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本編
出来すぎなのよ。
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シルハーク軍を退けて、和平の交渉は政治家の仕事だとばかりに、私達は王都に戻った。
「役に立たなかった」と凹んでいるローランを励まし、カインやオリヴィエ、アトゥール殿下に国王陛下への報告をお願いして(仮想敵と認識されているなら近づきたくない)、私はやっと屋敷に帰り着いた。普段はロベルト達が出迎えてくれるけれど、今日ばかりはお父様とお母様の姿がある。
お母様は、泣きながら私を抱き締めた。お父様は、ローランにお礼を言ってるけど、ローランはどう答えていいかわからないらしく、私のコートの後ろリボンをきゅっと握る。
「お父様、お母様。心配かけてごめんなさい」
お母様は言葉にならないようで、ずっと泣いている。見かねたお父様が、今日はゆっくり休みなさいと言ってくれたので、お母様をぎゅっと抱き締めてから、私は自分の部屋に向かった。
「アレクシア」
「何?」
「私は、役に立たなかった。……もう、いらない?」
「どうしてそうなるの」
螺旋階段をゆっくり昇っていると、ローランがおずおず問いかけてきた。その内容に私が呆れると、彼は怯えたように長身を竦ませた。
「ごめんなさい、驚いただけよ。怒ってないわ。だから怖がらないで」
「召喚主を守れないものなど……」
「あなたと私は、召喚契約で繋がっているのではないと思っていたけれど、それは私の思い上がり?」
「……違う。私は、召喚されたからではなく、アレクシアだから守りたいと思う」
でも、できなかったからと、しょんぼりしているローランの頭を撫でた。私の方が一段上にいるのに、それでも手を伸ばさないと届かないわ……。
「守ってくれたわ」
「シルハークを退けたのは、アレクシアとシルハークの王だ」
これ以上は、部屋に入らないと話せない。使用人達の行き来は今はないけれど、つい漏れ聞こえたら洒落にならない。
「ローラン」
手を引いて、私の部屋に滑り込む。同時に、防音の魔法を唱えた。
よくわかっていないローランは、素直に私についてきてくれた。来客用の椅子に座らせて、彼の好きな甘いものがないかと探したら、チョコレート菓子とクッキーが用意されていた。リリーナの仕事ね、ありがとう。
「チョコレートよ。好きでしょ?」
「好きだけれど」
飲み物がないので、チョコレートを勧めた。後でお茶を持ってきてもらうように頼んで、その時にクッキーをいただこうかな。
「シルハークが退いてくれたのは、その理由を作れたからよ。リーシュもレンファンも、軍を退きたいと思っていた。それができなかったのは、桜華公主がいたから」
――新王即位で国内もバタついている時に遠征なんて、馬鹿としか言えません。
言い切ったレンファンは、「それをこの馬鹿王は」とリーシュに冷たい視線を向けていた。とはいえ、リーシュにその時の記憶はないので、あまり責めてはいなかったけど。
「その桜華公主を完全に人にしてくれたのは、あなたよ。あなたのおかげで、リーシュは軍を退かせる口実ができたの」
「……それも、アレクシアとシルハークの王がそう算段したからだ。私は、ただ、秘術を完成させただけで」
「その、秘術を完成させることが、私達にはできなかったの。あなたにしか、できなかったのよ」
竜型の時はあんなにも威風堂々としているのに、ローランは基本的に自信が薄い。
「……人型に戻れぬくらいに、魔力を解放することもできずに捕えられた」
「そのおかげで、余計な戦いをせずに、シルハークと和平交渉できることになったわ。ローラン。私、結果がすべてだと言う気はないけど、失敗だけではなく、その先にあるものもちゃんと見て。自分を、認めてあげて」
「…………」
俯いて、チョコレートの焼き菓子をもそもそと食べているローランの瞳は見えない。
「できなかったことを考えるのも大切だし、そういうローランだから好きなんだけど……ねえ。私、あなたの天幕に行けたのは、あなたが「変化」の魔法を見抜いてくれると信じていたからよ?」
