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番外編~箱庭の姫君と闇の公主と光の王~
けっこう簡単。
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「どうする? やっぱり金髪にする?」
「そうねえ……できれば、いきなり銀髪が理想だけれど」
「先に銀に染めてみて、納得のいく出来でなければ金に染め直せばよかろ?」
カインは、少女三人に、完全におもちゃにされていた。救いと説明を求める視線から、リヒトはそっと、アトゥールは笑顔で逃れた。
「よーし、まず脱色! 色を抜きます。ブリーチブリーチ」
「これは、なんて書いてあるの? アリー」
「ムラなく綺麗に塗って下さい、ですって。私も染めたり脱色したことないから、説明書読まないとわからない」
「では、あなたは説明書を読んで。わたくしとアンファ様が実行するわ」
「……エルウィージュ。さすがに、あなたに他の男の髪を手入れさせるわけにはいきませんので、私がやりましょう。アンファ様も。……リヒト殿下、ご心配なく。手伝いは必要ありません」
「それはありがとうございます、殿下。肌が傷むそうですから、お気をつけて」
「あと、髪を溶かしちゃう可能性もあるから気をつけて下さい」
エルウィージュとアレクシアは、天女と天使の笑顔で、ひどいことを言った。
ローランの異界移で取り寄せた「脱色用」だの「金髪用」だのと書かれている(らしい)薬剤を駆使し、ついでに時間魔法も紡いでもらい、4時間ほどかけた結果。
カインは、明るい金髪になっていた。本人には全く見えていないが。
「……見事に金髪になったな」
「カインは3回かかってこれか。リヒトなら、1回で銀髪になりそうだな……」
「あ、銀髪にするのは手順が複雑で難しいそうです。日持ちもしないみたい」
あまりに簡単な「金髪」に唸ったリヒトとシルヴィスに、何やら「カタログ」というものを見ながら、アレクシアが補足した。
「銀は、難しいのか?」
「金髪より難易度が上みたい。まあ、カラースプレーという手もあるわ」
「それなら、妾の髪も銀になるか?」
「なると思うけど、駄目。反対」
「アレクシアは、妾の髪が好きなのか」
「懐かしい色だもの。黒髪って、見てるだけで落ち着くの」
蒼銀の髪の神竜王が切なそうに頼りなく俯き、輝く銀髪の王女が舌打ちした気がするが、考えてはいけない。
その二人に気づいていないアレクシアは、「触っていい?」と訊いて、ゆるく結った闇華の髪を指で梳いた。
「さらさらしてて綺麗ね。私は黒髪も好きだから、ヴェルスブルクの、銀髪至上主義社会は理解できないのよ。ローランが黒髪でも、エージュが黒髪でも、私は絶対好きになってるもの」
「……アレクシア様。それならば何故、俺はこのようなことに」
「百聞は一見に如かず、よ。私が知っている中で、一番髪の色が濃いのは、アンファとリーシュだけど……無理でしょ?」
「……にいさまなら、嬉々として応じて下さるとは思うぞ」
こういう、面白そうな変化は大好きなにいさまだ。蓮汎が止めても振り切って参加するだろう。
「他国の国王の髪の色を変えるのは、やりすぎです。自国の将軍なら、どうとでもできますが。……はい、カイン様。見事な金髪です。黒い瞳が違和感ありますねえ……」
アトゥールの感慨に、何故かアレクシアが深く頷いていた。
「瞳の色は、どうしましょうか。私の魔力でも、一時的に変えるくらいならできると思います。カラーコンタクトの仕組みをイメージしたら、実現できるはずですから」
アレクシアの言葉に、一同は自然とリヒトを見た。どうするかは、リヒトに一任するということだ。
「……黒を、どこまで銀に近づけられる?」
「そう、ですね……うーん……黒かあ……」
「陛下。少しこちらに」
「王の姫?」
「甘いお酒がありますの。お好きでしょう?」
「うん」
自分の魔力と相談していたらしいアレクシアは、結論を出した。
「……そうですね、半日くらいなら、私の瞳と同じ色にでき……」
「駄目だ。それなら私がやる。王太子の望む間ずっと、琥珀を維持する」
「ローラン? どうしたの?」
「……同じ色は、駄目だ、アレクシア」
この国では、自分の瞳と同じ色の宝石を贈ることは、好意の顕れである。指輪か首飾りかでやや意味は異なるが、愛を乞うことに変わりはない。相手の瞳の色を、自分と同じに変えるのは、穿った見方をすれば、究極の求愛だ。――アレクシアはわかっていないし、ローランは理解していなかったが、予測していたエルウィージュは、抜かりなくローランに説明を済ませた。
