205 / 223
第三章 ‐ 戦争の影
205話 突然の遭遇と、ツンデレな本音
しおりを挟む
「でも、勇気を出した人がいたから、俺たちは“今”を手に入れたんだ。……その最初の一歩がなかったら、仲間も、守るべき人も、全部見失ってたかもしれない。」
レイニーはウサギの少女の頭を優しく撫でながら、笑顔を浮かべた。
「この子が、君たちを変えるきっかけをくれた。だから俺は、君たちと一緒に本当の村に行きたい。怖いなら手を握るし、迷ったら前を歩く。……でも、絶対に君たちを一人にはしない。」
そう言えたのは、あのウサギの女の子がこっそり呟いた一言があったから。
『……ここじゃなくて、本当のおうちに、帰りたいな』
その小さな願いが、レイニーの背中を押したのだ。
しばらくの沈黙のあと──
「……なら、信じてみるよ。レイニー。君になら、賭けてもいい気がする。」
リーダー格の青年が、そう言って笑った。
それは、風の向きが変わった瞬間だった。
♢・♢・♢
――現在。無秩序の森の本当の村、入口付近。
そんなレイニーの回想を、賑わう村の風景の奥で、木陰に身を潜めるようにして、そっと聞いていたのがセリーナだった。
レイニーが抱えているウサギの女の子──あの子が、きっかけだったんだ。
(……なに、それ……ほんと、ばか……)
胸の奥がちくりと痛んだ。知らないうちに、彼のそんな姿を“誇らしい”と思っていた。だけど、なぜだかほんの少しだけ、悔しいような、羨ましいような気持ちも混じっていた。
(わたしも……)
レイニーに褒められたい。頼られたい。必要とされたい。
そんな風に思ってしまった自分に気づいて、慌ててぶんぶんと首を振る。
「な、なによ……なに考えてるのよ、わたしっ……!」
思わず声が漏れてしまい、慌てて口を押さえる。だがその瞬間──
「ん? セリーナ、何してるの?」
ひょっこり現れたレイニーの顔に、セリーナの表情が一瞬で爆発する。
「な、ななっ! な、なんでもないわよっ!? 見ないでっ、近寄らないでっ、あっち行って! ばかーっ!」
「えぇ!? なんで俺怒られてるのぉ!?」
レイニーが困惑して距離を取ろうとすると、セリーナは逆に近づいてきて、あわてて袖をつかんだ。
「……い、いまの……その……説得、よかったと思っただけ。べ、別に……他意はないわよっ! 変な顔しないでっ!」
「う、うん……ありがとう、セリーナ……?」
ツンツンが上がりすぎた結果、レイニーがちょっと引き気味になってしまい、セリーナははっと気づく。
(ま、まずいっ……これじゃ完全に変な子じゃないっ!?)
「~~~~っ! ち、ちがっ……! さっきのはその、感動して……いや、そうじゃなくて、でも……あぁもうっ!」
顔を真っ赤にしてバタバタとその場から逃げ出すセリーナの後ろ姿に、レイニーは苦笑しながらウサギの女の子と顔を見合わせた。あたふたと取り繕おうとするセリーナに、またしてもレイニーが「ほんとにツンデレだなあ」と呟き、ウサギの女の子が「また照れてる」と笑った。
「……なんか、すっごい可愛くない?」
ウサギの子がこくんと頷く。
──けれど、セリーナはその笑い声を背中で聞きながら、そっと口元を緩めた。
「……ふん、レイニーのくせに……ちょっと、かっこよかったわよ」
その言葉は、誰にも届かないように、夜風に消えていった。
日が傾き始める頃、村の広場にはふんわりと橙の光が満ちていた。木造の小さな建物の合間をそよぐ風が、吊るされたランタンの火を揺らし、ぽつぽつと灯りが灯っていく。
レイニーは、村人たちをそっと呼び集めていた。いつものように笑顔で、けれど少しだけ真剣な表情。
「今日はね、みんなに紹介したい子たちがいるんだ。――あっ、二人とも、前においでっ♪」
その声に、少し緊張した面持ちで現れたのは、小さな獣人の少女たち。
ひとりは、ぴんと立ったウサギ耳にクリーム色のふわふわ髪、大きな赤い瞳をきらきらさせていた。
もうひとりは、片耳が垂れた柔らかなピンク色の髪。おっとりとした様子で姉の後ろに隠れるように立っている。
姉らしい子が、ぴょんと一歩前に出て元気よく声を上げた。
「えへへっ、こんにちはー!わたし、ミミナっていいますっ!