「それは……私は、真実視の力があるから……」
「そのこと、私は知らなかったわ」
あ、と呟いてローランは顔を上げた。――もう、また口の周りがチョコだらけ。
ハンカチで拭ってあげると、ごしごしと手の甲で擦る。
「駄目よ、チョコが広がっちゃうでしょ。大人しくなさい」
私の言葉にこくんと頷く様は、小さな子供みたいでとても可愛い。
「ごめんなさい。真実視のこと、アレクシアに言っていなかった。話したつもりになっていた」
「いいの」
私がそう言うと、ローランは指を折って数え出した。
「……あと、遠方視と過去視、それから異界移もできる」
「遠方視と過去視は何となくわかるけど、異界移って?」
「異なる世界のモノを、ここに移せる。召喚とは違って、意志のないモノを。ただ、私がそれについて知らないと移せない」
「いろんなことができるのね」
「神竜だから」
少しだけ微笑んだローランの髪を、私はできるだけ優しく梳いた。
「そのこと、エージュ以外には秘密よ、ローラン」
「うん。王の姫はアレクシアの為に何でもするけれど、王は違う。自分の為に、アレクシアに何でもさせるつもりだ」
国王陛下と宰相閣下は、シルハークの侵攻撃退と引き換えに、ローランと私を共倒れさせたかった。だけど、そうはならずに、私達は無事に帰ってきた。――どう出るだろう?
エージュに会って、相談したい。
だけど、エージュは既にこの屋敷にはいない。私達が前線に出ている間に、王宮からお召しがあって、内々にではあるけれど「王女」として迎えられた。シルハークとの和平が正式に成立したら、その後はエージュのお披露目だろう。
「……王の姫に、会いたい?」
ローランは、窺うように私に問いかけてきた。何もできなかったという無力感からは、脱してくれつつあるらしい。
「うん。会いたい」
「アレクシアは、本当に王の姫が好きだ」
そこに微かな嫉妬を感じて、私は笑った。ローランを好きという気持ちと、エージュへの気持ちは違う。似てはいるけれど、これは恋じゃない。
「そうね。ローランもエージュも、特別だもの」
「遠方視で、王の姫の様子を見る。私が空間を繋げば、会わせてあげられると思う」
「……覗く前に、エージュに声だけ届けられる?」
「やったことはないけれど」
「試してみて。着替えていたりしたら困るもの」
想像したのか、かあっと真っ赤になったローランも、ちゃんと男の人なんだなあと思いました。
そして、ローランが神竜の言葉で韻を踏んだ旋律を紡ぐ。空間がぼやけて、私の部屋ではない場所が写る。……壁?
「とりあえず、繋いだ。……王の姫。聞こえる?」
「……神竜王陛下?」
どうなっているの?と言いたげなエージュの声がして、私は思わず身を乗り出した。
「エージュ! 今、お話しできる?」
「アリー!?」
私の名を呼ぶと、続けて「できるわ!」とエージュが叫び――空間が、エージュの姿を映した。さらさらの銀髪、薄い水色の瞳、真白の肌。光より美しい女神の姿は、私の親友のものだ。
「エージュ」
「どうなっているの? 神竜王陛下の魔法?」
「ローランの特殊技能みたい。遠方が視えるんですって。だから、繋いでもらったの。……エージュ、そこには誰もいない?」
「ええ。少し待って、防音の魔法を紡ぐから」
そう答えると、エージュは防音魔法を発動させた。ローランが頷いたので、効果は問題ないはずだ。
「シルハークを退かせたのはあなただと、カイン達が言っていたようだけれど。……何をやらかしたの?」
ひどい言われようです。
「私は、王命を果たしただけで」
「シルハークの王を誑し込んでいた」
「まあ」
「ローラン!?」
「シルハークの王は、アレクシアに好意を持っている。だから私は間違っていないし嘘もついていない」
拗ねた口調でそう言うと、ローランは私にくっついてきた。お気に入りの、私の巻き毛をくるくると指に絡めている。
「アリーったら。シルハーク王から婚姻の申し込みが来たらどうするの」
「来ません。リーシュは、子供には手を出さないって言ったもの」
「……あら。名前で呼ぶ仲なのね」
