美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛

らがまふぃん

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ばんがいへん

ディレイガルド

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らがまふぃん投稿開始二周年記念 第七弾
アルファポリス様にて投稿させていただき、みなさまに支えられながら活動して二年が経ちました。いつも楽しく活動出来ているのは、優しく見守ってくださるみなさまのおかげです。これからもほそぼそ頑張って参りますので、これまで同様、温かい目で見守って、お付き合いくださいませ。

エル様が公爵家当主となってからのどこかの時系列のお話です。
残酷な一面が見えるお話ですので、ご注意ください。


*∽*∽*∽*∽*


 「も、もう、後がない、後がない、後がないんだ」
 頭を抱え、震える男が絞り出すように声を出す。
 「仕方ない、仕方ない、これしか、方法はない」
 側にいた者たちも、顔を青ざめさせながら肯定する。
 「公爵様は、奥方のためなら、何でもするお方だ。だから、大丈夫。何とかなる。大丈夫、大丈夫だ。何とか、何とかしなくては、我が家は、我が家は、破滅なんだっ」

 アリスを攫って、身代金を手に入れなくては。


………
……



 「貴様ら如きがディレイガルド筆頭公爵家に何か出来ると思ったか」
 「愚かな」
 「金が必要ならば、おまえたちに出来ることは、乞うことだった」
 「必要な金に値する自身の価値を示し、ただひたすらに乞うことが最善の、いや、唯一の生き残る道だった」
 「対価がないようであれば、おまえは、おまえたちは、ただ沈むだけ」
 「ただ沈んでいけばいいものを。最も愚かな選択をするとは」
 ディレイガルドの護衛たちが、口々に男爵たちにそう言った。
 男爵家の家族がサロンに集まっていると、突然やって来た護衛たちにより、満身創痍にされた男爵家の面々。あまりに突然のことに、抵抗することなど出来はしなかった。その中で、男爵だけは、こんなことをされる謂われはないと、抗議の声をあげた。
 「い、いくら、公爵家とは言え、何たる横暴っ。私たちが、何をしたと言うんだ!なにも、何もしていないではないかあっ!」
 床に転がっていた上体を何とか起き上がらせようと藻掻きながら、口から血を飛ばして叫ぶ。
 「計画」
 護衛たちの制裁を、黙ってただ見ていたエリアストが口を開くと、護衛たちが道を空ける。
 「え?」
 「昨日の夜だ」
 男爵家の面々は、ビクリと体を揺らして驚愕の視線を向ける。
 カツカツと硬質な音を立てて、エリアストは男爵の側に立った。
 「計画を、立てただろう」
 足下に転がる男爵たちに、瀑布のような威圧を浴びせる。男爵たちは呼吸すらもままならない。
 「あ、は、あ、ぃや」
 「我が妻を攫い、どうするつもりだった」
 何故。何故、誰にも、家族以外話していない計画を、どのように知り得たというのか。家族だって、計画の危険性は重々承知している。他言などするはずもない。実行するには、実行させる者を、細心の注意を払って決めなくてはならないのだ。
 「あ、あぅ、あぅ」
 わからないことだらけで言葉が出て来ない。
 何故、何故、何故。
 頭に浮かぶのは、それだけ。
 「さっさと答えろ。同じことを何度も言わせるな」
 スラリ
 抜き身の剣が、陽を反射した。