ウサギの獣人で、草とか木とかのことがね、なんか“ふわ~”っと分かるんだよ!あと、ルルナはわたしが守るのっ!」
にっこり笑って、隣の子の手をしっかり握る。
「……ルルナ、です。人の気持ち、ちょっとだけ分かります。
あの、お姫さま……セリーナさまが、こわくなかった……だから、ここも、きっと大丈夫だって思いました……」
その言葉に、村の空気がやわらいでいくのを感じた。
獣人の老人が、静かにうなずきながら言う。
「草の声が聞こえるとは……珍しい能力じゃ。薬草の場所もわかるかもしれんのう」
「人の心を読む……? それは……でも、この村じゃ、嘘を見抜ける子より、そばにいてくれるだけで安心できる子のほうがずっとありがたいよ」
他の大人たちもざわざわと声を上げながら、どこか穏やかに微笑んでいる。
「それでね!」とレイニーが一段と明るく声を張る。「二人とも、村の役に立ちたいって言ってくれてさっ!だから俺たちで考えたんだよ~っ」
レイニーはウサギの少女の頭を優しく撫でながら、笑顔を浮かべた。
「この子が、君たちを変えるきっかけをくれた。だから俺は、君たちと一緒に本当の村に行きたい。怖いなら手を握るし、迷ったら前を歩く。……でも、絶対に君たちを一人にはしない。」
そう言えたのは、あのウサギの女の子がこっそり呟いた一言があったから。
『……ここじゃなくて、本当のおうちに、帰りたいな』
その小さな願いが、レイニーの背中を押したのだ。
しばらくの沈黙のあと──
「……なら、信じてみるよ。レイニー。君になら、賭けてもいい気がする。」
リーダー格の青年が、そう言って笑った。
それは、風の向きが変わった瞬間だった。
♢・♢・♢
――現在。無秩序の森の本当の村、入口付近。
そんなレイニーの回想を、賑わう村の風景の奥で、木陰に身を潜めるようにして、そっと聞いていたのがセリーナだった。
レイニーが抱えているウサギの女の子──あの子が、きっかけだったんだ。
(……なに、それ……ほんと、ばか……)
胸の奥がちくりと痛んだ。知らないうちに、彼のそんな姿を“誇らしい”と思っていた。だけど、なぜだかほんの少しだけ、悔しいような、羨ましいような気持ちも混じっていた。
(わたしも……)
レイニーに褒められたい。頼られたい。必要とされたい。
そんな風に思ってしまった自分に気づいて、慌ててぶんぶんと首を振る。
「な、なによ……なに考えてるのよ、わたしっ……!」
思わず声が漏れてしまい、慌てて口を押さえる。だがその瞬間──
「ん? セリーナ、何してるの?」
ひょっこり現れたレイニーの顔に、セリーナの表情が一瞬で爆発する。
「な、ななっ! な、なんでもないわよっ!? 見ないでっ、近寄らないでっ、あっち行って! ばかーっ!」
「えぇ!? なんで俺怒られてるのぉ!?」
レイニーが困惑して距離を取ろうとすると、セリーナは逆に近づいてきて、あわてて袖をつかんだ。
「……い、いまの……その……説得、よかったと思っただけ。べ、別に……他意はないわよっ! 変な顔しないでっ!」
「う、うん……ありがとう、セリーナ……?」
ツンツンが上がりすぎた結果、レイニーがちょっと引き気味になってしまい、セリーナははっと気づく。
(ま、まずいっ……これじゃ完全に変な子じゃないっ!?)