意味深に呟いて、エージュはにっこり笑った。悪役的な笑みで。
「アリー。女の子はね、いつまでも女の子ではないの。すぐに、簡単に、女になるのよ」
私に向けて言いながら、何故か視線はローランに注がれている。ぴくっと震えたローランは、私の巻き毛では足りないのか、私の頭ごと抱え込もうとする。体勢的に苦しいけど、ローランに抱き締められるという僥倖は拒めない。
「……エージュ。ローランをからかうのはやめて」
「あながち、冗談でもないのだけど。とりあえず、何をどうやったのか、話してちょうだい」
私は、エージュに一連の流れを説明した。時折エージュから確認のような質問が挟まれるので、都度都度思い出しながら答え終わった時。
エージュは、深く息をついた。
「……エージュ?」
「シュラウス将軍は無理として……アトゥール殿下辺りが、上手く説明してくれることを願うわ」
恨めしそうに、願うように、エージュはもう一度溜息を零す。
「……私、何か失敗した?」
「いいえ。失敗はしていないわ。……ある意味、失敗だけれど。成功しすぎているのよ」
「王の姫?」
「――神竜王陛下のご助力はあったとはいえ、あなた個人がシルハークを退かせたことになっていると、わかっていないの?」
「え?」
「わかっていないのね……。護衛もなしで敵陣に赴いて、相手を退却させた。ええ、それは事実よ。――でもね、アリー。あなたの行動は、結果的に救国の英雄と祭り上げられるか、敵と内通したと捏造されるか、どちらかになるということよ」
早急に対策を取らなくてはいけないと、エージュはひどく真剣な顔で言い、リヒト殿下とシルヴィス、カイン、オリヴィエ、そしてアトゥール殿下をここに同席させることを提案し――ローランは固い表情で頷いた。
――私、そこまで、国王陛下に疎まれているの……?
「違うわ、アリー。恐れられているのよ」
私の心を読んだように告げたエージュの声も、ひどく緊張していた。
「役に立たなかった」と凹んでいるローランを励まし、カインやオリヴィエ、アトゥール殿下に国王陛下への報告をお願いして(仮想敵と認識されているなら近づきたくない)、私はやっと屋敷に帰り着いた。普段はロベルト達が出迎えてくれるけれど、今日ばかりはお父様とお母様の姿がある。
お母様は、泣きながら私を抱き締めた。お父様は、ローランにお礼を言ってるけど、ローランはどう答えていいかわからないらしく、私のコートの後ろリボンをきゅっと握る。
「お父様、お母様。心配かけてごめんなさい」
お母様は言葉にならないようで、ずっと泣いている。見かねたお父様が、今日はゆっくり休みなさいと言ってくれたので、お母様をぎゅっと抱き締めてから、私は自分の部屋に向かった。
「アレクシア」
「何?」
「私は、役に立たなかった。……もう、いらない?」
「どうしてそうなるの」
螺旋階段をゆっくり昇っていると、ローランがおずおず問いかけてきた。その内容に私が呆れると、彼は怯えたように長身を竦ませた。
「ごめんなさい、驚いただけよ。怒ってないわ。だから怖がらないで」
「召喚主を守れないものなど……」
「あなたと私は、召喚契約で繋がっているのではないと思っていたけれど、それは私の思い上がり?」
「……違う。私は、召喚されたからではなく、アレクシアだから守りたいと思う」
でも、できなかったからと、しょんぼりしているローランの頭を撫でた。私の方が一段上にいるのに、それでも手を伸ばさないと届かないわ……。
「守ってくれたわ」
「シルハークを退けたのは、アレクシアとシルハークの王だ」
これ以上は、部屋に入らないと話せない。使用人達の行き来は今はないけれど、つい漏れ聞こえたら洒落にならない。
「ローラン」
手を引いて、私の部屋に滑り込む。同時に、防音の魔法を唱えた。
よくわかっていないローランは、素直に私についてきてくれた。来客用の椅子に座らせて、彼の好きな甘いものがないかと探したら、チョコレート菓子とクッキーが用意されていた。リリーナの仕事ね、ありがとう。
「チョコレートよ。好きでしょ?」
「好きだけれど」
飲み物がないので、チョコレートを勧めた。後でお茶を持ってきてもらうように頼んで、その時にクッキーをいただこうかな。