………
……



 「エルシィ、欲しいものは見つかったか」
 本のページをパラパラとめくっていた背後から、愛しい人の声がした。
 「まあ、エル様。本日のお仕事、早く終われたのですね」
 振り返り、嬉しさに顔を綻ばせるアリスが、弾んだ声でそう言った。
 「ああ。こうして本屋ここまで迎えに来てしまった」
 アリスの行動予定はもちろん把握済み。さらに、護衛たちからアリスの現在位置を逐一報告させている。方法として、護衛たちは一定間隔で随所にいるのだが、アリス直属の護衛から、一番近い場所にいる護衛に合図を送る。随所にいる護衛たちは、常に双眼鏡で周囲を見守っているので、合図を確認すると、その護衛はまた別の護衛へと合図を送る。合図は、エリアストのいる場所まで届く。王都にいれば、遅くとも数分の後には、エリアストはアリスの居場所を把握出来るというわけだ。
 「ふふ、嬉しいですわ、エル様。丁度見繕い終わりましたの」
 持っていた本を閉じると、購入予定の本の上に重ねた。
 「そうか、では行こう、エルシィ」
 四冊の本を手に、もう片方の手でアリスの腰を抱き寄せ、額にくちづけを落とす。
 偶然その場に居合わせた者たちは、顔を真っ赤に染め、声もなくただ崩れ落ちていた。
 カウンターでサインを済ませ、馬車に乗り込むと、アリスが珍しく言いづらそうに、躊躇いがちに声をかけた。
 「あの、エル様」
 「どうした、エルシィ」
 「あの、ですね、少々噂のカフェが、ございまして、その」
 顔を赤くし、俯きがちにもにょもにょと話をするアリス。
 エリアストの仕事が折角早く終わったのだ。エリアストがこんなに早くから空いていることは、なかなかない。少しでも長く二人きりでいたい思いと、二人でデートをという気持ちとのせめぎ合いなのだろう。
 アリスはエリアストと一緒ではない限り、どんな店にも寄ることをしない。今日のように、自身で見てからではないと購入出来ないようなものでもない限り。だから、そのカフェももちろん、行ったことはない。
 何より、“初めて”は、すべてエリアストと、と決めている。
 「たまには違う雰囲気の中、エルシィと茶を楽しむのもいいな」
 もじもじと動かしていたアリスの手を取りくちづける。
 「デートをしよう、エルシィ」
 アリスは、満面の笑みで返事をした。


 馴染みのないカフェのため、エリアストに免疫のない店員たちが軒並み倒れ、結局噂のカフェでのデートはお預けとなった。代わりに、アリスの侍女ルタがそのカフェでケーキをいくつか購入し、お家でまったりお茶を二人、楽しんだ。
 幸せに微笑むアリスを見て、より幸せを感じるエリアストだった。


………
……



 “男爵家、火事により焼失。逃げ遅れた一家全員焼死。負債により使用人等雇う余裕がなかったため、被害は一家のみ。”
 そんな見出しが新聞を飾ったのは、翌日のことだった。

 世界中に耳目を持つディレイガルド。自国内では、小さな動きすら捉える。
 怪しい噂のある家や、金にまつわる話のある家、良くも悪くも噂のある家は、真偽を確かめるために、ディレイガルドは動く。すべてはアリスを守るため。
 この男爵家、かなり黒い貴族に騙され、領地を手放しても爵位を売っても、どう足掻いても返すことの出来ない負債を背負うこととなった。それ故、何を画策するかわからない。影を忍ばせ見張っていれば、あり得ないことを口走り始めた。なんと、アリスを攫って身代金を要求しようとしたのだ。通常であれば、絶対に成功しないとわかっただろう。しかし、追い詰められた人間の思考とは、実に不可思議なものなのだ。だからこそ、エリアストは噂の調査をさせる。どんな小さな悪意も、アリスに届かないように。
 そしてかなり黒い貴族、子爵家も、これをきっかけに潰すことは決定している。今まで放置していたのは、ディレイガルドに関わりがなかったからだ。必要悪として存在させていたに過ぎない。
 しかし、子爵家コイツのせいで、男爵家がアリスに手を出そうとしたのだ。今後、同じことが起こる可能性を生み出してしまった。
 この国で悪事を働くにあたって、とある秩序が必要である。追い詰める側であっても、追い詰められる側を一線を守らなくてはならない。追い詰められる側の、ギリギリを見定められなくてはならないのだ。
 それが出来ないと、消える。
 だから今回、必要悪がひとつなくなることは、仕方がないことだった。


 アリスとの時間を、何人なんぴとたりとも邪魔などさせはしない。



*おしまい*

らがまふぃん活動二周年記念、第七弾。
いかがでしたか。
過剰なまでのアリスへの防衛。エル様がアリスを失うことを恐れる裏返しのようなものなのでしょう。
さて、
第一弾 R6.10/29 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 公開中
第二弾 R6.10/30 あなたは一体、誰ですか? 公開中
第三弾 R6.10/31 自分がされて嫌なことは、人にしてはいけません。と、言うことは、だ。 公開中
第四弾 R6.11/1 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 公開中
第五弾 R6.11/2 精霊の使い?いいえ、違います。 公開中
第六弾 R6.11/3 では、復讐するか 公開中
第七弾 R6.11/4 美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛 本作
以上のスケジュールでお届けして参りました。
お時間の都合のつく方は、是非のぞいていただけると嬉しいです。
これにてらがまふぃん活動二周年記念は終了となります。
気まぐれにいろいろと作品を投稿して参りますので、これからも、どうぞよろしくお願いいたします。R6.11/4
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