「~~~~っ! ち、ちがっ……! さっきのはその、感動して……いや、そうじゃなくて、でも……あぁもうっ!」
顔を真っ赤にしてバタバタとその場から逃げ出すセリーナの後ろ姿に、レイニーは苦笑しながらウサギの女の子と顔を見合わせた。あたふたと取り繕おうとするセリーナに、またしてもレイニーが「ほんとにツンデレだなあ」と呟き、ウサギの女の子が「また照れてる」と笑った。
「……なんか、すっごい可愛くない?」
ウサギの子がこくんと頷く。
──けれど、セリーナはその笑い声を背中で聞きながら、そっと口元を緩めた。
「……ふん、レイニーのくせに……ちょっと、かっこよかったわよ」
その言葉は、誰にも届かないように、夜風に消えていった。
日が傾き始める頃、村の広場にはふんわりと橙の光が満ちていた。木造の小さな建物の合間をそよぐ風が、吊るされたランタンの火を揺らし、ぽつぽつと灯りが灯っていく。
レイニーは、村人たちをそっと呼び集めていた。いつものように笑顔で、けれど少しだけ真剣な表情。
「今日はね、みんなに紹介したい子たちがいるんだ。――あっ、二人とも、前においでっ♪」
その声に、少し緊張した面持ちで現れたのは、小さな獣人の少女たち。
ひとりは、ぴんと立ったウサギ耳にクリーム色のふわふわ髪、大きな赤い瞳をきらきらさせていた。
もうひとりは、片耳が垂れた柔らかなピンク色の髪。おっとりとした様子で姉の後ろに隠れるように立っている。
姉らしい子が、ぴょんと一歩前に出て元気よく声を上げた。
「えへへっ、こんにちはー!わたし、ミミナっていいますっ!
ウサギの獣人で、草とか木とかのことがね、なんか“ふわ~”っと分かるんだよ!あと、ルルナはわたしが守るのっ!」
にっこり笑って、隣の子の手をしっかり握る。
「……ルルナ、です。人の気持ち、ちょっとだけ分かります。
あの、お姫さま……セリーナさまが、こわくなかった……だから、ここも、きっと大丈夫だって思いました……」
その言葉に、村の空気がやわらいでいくのを感じた。
獣人の老人が、静かにうなずきながら言う。
「草の声が聞こえるとは……珍しい能力じゃ。薬草の場所もわかるかもしれんのう」
「人の心を読む……? それは……でも、この村じゃ、嘘を見抜ける子より、そばにいてくれるだけで安心できる子のほうがずっとありがたいよ」
他の大人たちもざわざわと声を上げながら、どこか穏やかに微笑んでいる。
「それでね!」とレイニーが一段と明るく声を張る。「二人とも、村の役に立ちたいって言ってくれてさっ!だから俺たちで考えたんだよ~っ」
10
あなたにおすすめの小説
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
小さな貴族は色々最強!?
谷 優
ファンタジー
神様の手違いによって、別の世界の人間として生まれた清水 尊。
本来存在しない世界の異物を排除しようと見えざる者の手が働き、不運にも9歳という若さで息を引き取った。
神様はお詫びとして、記憶を持ったままの転生、そして加護を授けることを約束した。
その結果、異世界の貴族、侯爵家ウィリアム・ヴェスターとして生まれ変ることに。
転生先は優しい両親と、ちょっぴり愛の強い兄のいるとっても幸せな家庭であった。
魔法属性検査の日、ウィリアムは自分の属性に驚愕して__。
ウィリアムは、もふもふな友達と共に神様から貰った加護で皆を癒していく。
悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます
竹桜
ファンタジー
ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。
そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。
そして、ヒロインは4人いる。
ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。
エンドのルートしては六種類ある。
バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。
残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。
大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。
そして、主人公は不幸にも死んでしまった。
次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。
だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。
主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。
そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
《作者からのお知らせ!》
※2025/11月中旬、 辺境領主の3巻が刊行となります。
今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。
【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん!
※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。
3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。
転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。
- 週間最高ランキング:総合297位
- ゲス要素があります。
- この話はフィクションです。
スキル買います
モモん
ファンタジー
「お前との婚約を破棄する!」
ローズ聖国の国立学園第139期卒業記念パーティーの日、第3王子シュナル=ローズレアは婚約者であるレイミ・ベルナール子爵家息女に宣言した。
見習い聖女であるレイミは、実は対価と引き換えにスキルを買い取ることのできる特殊な能力を有していた。
婚約破棄を受け入れる事を対価に、王子と聖女から特殊なスキルを受け取ったレイミは、そのまま姿を消した。
レイミと王妃の一族には、数年前から続く確執があり、いずれ王子と聖女のスキル消失が判明すれば、原因がレイミとの婚約破棄にあると疑われるのは明白だ。
そして、レイミを鑑定すれば消えたスキルをレイミがもっている事は明確になってしまうからだ。
かくして、子爵令嬢の逃走劇が幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる