乙女ゲームに転生したので、推しの悲恋EDを回避します〜愛され令嬢は逆ハーはお断りです!

神城葵

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本編

魔性の姫君、本領発揮。

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「ところで、エージュ。今日はどんな理由で王宮に?」

 ラウエンシュタイン公爵家の家紋入りの馬車なので、王宮のかなり奥まで乗り入れられる。その間に、私はエージュの予定を訊いてみた。

「目的は複数だけれど、名目はひとつね。あなたが神竜召喚を行うと聞いたわたくしは、心身に負担の激しい召喚魔法を止めたくて、大神官様にお会いしに行くの」
「目的は?」
「ひとつは、オリヴィエの排除ね。表舞台から消えてもらいたいわ。あなたの未来視を疑わせるような言動をされると、予定が立てにくくて困るの。わたくしの大好きな誰かさんは、勝手に予定を変えてしまうし?」

 思わず、目が泳いだ。エージュは声を立てて笑いながら、冗談よと言ってくれた。でも、予定を変えたことは反省しています。

「それから、もうひとつ。リヒト殿下が、わたくしの為にどこまでなら行動なさってくれるかを測りたいの」
「かなりのことを、余裕でやってくれそうよ……」

 手紙どころか、エージュ自身が来ているとなったら、確実にあの王太子殿下はまた神殿に乗り込んでくる。大神官様には申し訳ない。

「あとは、そうね……シルヴィスの動きを知りたいわ。彼も、あなたの未来視を疑問に思っているのでしょう?」
「うん。リヒト殿下の手前、はっきりとは言わなかったけど」
「……本音を引きずり出すのは、少し手こずりそうね」

 エージュの溜息と同時に、馬車は許された場所に到着した。ここからは徒歩です。貴族の令嬢でも、結構運動するものね。




 神殿に着いた私とエージュは、昨日とは違う部屋に通された。エージュが一緒だからか、おそらくは王家か大公家の方が使うような居室だ。既にエージュは演技に入っていて、私にしがみついている。しかしその瞳は、油断なく周囲を窺う猛禽類の目である。

「お待たせ致しましたな、アレクシア姫。――今日は、エルウィージュ姫もご一緒か」

 大神官様が、昨日と変わらず美しい威厳ある佇まいで、部屋に入ってきた。一挙手一投足まで、気品に満ちている。

「ご案内をいただいたわけでもありませんのに、申し訳ございません、大神官様。……エルウィージュ・フルールと申します」

 か細く震えた声で名乗り、エージュは大神官様に一礼した。家名を名乗らないのは、バシュラール侯爵への配慮だ。

「エルウィージュ姫。御身は王家の御方。わしなどに礼をなさいますな」
「いいえ。大神官様こそ、王家の血を受け継ぐ御方ですのに」
「して、姫。今日は如何なされたか?」

 大神官様は、言葉を飾ることはしない。単刀直入に問いかけ、問われたエージュは、青ざめた表情で縋るように大神官様を見た。……演技派だわ……。

「アリーが、神竜召喚を行うと……その為に召喚魔法を習うのだと聞いて。わたくし、わたくし……耐えられません」
「姫?」
「どうして、神官様ではいけないのでしょう? アリーは教えてくれません、神竜召喚に成功する神官様がいらっしゃると、そう未来視したと教えてくれましたのに……」

 きゅっと口唇を噛んで俯いたエージュに、大神官様も困惑の視線を私に向けた。私は、黙って首を振る――その時。

「大叔父上! エルウィージュが来ていると……エルウィージュ!」

 図ったようなタイミングで、リヒト殿下が駆け込んで来た。さすがシスコン、妹の行動を見張っていると踏んだ私達の予測は正しかったわ。昨夜、「予想通りに動いてくれるなら、今後は、リヒト殿下の動向も計画に組み込めるわね」と、エージュは微笑んでいた。
 リヒト殿下に少し遅れて、シルヴィスも到着。予想に違わぬ展開に、私は内心でほくそ笑む。エージュもきっと笑っている。

「……兄上様……」

 怯えたように私の後ろに隠れた後、エージュは、恐る恐るリヒト殿下に呼びかけた。

「……! そうだ、エルウィージュ! 君の兄だ!」

 怯えつつも兄と呼ばれたことで、感極まっているらしい。さすがエージュ、恥じらいと慕わしさを滲ませた「兄上様」は最強だ。

「兄上様、どうか、アリーを止めて下さい。神竜召喚など……」
「エルウィージュ……」

 昨日の流れを知っているだけに、リヒト殿下も簡単には頷けない。どうしよう、というように、シルヴィスを振り返る。

「……アレクシア姫が言い出したことです、エルウィージュ様。止めるなら、姫を止めるがよろしい」
「シルヴィ、そういう言い方は」

 親友兼従兄のきつい口調を咎めかけたリヒト殿下は、次の瞬間、この上なく狼狽した。

「エルウィージュ!?」

 エージュが、はらはらと真珠のような涙を零し、声もなく泣いたからだ。……すごい、その泣き芸だけで女優やれるわよ、エージュ。

「何度も……止めました。でも、アリーは……教えて下さい、兄上様。昨日、何があったのですか? アリーは、神竜召喚ができる神官様が視えたと言っていたのに、何故、アリー自身が召喚魔法を使わねばならぬのですか……?」
「……アレクシア。昨日のことは……?」