「では――そうだな、神竜王陛下。あなたとアレクシアの婚儀は少し先だ。婚約祝いの宴を、私が主催……」
「わたくしが主催致します。兄上様には、主催理由がありませんでしょう」
「……国を寿いで下さった神竜王陛下への祝い……」
「アリー。わたくしの主催でもいい? ……王太子主催より、当然格は落ちてしまうけれど……」
「エージュがいい」
「妾も協賛させてもらうかの。エルウィージュ、構わぬな?」
「ええ。シルハークに降嫁された神竜王姫と同じ祖をお持ちの神竜王陛下は、シルハーク公主のご様子を案じていらっしゃいますものね」
意味深に笑ったエルウィージュに、ローランは開けっぴろげに答えた。
「私はアレクシア以外は気にならない」
「陛下? そういうことになさって下さいませね? でないと」
「……でないと?」
「アリーはわたくしへの納采としていただいたものですから、嫁には差し上げませんわよ」
「私の婿入りでは駄目か、アレクシア」
「構いません」
「アレクシアが構わないと言うから、私は構わな……」
「陛下。婿入りにはいろいろ準備が必要ですわ。まずはラウエンシュタイン公爵ご夫妻の了承。こちらは簡単ですわね、元々アリーは一人娘ですから婿を取ることは決まっていましたもの。……ですけれど、このところの不在の間、「後継者争い」をしていた遠縁の方々を、すべて納得させるのは、とっっっても大変だと思いますの。何十人、いえ、百を超えるかもしれませんわね」
じっくりと脅しに入ったエルウィージュを止める者は、誰もいない。リヒトとシルヴィスは招待客の選定に入り、カインはアトゥールに鏡を渡されて仰天し、闇華はおろおろしているアレクシアをさりげなく牽制中だ。
「それらすべてを納得させること、わたくしが引き受けてさしあげようと思っていたのですけれど、いらぬお世話でしたかしら」
「ごめんなさい。王の姫、ごめんなさい。そなたの怒りは怖い、怒らないでほしい。……無理? 怒っている? どうしようアレクシア、私は頑張るつもりだけれど百人相手は……竜型になってもいいだろうか」
「……アリー。あなたの神竜王陛下は、わたくしですら心が痛むほど、お可愛らしいわね……」
溜息交じりに呟くと、アレクシアは「そうなの、可愛いの」とドヤっていた。その後ろで、「可愛い」と言われた神竜王陛下が再び俯いてしまったことは、闇華だけが見ていた。
「そうねえ……できれば、いきなり銀髪が理想だけれど」
「先に銀に染めてみて、納得のいく出来でなければ金に染め直せばよかろ?」
カインは、少女三人に、完全におもちゃにされていた。救いと説明を求める視線から、リヒトはそっと、アトゥールは笑顔で逃れた。
「よーし、まず脱色! 色を抜きます。ブリーチブリーチ」
「これは、なんて書いてあるの? アリー」
「ムラなく綺麗に塗って下さい、ですって。私も染めたり脱色したことないから、説明書読まないとわからない」
「では、あなたは説明書を読んで。わたくしとアンファ様が実行するわ」
「……エルウィージュ。さすがに、あなたに他の男の髪を手入れさせるわけにはいきませんので、私がやりましょう。アンファ様も。……リヒト殿下、ご心配なく。手伝いは必要ありません」
「それはありがとうございます、殿下。肌が傷むそうですから、お気をつけて」
「あと、髪を溶かしちゃう可能性もあるから気をつけて下さい」
エルウィージュとアレクシアは、天女と天使の笑顔で、ひどいことを言った。
ローランの異界移で取り寄せた「脱色用」だの「金髪用」だのと書かれている(らしい)薬剤を駆使し、ついでに時間魔法も紡いでもらい、4時間ほどかけた結果。
カインは、明るい金髪になっていた。本人には全く見えていないが。
「……見事に金髪になったな」
「カインは3回かかってこれか。リヒトなら、1回で銀髪になりそうだな……」
「あ、銀髪にするのは手順が複雑で難しいそうです。日持ちもしないみたい」
あまりに簡単な「金髪」に唸ったリヒトとシルヴィスに、何やら「カタログ」というものを見ながら、アレクシアが補足した。
「銀は、難しいのか?」
「金髪より難易度が上みたい。まあ、カラースプレーという手もあるわ」
「それなら、妾の髪も銀になるか?」
「なると思うけど、駄目。反対」
「アレクシアは、妾の髪が好きなのか」
「懐かしい色だもの。黒髪って、見てるだけで落ち着くの」
蒼銀の髪の神竜王が切なそうに頼りなく俯き、輝く銀髪の王女が舌打ちした気がするが、考えてはいけない。
