転生したら王族だった

みみっく

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第三章 ‐ 戦争の影

205話 突然の遭遇と、ツンデレな本音

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「でも、勇気を出した人がいたから、俺たちは“今”を手に入れたんだ。……その最初の一歩がなかったら、仲間も、守るべき人も、全部見失ってたかもしれない。」

 レイニーはウサギの少女の頭を優しく撫でながら、笑顔を浮かべた。

「この子が、君たちを変えるきっかけをくれた。だから俺は、君たちと一緒に本当の村に行きたい。怖いなら手を握るし、迷ったら前を歩く。……でも、絶対に君たちを一人にはしない。」

 そう言えたのは、あのウサギの女の子がこっそり呟いた一言があったから。

『……ここじゃなくて、本当のおうちに、帰りたいな』

 その小さな願いが、レイニーの背中を押したのだ。

 しばらくの沈黙のあと──

「……なら、信じてみるよ。レイニー。君になら、賭けてもいい気がする。」

 リーダー格の青年が、そう言って笑った。

 それは、風の向きが変わった瞬間だった。

 ♢・♢・♢
 
――現在。無秩序の森の本当の村、入口付近。
 
 そんなレイニーの回想を、賑わう村の風景の奥で、木陰に身を潜めるようにして、そっと聞いていたのがセリーナだった。

 レイニーが抱えているウサギの女の子──あの子が、きっかけだったんだ。

(……なに、それ……ほんと、ばか……)

 胸の奥がちくりと痛んだ。知らないうちに、彼のそんな姿を“誇らしい”と思っていた。だけど、なぜだかほんの少しだけ、悔しいような、羨ましいような気持ちも混じっていた。

(わたしも……)

 レイニーに褒められたい。頼られたい。必要とされたい。

 そんな風に思ってしまった自分に気づいて、慌ててぶんぶんと首を振る。

「な、なによ……なに考えてるのよ、わたしっ……!」

 思わず声が漏れてしまい、慌てて口を押さえる。だがその瞬間──

「ん? セリーナ、何してるの?」

 ひょっこり現れたレイニーの顔に、セリーナの表情が一瞬で爆発する。

「な、ななっ! な、なんでもないわよっ!? 見ないでっ、近寄らないでっ、あっち行って! ばかーっ!」

「えぇ!? なんで俺怒られてるのぉ!?」

 レイニーが困惑して距離を取ろうとすると、セリーナは逆に近づいてきて、あわてて袖をつかんだ。

「……い、いまの……その……説得、よかったと思っただけ。べ、別に……他意はないわよっ! 変な顔しないでっ!」

「う、うん……ありがとう、セリーナ……?」

 ツンツンが上がりすぎた結果、レイニーがちょっと引き気味になってしまい、セリーナははっと気づく。

(ま、まずいっ……これじゃ完全に変な子じゃないっ!?)

「~~~~っ! ち、ちがっ……! さっきのはその、感動して……いや、そうじゃなくて、でも……あぁもうっ!」

 顔を真っ赤にしてバタバタとその場から逃げ出すセリーナの後ろ姿に、レイニーは苦笑しながらウサギの女の子と顔を見合わせた。あたふたと取り繕おうとするセリーナに、またしてもレイニーが「ほんとにツンデレだなあ」と呟き、ウサギの女の子が「また照れてる」と笑った。

「……なんか、すっごい可愛くない?」

 ウサギの子がこくんと頷く。

──けれど、セリーナはその笑い声を背中で聞きながら、そっと口元を緩めた。

「……ふん、レイニーのくせに……ちょっと、かっこよかったわよ」

その言葉は、誰にも届かないように、夜風に消えていった。
 

 日が傾き始める頃、村の広場にはふんわりと橙の光が満ちていた。木造の小さな建物の合間をそよぐ風が、吊るされたランタンの火を揺らし、ぽつぽつと灯りが灯っていく。

 レイニーは、村人たちをそっと呼び集めていた。いつものように笑顔で、けれど少しだけ真剣な表情。

「今日はね、みんなに紹介したい子たちがいるんだ。――あっ、二人とも、前においでっ♪」

 その声に、少し緊張した面持ちで現れたのは、小さな獣人の少女たち。

 ひとりは、ぴんと立ったウサギ耳にクリーム色のふわふわ髪、大きな赤い瞳をきらきらさせていた。

 もうひとりは、片耳が垂れた柔らかなピンク色の髪。おっとりとした様子で姉の後ろに隠れるように立っている。

 姉らしい子が、ぴょんと一歩前に出て元気よく声を上げた。

「えへへっ、こんにちはー!わたし、ミミナっていいますっ!
 ウサギの獣人で、草とか木とかのことがね、なんか“ふわ~”っと分かるんだよ!あと、ルルナはわたしが守るのっ!」

 にっこり笑って、隣の子の手をしっかり握る。

「……ルルナ、です。人の気持ち、ちょっとだけ分かります。
 あの、お姫さま……セリーナさまが、こわくなかった……だから、ここも、きっと大丈夫だって思いました……」

 その言葉に、村の空気がやわらいでいくのを感じた。

 獣人の老人が、静かにうなずきながら言う。

「草の声が聞こえるとは……珍しい能力じゃ。薬草の場所もわかるかもしれんのう」

「人の心を読む……? それは……でも、この村じゃ、嘘を見抜ける子より、そばにいてくれるだけで安心できる子のほうがずっとありがたいよ」

 他の大人たちもざわざわと声を上げながら、どこか穏やかに微笑んでいる。

「それでね!」とレイニーが一段と明るく声を張る。「二人とも、村の役に立ちたいって言ってくれてさっ!だから俺たちで考えたんだよ~っ」
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