ですが、わたくしに出来ることがございましたら、何なりと仰ってくださいましね、エル様」
穏やかに微笑むアリスを抱き締める。
「ああ。いつもありがとう、エルシィ」
この腕の中に、すべての幸せがある。離せるはずがない。離してなるものか。
*つづく*
冒頭でアリスを旧姓で呼んでいるのはワザとです。間違いではありません。
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