その二人に気づいていないアレクシアは、「触っていい?」と訊いて、ゆるく結った闇華の髪を指で梳いた。
「さらさらしてて綺麗ね。私は黒髪も好きだから、ヴェルスブルクの、銀髪至上主義社会は理解できないのよ。ローランが黒髪でも、エージュが黒髪でも、私は絶対好きになってるもの」
「……アレクシア様。それならば何故、俺はこのようなことに」
「百聞は一見に如かず、よ。私が知っている中で、一番髪の色が濃いのは、アンファとリーシュだけど……無理でしょ?」
「……にいさまなら、嬉々として応じて下さるとは思うぞ」
こういう、面白そうな変化は大好きなにいさまだ。蓮汎が止めても振り切って参加するだろう。
「他国の国王の髪の色を変えるのは、やりすぎです。自国の将軍なら、どうとでもできますが。……はい、カイン様。見事な金髪です。黒い瞳が違和感ありますねえ……」
アトゥールの感慨に、何故かアレクシアが深く頷いていた。
「瞳の色は、どうしましょうか。私の魔力でも、一時的に変えるくらいならできると思います。カラーコンタクトの仕組みをイメージしたら、実現できるはずですから」
アレクシアの言葉に、一同は自然とリヒトを見た。どうするかは、リヒトに一任するということだ。
「……黒を、どこまで銀に近づけられる?」
「そう、ですね……うーん……黒かあ……」
「陛下。少しこちらに」
「王の姫?」
「甘いお酒がありますの。お好きでしょう?」
「うん」
自分の魔力と相談していたらしいアレクシアは、結論を出した。
「……そうですね、半日くらいなら、私の瞳と同じ色にでき……」
「駄目だ。それなら私がやる。王太子の望む間ずっと、琥珀を維持する」
「ローラン? どうしたの?」
「……同じ色は、駄目だ、アレクシア」
この国では、自分の瞳と同じ色の宝石を贈ることは、好意の顕れである。指輪か首飾りかでやや意味は異なるが、愛を乞うことに変わりはない。相手の瞳の色を、自分と同じに変えるのは、穿った見方をすれば、究極の求愛だ。――アレクシアはわかっていないし、ローランは理解していなかったが、予測していたエルウィージュは、抜かりなくローランに説明を済ませた。
「では――そうだな、神竜王陛下。あなたとアレクシアの婚儀は少し先だ。婚約祝いの宴を、私が主催……」
「わたくしが主催致します。兄上様には、主催理由がありませんでしょう」
「……国を寿いで下さった神竜王陛下への祝い……」
「アリー。わたくしの主催でもいい? ……王太子主催より、当然格は落ちてしまうけれど……」
「エージュがいい」
「妾も協賛させてもらうかの。エルウィージュ、構わぬな?」
「ええ。シルハークに降嫁された神竜王姫と同じ祖をお持ちの神竜王陛下は、シルハーク公主のご様子を案じていらっしゃいますものね」
意味深に笑ったエルウィージュに、ローランは開けっぴろげに答えた。
「私はアレクシア以外は気にならない」
「陛下? そういうことになさって下さいませね? でないと」
「……でないと?」
「アリーはわたくしへの納采としていただいたものですから、嫁には差し上げませんわよ」
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「構いません」
「アレクシアが構わないと言うから、私は構わな……」
「陛下。婿入りにはいろいろ準備が必要ですわ。まずはラウエンシュタイン公爵ご夫妻の了承。こちらは簡単ですわね、元々アリーは一人娘ですから婿を取ることは決まっていましたもの。……ですけれど、このところの不在の間、「後継者争い」をしていた遠縁の方々を、すべて納得させるのは、とっっっても大変だと思いますの。何十人、いえ、百を超えるかもしれませんわね」
じっくりと脅しに入ったエルウィージュを止める者は、誰もいない。リヒトとシルヴィスは招待客の選定に入り、カインはアトゥールに鏡を渡されて仰天し、闇華はおろおろしているアレクシアをさりげなく牽制中だ。
「それらすべてを納得させること、わたくしが引き受けてさしあげようと思っていたのですけれど、いらぬお世話でしたかしら」
「ごめんなさい。王の姫、ごめんなさい。そなたの怒りは怖い、怒らないでほしい。……無理? 怒っている? どうしようアレクシア、私は頑張るつもりだけれど百人相手は……竜型になってもいいだろうか」
「……アリー。あなたの神竜王陛下は、わたくしですら心が痛むほど、お可愛らしいわね……」
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