「シルハークが退いてくれたのは、その理由を作れたからよ。リーシュもレンファンも、軍を退きたいと思っていた。それができなかったのは、桜華公主がいたから」
――新王即位で国内もバタついている時に遠征なんて、馬鹿としか言えません。
言い切ったレンファンは、「それをこの馬鹿王は」とリーシュに冷たい視線を向けていた。とはいえ、リーシュにその時の記憶はないので、あまり責めてはいなかったけど。
「その桜華公主を完全に人にしてくれたのは、あなたよ。あなたのおかげで、リーシュは軍を退かせる口実ができたの」
「……それも、アレクシアとシルハークの王がそう算段したからだ。私は、ただ、秘術を完成させただけで」
「その、秘術を完成させることが、私達にはできなかったの。あなたにしか、できなかったのよ」
竜型の時はあんなにも威風堂々としているのに、ローランは基本的に自信が薄い。
「……人型に戻れぬくらいに、魔力を解放することもできずに捕えられた」
「そのおかげで、余計な戦いをせずに、シルハークと和平交渉できることになったわ。ローラン。私、結果がすべてだと言う気はないけど、失敗だけではなく、その先にあるものもちゃんと見て。自分を、認めてあげて」
「…………」
俯いて、チョコレートの焼き菓子をもそもそと食べているローランの瞳は見えない。
「できなかったことを考えるのも大切だし、そういうローランだから好きなんだけど……ねえ。私、あなたの天幕に行けたのは、あなたが「変化」の魔法を見抜いてくれると信じていたからよ?」
「それは……私は、真実視の力があるから……」
「そのこと、私は知らなかったわ」
あ、と呟いてローランは顔を上げた。――もう、また口の周りがチョコだらけ。
ハンカチで拭ってあげると、ごしごしと手の甲で擦る。
「駄目よ、チョコが広がっちゃうでしょ。大人しくなさい」
私の言葉にこくんと頷く様は、小さな子供みたいでとても可愛い。
「ごめんなさい。真実視のこと、アレクシアに言っていなかった。話したつもりになっていた」
「いいの」
私がそう言うと、ローランは指を折って数え出した。
「……あと、遠方視と過去視、それから異界移もできる」
「遠方視と過去視は何となくわかるけど、異界移って?」
「異なる世界のモノを、ここに移せる。召喚とは違って、意志のないモノを。ただ、私がそれについて知らないと移せない」
「いろんなことができるのね」
「神竜だから」
少しだけ微笑んだローランの髪を、私はできるだけ優しく梳いた。
「そのこと、エージュ以外には秘密よ、ローラン」
「うん。王の姫はアレクシアの為に何でもするけれど、王は違う。自分の為に、アレクシアに何でもさせるつもりだ」
国王陛下と宰相閣下は、シルハークの侵攻撃退と引き換えに、ローランと私を共倒れさせたかった。だけど、そうはならずに、私達は無事に帰ってきた。――どう出るだろう?
エージュに会って、相談したい。
だけど、エージュは既にこの屋敷にはいない。私達が前線に出ている間に、王宮からお召しがあって、内々にではあるけれど「王女」として迎えられた。シルハークとの和平が正式に成立したら、その後はエージュのお披露目だろう。
「……王の姫に、会いたい?」
ローランは、窺うように私に問いかけてきた。何もできなかったという無力感からは、脱してくれつつあるらしい。
「うん。会いたい」
「アレクシアは、本当に王の姫が好きだ」
そこに微かな嫉妬を感じて、私は笑った。ローランを好きという気持ちと、エージュへの気持ちは違う。似てはいるけれど、これは恋じゃない。
「そうね。ローランもエージュも、特別だもの」
「遠方視で、王の姫の様子を見る。私が空間を繋げば、会わせてあげられると思う」
「……覗く前に、エージュに声だけ届けられる?」
「やったことはないけれど」
「試してみて。着替えていたりしたら困るもの」
想像したのか、かあっと真っ赤になったローランも、ちゃんと男の人なんだなあと思いました。
そして、ローランが神竜の言葉で韻を踏んだ旋律を紡ぐ。空間がぼやけて、私の部屋ではない場所が写る。……壁?