 話したのかと言外に問うリヒト殿下に、私は力なく首を振った。

「私の意志です。何度も、そう言いました。事実ですから」
「アレクシア……」

 私とエージュを交互に見て、どうしたらいいのかと思いあぐねているリヒト殿下の後ろで、シルヴィスが少しだけ私を見直したという表情になった。昨日のことを、エージュに告げ口していないのかという評価だ。しかし申し訳ない、とっくにチクってます。

「エージュ。何度も言ったでしょう、私の意志なの。私自身が神竜を召喚したいのよ」
「嘘よ。アリーは争いごとが嫌いだわ。そんなあなたが、神竜を召喚して、戦場で使役するなんて、できるはずがないわ!」
「それ、は……」

 戦場に出るのは想定外だったので、私はごく自然に言葉に詰まる。エージュったら、これも計算して、私に神竜召喚したら何をしなくてはいけないかを教えなかったわね。いや、ゲームでそういうシーンがなかったものだから、考えつかなかった私も馬鹿なんだけど。

「争いごとが嫌いなアリー、だから、わたくしと仲良くしてくれたのはあなただけ。他の令嬢方がわたくしを責める時も、あなただけは庇ってくれた」

 そんな事実はない。エージュによる捏造です。

 だけど、特定の令嬢の名前を出していないので、名誉毀損にはならないと思う。そして、リヒト殿下が「そんなに前から妹を守ってくれていたのか」という顔になったので、よしとしよう。現状として、リヒト殿下は味方につけておきたい。

「そんなあなたが、神竜召喚だなんて……兄上様が教えて下さらないなら、シルヴィス様。大神官様。どうか……」

 そう言いながら膝を折ろうとしたエージュを、私は慌てて止めた。リヒト殿下は、王女である妹が、拝跪して嘆願しかねない様に動揺して叫んだ。

「オリヴィエを呼べ! あの馬鹿の暴言のせいで、エルウィージュが膝を折るなど私は認めない!」
「リヒト、落ち着け。……大神官様」
「それがよろしかろうな」

 男性三人の意見が一致したところで、私はエージュを抱き締めた。

「私の為に、そんなことしないで。エージュ、約束したわ。私はあなたを守るの。……あなたが私を守るのではないわ、私があなたを守るのよ」
「嫌よ。わたくしだって、あなたを守りたい。……その、オリヴィエという方が、アリーを傷つけたのですか、兄上様」

 泣きそうな声で私に応えると、エージュは薄い水色の瞳を異母兄に向けた。澄んだその視線を受け、リヒト殿下が頷く。

「……アレクシアの未来視を、作ったものではないかと言ったのだ」
「…………ひどい」
「君の出生のことや、自殺未遂も……君と謀ったなら可能だと」
「……そんなことをして、わたくしとアリーに何の利がありますの」
「アレクシア姫は、リヒトの妃候補を減らせる。あなたは、王女としての身分を得る」

 シルヴィスの言葉に、エージュは失笑した。あ、今のは本気の笑いだ。

「愚かしいこと。シルヴィス様は、そんなことを信じておられますの?」
「……いや、そういうわけでは……」
「アリーは、権勢欲などありません。わたくしも、王女として遇されるより、尼僧院で過ごしたかった」
「エージュ」
「本当のことよ。……眼差しを交わしただけで、籠絡したと言われる。一言二言話しただけで、恋に落としたと言われる。――母と同様に、ふしだらな女だと言われる」
「エルウィージュ!」

 それ以上自分を貶めるなと、リヒト殿下が叫んだ。私は、エージュの華奢な体を抱き締める。

「エージュ、そんな悲しいことを言わないで。きっと、美しさだけでなく、優しくて臆病なあなたを愛して下さる方が現れるわ」

 そんな人が現れても現れなくても、エージュはカインに嫁いでローゼンヴァルト宮に行く気満々だけど。

「アレクシアの言う通りだ。エルウィージュ、私の妹。君を大切にしてくれる男が現れるまで、私が君を守る」

 いらないわよ、とエージュが小さく毒づいた。聞こえたらどうするんだと、私は、彼女を抱く腕に力を込めて牽制しておく。

「……兄上様……」

 演技に戻って、エージュは潤んだ瞳でリヒト殿下を見つめた。これ、エージュが上目遣いでやると、破壊力抜群です。被験者は私とお父様とお母様とシェリル。全滅でした。

「オリヴィエ・ステファニアス、お召しにより――」

 このタイミングで参上するオリヴィエは、運に見放されているとしか言えない。
 入室したオリヴィエは、室内にいる、見知らぬ高貴な少女――エージュに、呆然として突っ立った。
 その様子で私は確信した。こいつ、今、エージュに堕ちた。
 エージュもピンと来たらしく、私達は咄嗟に作戦変更した。

