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フルシュターゼの町編
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フルシュターゼは、リスフォニア領と隣接する、イグルーシャ領とケーシー領に接した街だ。リスフォニアとケーシーは、どちらも伯爵位、イグルーシャは、侯爵位の領主が治めていた。
ケーシーの当主は堅実であった。当主に似て真面目な、二人の息子と一人の娘がいる。
「隣のリスフォニアに先日話した通り、明日、あのディレイガルド公爵様御一行が到着するとのことだ。明後日、全員でご挨拶に行くよ」
ケーシー伯の言葉に、子どもたちの顔に緊張が走る。ゴクリと唾を呑んだ。
「彼の方たちに、挨拶以外で口を開いてはいけないよ。本当に何がご当主様の逆鱗に触れるかわからないのだから」
長男のデュオは来年結婚を控えており、次男のデュイエはデビュー一年目。末の娘メリッサは二年後にデビューだ。緊張から、おかしなことをしでかさないといいのだけれど。
先日の式典での夜会を思い出す。
何が行われたかは見ていないが、あの、凍えるような瞳が恐ろしかった。
夫人と息子たちも思い出したのだろう。顔色が悪い。
「そうよ。本当に、お父様の言うことをよく聞くのよ。ディレイガルド公爵様たちにはご挨拶だけ。決して関わってはいけないわ」
三人の子どもたちは、緊張した面持ちで頷いた。
イグルーシャの当主は、権力を振りかざす人物だった。夫人もまた、同じような人物。子どもは四人。二人の息子と二人の娘。
侯爵夫人はかなり奔放な人物だった。伯爵家の次女として生まれ、あまり厳しく躾けられなかった。本来であれば、侯爵家に嫁げるほどの器ではなかった。だが、イグルーシャ侯が一目惚れをし、その身一つで嫁いできてくれと口説き落とした。何もいらない。あなたさえいればいい。横暴な侯爵は、妻を甘やかしまくっていた。
「リスフォニアに、明日ディレイガルド公爵様たちが来る。明後日、皆で挨拶に行くぞ」
晩餐の時間、イグルーシャ侯はそう言った。
「まあ、あのディレイガルド公爵様がっ?」
夫人は頬を紅潮させる。
「ディレイガルドって、あの、筆頭公爵家のですよね」
「ご当主様が、とてもお美しいのよねっ?」
「でもとても残酷だって聞くよ」
「それでも見てみたいじゃない!」
筆頭公爵家がすぐ側に来ているのに挨拶に行かないなどあり得ない。もしかしたら、公爵の子どもが自分の子どもを見初めるかもしれない。そうなったら、筆頭公爵家の仲間入りだ。思わず顔がにやけてしまう。
「でも、大人しくしていてちょうだいよ。本当に公爵様はお美しいけれど、本当に恐ろしい方なんですからね」
いつも自由気ままな母のそんな言葉に、子どもたちは顔を見合わせた。
晩餐が終わり、いつもなら部屋に戻る子どもたち。だが、今夜は違った。長男アイルの部屋にみんなが集まる。
「あのお母様がダメだって。ね、そんなに怖いのかしら」
長女ツイーナがソファから身を乗り出すように前のめりになる。
「あの母上が大人しくなるくらいだよ。相当じゃないかな」
次男サーレンが怖々と答える。
「でも、怖いからと言うより、見とれていて大人しくなるんじゃないかな。母上、面食いだから」
アイルが笑う。
「お母様を静かにさせるほどの美貌って、凄いわね。早く見たいわ」
次女カトリーナが目を輝かせた。口々にそんな話をする。好奇心と、少しの不安。公爵家と話なんて、したこともない。同じ貴族でも、公爵、況して筆頭なんて、凄すぎて想像もつかない。
「公爵様の子どもって、お兄様と同い年なんでしょう?」
カトリーナがサーレンを見てそう言った。
「ああ。来年、一緒に学園に通うことになる。兄上も一年は一緒だよね」
「ああ、そうだな」
「お姉様は二年一緒。私も遅れて二年一緒よ。楽しみだわ」
*つづく*
ケーシーの当主は堅実であった。当主に似て真面目な、二人の息子と一人の娘がいる。
「隣のリスフォニアに先日話した通り、明日、あのディレイガルド公爵様御一行が到着するとのことだ。明後日、全員でご挨拶に行くよ」
ケーシー伯の言葉に、子どもたちの顔に緊張が走る。ゴクリと唾を呑んだ。
「彼の方たちに、挨拶以外で口を開いてはいけないよ。本当に何がご当主様の逆鱗に触れるかわからないのだから」
長男のデュオは来年結婚を控えており、次男のデュイエはデビュー一年目。末の娘メリッサは二年後にデビューだ。緊張から、おかしなことをしでかさないといいのだけれど。
先日の式典での夜会を思い出す。
何が行われたかは見ていないが、あの、凍えるような瞳が恐ろしかった。
夫人と息子たちも思い出したのだろう。顔色が悪い。
「そうよ。本当に、お父様の言うことをよく聞くのよ。ディレイガルド公爵様たちにはご挨拶だけ。決して関わってはいけないわ」
三人の子どもたちは、緊張した面持ちで頷いた。
イグルーシャの当主は、権力を振りかざす人物だった。夫人もまた、同じような人物。子どもは四人。二人の息子と二人の娘。
侯爵夫人はかなり奔放な人物だった。伯爵家の次女として生まれ、あまり厳しく躾けられなかった。本来であれば、侯爵家に嫁げるほどの器ではなかった。だが、イグルーシャ侯が一目惚れをし、その身一つで嫁いできてくれと口説き落とした。何もいらない。あなたさえいればいい。横暴な侯爵は、妻を甘やかしまくっていた。
「リスフォニアに、明日ディレイガルド公爵様たちが来る。明後日、皆で挨拶に行くぞ」
晩餐の時間、イグルーシャ侯はそう言った。
「まあ、あのディレイガルド公爵様がっ?」
夫人は頬を紅潮させる。
「ディレイガルドって、あの、筆頭公爵家のですよね」
「ご当主様が、とてもお美しいのよねっ?」
「でもとても残酷だって聞くよ」
「それでも見てみたいじゃない!」
筆頭公爵家がすぐ側に来ているのに挨拶に行かないなどあり得ない。もしかしたら、公爵の子どもが自分の子どもを見初めるかもしれない。そうなったら、筆頭公爵家の仲間入りだ。思わず顔がにやけてしまう。
「でも、大人しくしていてちょうだいよ。本当に公爵様はお美しいけれど、本当に恐ろしい方なんですからね」
いつも自由気ままな母のそんな言葉に、子どもたちは顔を見合わせた。
晩餐が終わり、いつもなら部屋に戻る子どもたち。だが、今夜は違った。長男アイルの部屋にみんなが集まる。
「あのお母様がダメだって。ね、そんなに怖いのかしら」
長女ツイーナがソファから身を乗り出すように前のめりになる。
「あの母上が大人しくなるくらいだよ。相当じゃないかな」
次男サーレンが怖々と答える。
「でも、怖いからと言うより、見とれていて大人しくなるんじゃないかな。母上、面食いだから」
アイルが笑う。
「お母様を静かにさせるほどの美貌って、凄いわね。早く見たいわ」
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「公爵様の子どもって、お兄様と同い年なんでしょう?」
カトリーナがサーレンを見てそう言った。
「ああ。来年、一緒に学園に通うことになる。兄上も一年は一緒だよね」
「ああ、そうだな」
「お姉様は二年一緒。私も遅れて二年一緒よ。楽しみだわ」
*つづく*
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