「とりあえず、繋いだ。……王の姫。聞こえる?」
「……神竜王陛下?」
どうなっているの?と言いたげなエージュの声がして、私は思わず身を乗り出した。
「エージュ! 今、お話しできる?」
「アリー!?」
私の名を呼ぶと、続けて「できるわ!」とエージュが叫び――空間が、エージュの姿を映した。さらさらの銀髪、薄い水色の瞳、真白の肌。光より美しい女神の姿は、私の親友のものだ。
「エージュ」
「どうなっているの? 神竜王陛下の魔法?」
「ローランの特殊技能みたい。遠方が視えるんですって。だから、繋いでもらったの。……エージュ、そこには誰もいない?」
「ええ。少し待って、防音の魔法を紡ぐから」
そう答えると、エージュは防音魔法を発動させた。ローランが頷いたので、効果は問題ないはずだ。
「シルハークを退かせたのはあなただと、カイン達が言っていたようだけれど。……何をやらかしたの?」
ひどい言われようです。
「私は、王命を果たしただけで」
「シルハークの王を誑し込んでいた」
「まあ」
「ローラン!?」
「シルハークの王は、アレクシアに好意を持っている。だから私は間違っていないし嘘もついていない」
拗ねた口調でそう言うと、ローランは私にくっついてきた。お気に入りの、私の巻き毛をくるくると指に絡めている。
「アリーったら。シルハーク王から婚姻の申し込みが来たらどうするの」
「来ません。リーシュは、子供には手を出さないって言ったもの」
「……あら。名前で呼ぶ仲なのね」
意味深に呟いて、エージュはにっこり笑った。悪役的な笑みで。
「アリー。女の子はね、いつまでも女の子ではないの。すぐに、簡単に、女になるのよ」
私に向けて言いながら、何故か視線はローランに注がれている。ぴくっと震えたローランは、私の巻き毛では足りないのか、私の頭ごと抱え込もうとする。体勢的に苦しいけど、ローランに抱き締められるという僥倖は拒めない。
「……エージュ。ローランをからかうのはやめて」
「あながち、冗談でもないのだけど。とりあえず、何をどうやったのか、話してちょうだい」
私は、エージュに一連の流れを説明した。時折エージュから確認のような質問が挟まれるので、都度都度思い出しながら答え終わった時。
エージュは、深く息をついた。
「……エージュ?」
「シュラウス将軍は無理として……アトゥール殿下辺りが、上手く説明してくれることを願うわ」
恨めしそうに、願うように、エージュはもう一度溜息を零す。
「……私、何か失敗した?」
「いいえ。失敗はしていないわ。……ある意味、失敗だけれど。成功しすぎているのよ」
「王の姫?」
「――神竜王陛下のご助力はあったとはいえ、あなた個人がシルハークを退かせたことになっていると、わかっていないの?」
「え?」
「わかっていないのね……。護衛もなしで敵陣に赴いて、相手を退却させた。ええ、それは事実よ。――でもね、アリー。あなたの行動は、結果的に救国の英雄と祭り上げられるか、敵と内通したと捏造されるか、どちらかになるということよ」
早急に対策を取らなくてはいけないと、エージュはひどく真剣な顔で言い、リヒト殿下とシルヴィス、カイン、オリヴィエ、そしてアトゥール殿下をここに同席させることを提案し――ローランは固い表情で頷いた。
――私、そこまで、国王陛下に疎まれているの……?
「違うわ、アリー。恐れられているのよ」
私の心を読んだように告げたエージュの声も、ひどく緊張していた。
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