「……この方? わたくしとアリーが謀って、皆様を誑かしたとおっしゃったのは」
「そうだ」

 空気を読まずに頷くリヒト殿下。ありがとうございます、私が頷いてたら、オリヴィエの逆恨みを買うところだったわ。

「……アリーは……アリーは、魔力を削って未来視をしているのに。わたくしの為に、完全回復魔法まで使ってくれたのに。それすら、演技だとおっしゃるの」

 実際、演技ではある。魔力を削ったのは、回復魔法を発動させた時だけだし。

「僕、は……」
「……そのせいで、アリーが召喚魔法を……! オリヴィエ様はアリーに何の恨みがおありなの」

 オリヴィエは、昨日の高飛車な態度はどこへやら、肩を落として俯いた。恋ってすごい。

「アリーに何かあったら、わたくし、わたくし……!」

 そんなことは考えたくもないと言うように、エージュは再び泣き出した。上手い。

「泣かないで、エージュ。大丈夫よ、魔力は輝石に貯めてあるわ。召喚魔法は難しいものだけれど、国の為だもの。私、大丈夫だから」
「アリー……」

 うるうるした瞳で私を見つめるエージュ。私が男だったら、完全に恋人の愁嘆場だ。

「オリヴィエ様やシルヴィス様が、私の未来視を信じられないのも、仕方ないわ。私に視えるのは、近しい人達の未来と、国に関わることだけなのだもの。信じていただけなくてもいいの。エージュ、あなたさえ信じてくれたら、私はそれでいい。あなたを守れたから、もう未来視なんてできなくてもいいの」
「アリー……!」

 私の薄い胸に顔を埋めて泣きながら(悲しいことに、埋めるほどはボリュームがない)、エージュはリヒト殿下に訴えた。

「召喚魔法を、わたくしが使えればいいのに! そうしたら、あなたを守れるのに……わたくしは、何と無力なの!」

 エージュの嘆きに、オリヴィエが反応した。

「……僕がやります」
「オリヴィエ?」

 空気を読んで下さっていた大神官様が、どうしたのだと言うようにオリヴィエを呼ぶ。やだなー、大神官様も演技派だわー。オリヴィエがエージュに一目惚れしたこと、リヒト殿下以外は気づいてます。

「僕の迂闊な発言で、アレクシア姫を苦境に立たせ、エルウィージュ姫をこのように嘆かせている。謝罪というわけではありませんが、アレクシア姫は、僕が神竜召喚したことを未来視したとおっしゃった。ならば、僕が召喚します。――それでお許し下さいとは言いませんが、どうか、お心を静めて下さい」

 俺様系のオリヴィエが、この殊勝な物言い。笑える。しかし笑うわけにはいかないので、私はドレスの中で、自分の右足の甲を、左足のハイヒールの踵で踏みつけた。

「……本当に……?」

 震える声で問いかけるエージュ。笑いを堪えているので、顔は私の胸に埋めたままだ。この手はそう何度も使えないから、顔を上げなさいってば。

「はい。アレクシア姫がそれをお許し下さるなら……ですが」
「アレクシア。オリヴィエにやらせてはどうだろう。君自身が学ぶことに問題はないが……」
「……わかりました。では、オリヴィエ様にお願い致します。ですけれど、私も召喚魔法を学びます」
「アリー」

 ぱっと顔を上げ、エージュが私を咎める。これは、本気か演技か、ちょっとわからない。だから私は、正直に言った。

「……輝石を託せる方かどうか、見極めたいの」

 私の言葉に、エージュは仕方なさそうに頷いてみせた。そして、オリヴィエにさらりと告げた。

「アリーの信頼を……裏切らないで下さいませ」
「はい、エルウィージュ姫」
「兄上様、シルヴィス様も……どうか、アリーが無茶をしないように気にかけて下さいませ。アリーに何かあったら、わたくし、生きていられない」
「エルウィージュ……!」

 友情に感動しているリヒト殿下の後ろで、シルヴィスが「大げさな……」と言いたげな顔で、それでも頷いてはくれた。私達は、あくまで友情に篤いだけです。異常さでは、あなたのリヒト殿下への執着には負けるわよ。

「……信じておりますわ」

 にっこり微笑ったエージュに、リヒト殿下とオリヴィエは魅惑チャームの魔法でもかけられたかのように陶然としている。シルヴィスだけは、面白くなさそうだ。
 私は、シルヴィスに微笑みかけた。エージュほどではないけど、アレクシアも美少女なのである。

「シルヴィス様。エージュは心配性なのです。心配をかける私がいけないのですけれど」
「いや……エルウィージュ様の気持ちは、わからなくもない。見ていて危なっかしい者が身近にいると、心配性になるものだからな」
「まあ。王太子殿下のことを、そんな風におっしゃるなんて」
「私は、リヒトのことだとは言っていない」

 シルヴィスはそう言うと、私に少しだけ心を許したように苦笑した。
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