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ディレイガルド事変編
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表現をぼかして明記しておりませんが、犯罪ですのでその方法に気付いても、決して真似をしないでください。
*~*~*~*~*
二通目の怪文書を受け取った翌日。
アリスを思いきり堪能して、身も心も充実したエリアストからは、うっそりと笑ったときの危険な様子がすっかりなくなっていた。そのことに、家人たちは大いに安堵する。あの様子からすると、国の三つや四つ消えていてもおかしくはなかったからだ。本当に奥方様は凄い、と、改めてアリスの偉大さにみんなが拝んでいる頃。
執務室には既に新たな机が用意され、エリアストはアリスを膝に乗せたまま王城から届く執務を行っていた。解決を見ない怪文書のことがあるので、エリアストとアリスは引き続き邸に止まっている。
そろそろ昼食が近付いた頃だ。
「エル様、わたくし、思い出しました」
アリスがそんなことを言った。
「どうした、エルシィ」
手を止め、エリアストはアリスを覗き込むように見つめた。
「あの手紙に、微かに香りがありました。どこかで覚えのある気がしたのです、エル様」
エリアストは目を丸くした。
「オーシェン伯爵家の次女、シズワナ様ですわ」
「す、ごい、な、エルシィ」
郵便局を張っていても捕まえられなかった犯人に、あっさり辿り着いた。
「前回のお茶会でご一緒いたしました。最初は昨年、王城での夜会でお会いしておりますわ、エル様。エル様とぶつかったご令嬢です。衣装を交換いたしましたこと、覚えていらっしゃいますか」
「ああ、わかる、エルシィ」
必要最低限しかパーティーなどには参加しない。数えるほどしか参加しないが、よくトラブルに見舞われる。その夜会では、衣装が汚れただけだ。トラブルらしいトラブルではないが、異常に怯えていたことは覚えていた。エリアストの噂のせいだけではないように思えた。安心させるように、アリスはいつも以上にゆっくり話しかけ、自分たちから早く離した方がいいと判断し、すぐに離れたのだ。
「顔は、すまない、覚えてはいないが、その出来事は、わかる。その時の娘が、こんなことをしたのか、エルシィ」
「確証はございませんが、恐らく。二通届いているのですよね。郵便を使われているようですが、もしかしたら、エル様たちの目をかいくぐって届きませんでしたか?」
エリアストのことだ。一通目が届いた時点で二通目を警戒し、王都中、もしかしたら、国中の郵便局を張っていたのではないだろうか、と考え、アリスは口にした。
「ああ、その通りだ。何か方法がありそうだな。教えてくれ、エルシィ」
「褒められたやり方ではありません。偽造ですわ、エル様」
何と言わずともエリアストには察しがついた。エリアストは考える。それを偽造したところで、どう届けるというのか。それを局が受け取るはずがない。本人か頼まれた誰かがディレイガルドに届けるにしても、局員以外から邸の者が受け取ることはない。たとえ受け取る事態になったとしても、その人物を覚えて報告をしてくる。ここ暫く、局員以外から受け取ったという報告はない。
「すまない、エルシィ。それは、無理がないだろうか」
「いいえ、エル様。ご婦人たちのお話しの中に、出来る方法がございました」
いつだっただろう。以前の夜会の中で、こんな話をしている婦人たちの声が聞こえてきた。パートナーに内緒の逢瀬。その約束を記した手紙。家人に改められてもそれとバレないよう、秘密を散りばめた文章。局に持ち込むと、万が一にも足がついてしまったら大変だ。局を通さず、怪しまれずに、確実に愛しい人へ届ける方法。
アリスの話に、なるほどと思う。そうしてまんまと配達員は騙され、その家に届けてしまうと言うわけか。
何という方法だ。単純と言うべきか、巧妙と言うべきか。エリアストは頭を押さえた。
*つづく*
*~*~*~*~*
二通目の怪文書を受け取った翌日。
アリスを思いきり堪能して、身も心も充実したエリアストからは、うっそりと笑ったときの危険な様子がすっかりなくなっていた。そのことに、家人たちは大いに安堵する。あの様子からすると、国の三つや四つ消えていてもおかしくはなかったからだ。本当に奥方様は凄い、と、改めてアリスの偉大さにみんなが拝んでいる頃。
執務室には既に新たな机が用意され、エリアストはアリスを膝に乗せたまま王城から届く執務を行っていた。解決を見ない怪文書のことがあるので、エリアストとアリスは引き続き邸に止まっている。
そろそろ昼食が近付いた頃だ。
「エル様、わたくし、思い出しました」
アリスがそんなことを言った。
「どうした、エルシィ」
手を止め、エリアストはアリスを覗き込むように見つめた。
「あの手紙に、微かに香りがありました。どこかで覚えのある気がしたのです、エル様」
エリアストは目を丸くした。
「オーシェン伯爵家の次女、シズワナ様ですわ」
「す、ごい、な、エルシィ」
郵便局を張っていても捕まえられなかった犯人に、あっさり辿り着いた。
「前回のお茶会でご一緒いたしました。最初は昨年、王城での夜会でお会いしておりますわ、エル様。エル様とぶつかったご令嬢です。衣装を交換いたしましたこと、覚えていらっしゃいますか」
「ああ、わかる、エルシィ」
必要最低限しかパーティーなどには参加しない。数えるほどしか参加しないが、よくトラブルに見舞われる。その夜会では、衣装が汚れただけだ。トラブルらしいトラブルではないが、異常に怯えていたことは覚えていた。エリアストの噂のせいだけではないように思えた。安心させるように、アリスはいつも以上にゆっくり話しかけ、自分たちから早く離した方がいいと判断し、すぐに離れたのだ。
「顔は、すまない、覚えてはいないが、その出来事は、わかる。その時の娘が、こんなことをしたのか、エルシィ」
「確証はございませんが、恐らく。二通届いているのですよね。郵便を使われているようですが、もしかしたら、エル様たちの目をかいくぐって届きませんでしたか?」
エリアストのことだ。一通目が届いた時点で二通目を警戒し、王都中、もしかしたら、国中の郵便局を張っていたのではないだろうか、と考え、アリスは口にした。
「ああ、その通りだ。何か方法がありそうだな。教えてくれ、エルシィ」
「褒められたやり方ではありません。偽造ですわ、エル様」
何と言わずともエリアストには察しがついた。エリアストは考える。それを偽造したところで、どう届けるというのか。それを局が受け取るはずがない。本人か頼まれた誰かがディレイガルドに届けるにしても、局員以外から邸の者が受け取ることはない。たとえ受け取る事態になったとしても、その人物を覚えて報告をしてくる。ここ暫く、局員以外から受け取ったという報告はない。
「すまない、エルシィ。それは、無理がないだろうか」
「いいえ、エル様。ご婦人たちのお話しの中に、出来る方法がございました」
いつだっただろう。以前の夜会の中で、こんな話をしている婦人たちの声が聞こえてきた。パートナーに内緒の逢瀬。その約束を記した手紙。家人に改められてもそれとバレないよう、秘密を散りばめた文章。局に持ち込むと、万が一にも足がついてしまったら大変だ。局を通さず、怪しまれずに、確実に愛しい人へ届ける方法。
アリスの話に、なるほどと思う。そうしてまんまと配達員は騙され、その家に届けてしまうと言うわけか。
何という方法だ。単純と言うべきか、巧妙と言うべきか。エリアストは頭を押さえた。
*つづく*
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