転生したら王族だった

みみっく

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第三章 ‐ 戦争の影

211話 妖精のプロポーズと、少年の約束

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 その夜、村はすっかり静けさに包まれていた。

 空には無数の星がきらめき、風は甘くて優しい匂いを運んでくる。

 畑の隣にある小さな花畑。その中央にぽつんと座っていたのは、サクラだった。
 ピンクの髪を月明かりにきらめかせながら、光の球たちをふわふわと浮かべて、星を見上げていた。

「……わぁ、レイニーくんが教えてくれたとおり、今日もいっぱい光ってるぅ……」

 と、そのとき。

「ここにいたのか、サクラ。探したぞ~」

「わぁっ、レイニーくんっ!」

 サクラはくるりと振り返り、笑顔をぱぁっと咲かせる。
 その瞳は、星よりも輝いて見えた。

「へへ……だって、サクラね、レイニーくんと一緒に星を見たかったの。今日、いちばんきれいだから……!」

「そっか。じゃあ、隣、いいか?」

「もちろん~♡」

 ちょこんと並んで座る二人。
 少し肌寒くなってきた夜の空気に、サクラが小さく体を寄せた。

「レイニーくん……あのね……」

「ん?」

 サクラは少し黙ってから、星空を見上げたまま、小さな声で――

「……サクラ、大きくなったら……レイニーくんのおよめさんになれるかなぁ?」

「……っ!!?」

 レイニーは一瞬、思考がぶっ飛んだ。
 心臓がどくんと鳴り、言葉を失う。

 サクラは恥ずかしそうに両手でほっぺを押さえながら、こっそりこっちを見ている。

「サクラね、いまはまだ子どもだけど……でもっ、ずーっとレイニーくんのそばにいて……もっともっとおっきくなって、きれいになって……それでっ……」

 顔を真っ赤にして、ぎゅっと目をつむる。

「ぜったい、およめさんになるんだもんっ!」

「…………」

 レイニーはふっと笑って、サクラの頭に手を伸ばした。
 そっと撫でると、彼女は恥ずかしそうに、でも嬉しそうに目を細める。

「うん。楽しみにしてるよ、サクラ」

「えへへ……やくそく、だよ?」

 小さな指が差し出される。
 レイニーは優しくその指を絡めて、ゆっくりと指切りを交わした。

「指きりげんまん、うそついたら――森が怒るからな?」

「うんっ……!」

 星が流れた。
 夜空の下、小さな妖精の願いと、少年の優しさが結ばれた、あたたかな瞬間だった。


 ぽかぽかと陽が差し込む村のリビング。
 木でできたテーブルに、ティーセットと森の果物が並べられている。

 その片隅――。

「……ん~っ♡ レイニーくん、もっとなでなでしてぇ~」

「よしよし、サクラは今日もがんばったもんな~♪」

 ソファにちょこんと座る二人は、完全に「甘えモード」全開。
 レイニーがサクラの髪をふわふわ撫でると、サクラはすりすりと頬を寄せ、まるで猫のように嬉しそうな表情を浮かべる。

「うふふっ、レイニーくんのほっぺ……あったかい~♡」

「おいおい、くすぐったいってば~」

 にゃんにゃんとほっぺをすり合わせる二人。
 光の球たちまでふわふわと舞って、まるで祝福しているかのようだった。

 ――と、その時。

「……またイチャイチャしてるわ……」

 リビングの扉に背を預けていたアリシアが、思わずため息をついた。
 手には開きかけの本。だけどもう読む気は失せたらしい。

「サクラ、あなた最近“わがままスイッチ”入りっぱなしじゃない。……まったく、あの子ったら……」

 そうぼやきながらも、アリシアの頬がわずかに緩んでいるのは――誰にも気づかれていない。

「まぁ……レイニーが甘やかすから調子に乗るのよね」

 アリシアは紅茶をひとくち啜ると、くすっと笑った。

 そして本を閉じ、ぽそりと呟く。

「……でもまぁ、レイニーが幸せそうなら……それでいいのかしらね」

 彼女のエメラルドの瞳が、一瞬だけ優しく揺れる。
 ただそれも、誰にも見られないように――窓の外へ視線を逸らしていた。


 村の畑のはじっこ。
 サクラが木の上からぴょこっと飛び降りて、足元のミミナにふわっと着地。

「サクラ、あのね!このお花さん、ミミナが話しかけたら笑ったの!」

「ほんとぉ!?サクラもサクラも~!」

 二人は手を取り合って、花の周りをくるくる回る。
 キラキラした光の球がふわふわ舞って、まるで妖精のパレード。

「ねぇ、ミミナちゃんもレイニーくんにいっぱい褒められたい?」

「うんっ、ミミナ、レイニーのためにおいしい実を育てたいの!」

「サクラもーっ!サクラもーっ!!じゃあ一緒に畑、やろーっ!」

「やるやるーっ!」

 きゃっきゃきゃっきゃ、まるで姉妹みたいに笑いあう二人。
 葉っぱでできたティアラを作ってお互いにかぶせ合う姿は、完全に森の祝福された子たちそのものだった。


森の奥の畑――
ひなたの下で、ミミナが大きなヒマワリに魔力を注ぎ込んでいると、どこからか…

「ミミナちゃーんっ!」

「わっ!……サクラちゃん?」

ひらひらっと空から舞い降りるサクラちゃん。
ピンクの髪がキラキラして、まるで風に乗った桜の花びらみたいだった。

「サクラちゃんね、このあいだ育てた桃さん……レイニーくんが、にっこぉ~って笑ってくれたの!」

「えぇ~!?いいなぁ……ミミナのはまだ小さい実しかできなくて……」

「じゃあサクラちゃんといっしょに育てよ~っ!ふたりで育てたら、もっともっとレイニーくんが笑ってくれるかも~♡」

「っ!……うんっ!!ミミナ、がんばるーっ!」

「えへへ~、がんばろ~っ♡」

ふたりで手を繋いで、畑の中心に立つ。
空から降り注ぐ光、風に揺れる葉っぱ、花の香り。
ふたりの周りには、光の球がくるくると踊っていた――。
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