転生したら王族だった

みみっく

文字の大きさ
199 / 223
第三章 ‐ 戦争の影

199話 静かなる戦いと、彼の告白

しおりを挟む
 セリーナの瞳が、ぴくっと揺れる。

「……問題ないですわ。」

 その声は震えず、むしろ、誇りに満ちていた。

「強大な強さを持ち、人望もありますし……爵位くらい、お父様にお願いすれば何の問題もありませんし。わたしの領地を、レイニー様に差し上げますし。」

 アリシアが、初めて目を見開いた。

(まさか……そこまでの覚悟が……!?)

「……セリーナ」

 俺が口を開きかけた瞬間、セリーナの瞳がうるりと揺れた。

「わたし……レイニー様のことが、本当に好きなんですの。だから……誰にも、譲りたくありませんわ。」

 その目には、誇り高き王女の意地と、少女としての純粋な想いが同居していた。

 アリシアは、それをしばし無言で見つめ――そして、静かに目を伏せた。

「……ふふ。素直に気持ちを言えるあなたは、やはりお強い。王女として、ではなく、ひとりの少女として……わたしも、負けられません。」

 そうして、再びアリシアは顔を上げる。

「レイニーくん。あなたは……どうしたいの?」

 今、俺の両手には、またしても未来の運命が握られたような気がした。

 アリシアの質問に答えられず、俺はぐるぐると頭を巡らせた。

(……フィオナは、王女だけど色んな仕事してるんだよな。王都でも、書類の山に囲まれてたし、訓練にも出てる。
……あれ? じゃあセリーナって……?)

 ふとした疑問が、口からぽろり。

「セリーナって、忙しくないの? 王女って色々任務とか……」

 セリーナはぱちりと瞬きをして、にっこり笑った。

「わたし、末っ子の女の子ですよ? そのようなものは、上のお兄さま三人がすべてこなしていますわ。
わたしの役目は――王国の強みになる人との結婚ですっ!」

 ……うん。

 自爆ですねこれは!!!

「あ、あははは……」
 俺の笑い声が虚しく空に消える。

(これって、自分で「わたし、政治も戦争も知らないから、強い人と結婚しま~す♪」って宣言しちゃってるよな!?)

 隣ではアリシアがぴくりと眉を跳ね上げ、じぃっと俺を睨んでいた。

(やっべぇ……なんで余計なこと聞いちゃったんだ俺……)

「えっと、その、セリーナ……睨まないで……。
アリシアも、そんなにプレッシャーかけないで……?」

 空気が変にピリつく中、俺は意を決して、本当の話を切り出した。

「……あのさ、言ってなかったんだけど。
実は、俺……フィオナと婚約してるんだ。
俺の意志っていうより、生まれる前から盟約で決まってたみたいで……」

沈黙。

 アリシアとセリーナ、二人の美少女がじっと俺を見つめていた。

 ……怖っ!!こ、これは詰んだか!? 完全に詰んだかーー!?

しかし――

「……先を越されてしまいましたか。」

 セリーナがぽつりとつぶやいた。

「でも……関係ないですわ! レイニー様と一緒にいられるならば、それだけで幸せですものっ!」

 キラキラ輝く黄金の瞳で、そう言い切ったセリーナに、思わずこっちがぐらっとする。

 そしてアリシアも、ため息をつきながらも冷静に続けた。

「はぁ……まあ、わたしも同じですね。
家の誇りとか立場とか関係なく、私は、私の意思でレイニーくんを選びましたから。」

 俺はぽかんと口を開けた。

(え、えっ? えっ?? 受け入れられた?)

「ってことは、俺……フィオナと婚約してて、セリーナに求婚されてて、アリシアにも想われてて……」

「「……あの、レイニーくん(様)、浮かれてません?」」

 二人同時に同じツッコミをくらった。

「す、すみませぇんっ!!」

 思わず頭を下げた俺の上で、セリーナとアリシアの視線がまた交錯していた。

 ……やっぱり、この戦いは終わってない……!!

 ――その後、場所を移して三人で気分転換に外へ出た。


 王都の大通り、キラキラの陽射しと人混みの中。
 今日の俺はなんと――セリーナ王女様をお連れして、デート!……という名の街案内中!

 でもさ……。

「レイニー様っ、あのケーキぜんぶ試食してから決めたいですわ! ね? いいでしょっ?」

「王女様、お待ちをっ……それはっ、店の迷惑です!」

「お花屋さんのお花、ぜーんぶ可愛いですわっ! 王宮に飾りたいですのっ♪」

「は、はいっ!? お持ち帰りっ!? 王女様、それはご許可を……!」

 ――……って、セリーナ全開だなおい!!
 後ろにズラッと並ぶ近衛と衛兵たちは、もう魂抜けた顔してるしっ!

 すれ違う市民からも「……レイニーくん、頑張って」って目で見られてる……! いや、俺だって頑張ってるよ!? 毎回なだめてんの俺だからねっ!

「セリーナ。」

 俺はちょっと立ち止まって、彼女の肩をちょんっと叩いて話しかけた。

「そのへんでちょっと落ち着こ? お店の人も、護衛のみんなも疲れちゃうし……王女様なんだから、ちゃんと周りのことも見てこ?」

 セリーナはふるっと振り返って、キラッとした黄金の瞳で俺を見上げた。

「……レイニー様が、そう仰るなら。控えますわ。」

 ――おぉぉぉぉ!? 素直ッ!!!!

 後ろの護衛たちからは小声でざわめきが起きる。

「し、信じられん……あの王女様が……!」「レイニー殿……あなた様は何者……!」

 いや、いやいやいや!?
 そんな伝説の調教師みたいな目で俺を見るなよ!? 俺だってまだ内心ドキドキしてんだぞ!?
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

小さな貴族は色々最強!?

谷 優
ファンタジー
神様の手違いによって、別の世界の人間として生まれた清水 尊。 本来存在しない世界の異物を排除しようと見えざる者の手が働き、不運にも9歳という若さで息を引き取った。 神様はお詫びとして、記憶を持ったままの転生、そして加護を授けることを約束した。 その結果、異世界の貴族、侯爵家ウィリアム・ヴェスターとして生まれ変ることに。 転生先は優しい両親と、ちょっぴり愛の強い兄のいるとっても幸せな家庭であった。 魔法属性検査の日、ウィリアムは自分の属性に驚愕して__。 ウィリアムは、もふもふな友達と共に神様から貰った加護で皆を癒していく。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

乙女ゲームの隠れチートモブ〜誰も知らないキャラを転生者は知っていた。〜

浅木永利 アサキエイリ
ファンタジー
異世界に転生した主人公が楽しく生きる物語 その裏は、、、自分の目で見な。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

スキル買います

モモん
ファンタジー
「お前との婚約を破棄する!」 ローズ聖国の国立学園第139期卒業記念パーティーの日、第3王子シュナル=ローズレアは婚約者であるレイミ・ベルナール子爵家息女に宣言した。 見習い聖女であるレイミは、実は対価と引き換えにスキルを買い取ることのできる特殊な能力を有していた。 婚約破棄を受け入れる事を対価に、王子と聖女から特殊なスキルを受け取ったレイミは、そのまま姿を消した。 レイミと王妃の一族には、数年前から続く確執があり、いずれ王子と聖女のスキル消失が判明すれば、原因がレイミとの婚約破棄にあると疑われるのは明白だ。 そして、レイミを鑑定すれば消えたスキルをレイミがもっている事は明確になってしまうからだ。 かくして、子爵令嬢の逃走劇が幕を開ける。

処理中です...