転生したら王族だった

みみっく

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第三章 ‐ 戦争の影

218話 先生の涙と、心の地図

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♢リア姉先生、大人を教育する!?

 ある日のこと。教室の前に見慣れない大きな影がちらちらと揺れているのを、一人の子どもが見つけた。

「せ、先生……なんか村のおじさんたちが……のぞいてる……!」

 その言葉に、リアナが窓の外へと視線を向ける。

「えっ!? お、おじさん!? いた! わあっ! 見てるし!! めっちゃガン見だし!!」

 教室の窓の外にいたのは、獣人の大工さん、魔物使いのおばあちゃん、農夫のおじさん、そして――ケルベロスの分身体までもが、身を潜めるようにこちらを窺っていた。彼らの視線が、リアナの全身に突き刺さる。

「お、お、おとなが……! 教室をのぞいてる……!! せ、先生としての力量が試されてるっ……!」

 リアナはぷるぷると震え、心の中でそう叫んだ。そのとき、一人のちびっ子が麦わら帽子を被ったまま、大きな声で叫んだ。

「せんせぇ~~おしえて~!」

 すると、なぜかケルベロスの分身体が、その子どもの頭にそっと帽子をかぶせてあげて、ドヤ顔をしてみせる。その微笑ましいやり取りに、村の大人たちも思わず笑い声を漏らし、静かに拍手を送った。

 後日。リアナが、いつものように満面の笑顔で教室に立った。

「今日は “おとなとこどもいっしょ授業” の日でーす!!」

 リアナがそう宣言すると、子どもたちと一緒に、獣人の大工さんや魔物使いのおばあちゃんなど、村の大人たちがぞろぞろと教室へと入ってきた。彼らの顔には、少しの照れと、好奇心が入り混じっていた。

「うぅぅ~……おとなってだけでめっちゃ緊張するぅぅ~……でも負けない!!」

 リアナは小さく震えながらも、自分を鼓舞するように胸を叩いた。

 今日の授業内容は「地図づくり」。テーマは――「自分の大好きな場所を描いてみよう!」だった。

「じゃあ! まずはおじさんから! 好きな場所、どこー?」

 リアナは、大工のおじさんに笑顔で尋ねた。おじさんは少し考えてから、恥ずかしそうに口を開く。

「うーん……わしはな、畑のど真ん中にある ”ナス専用の小道” が好きじゃな。そこだけ魔物たちも遠慮して通らんのじゃよ」

「地味っ!? でもそういうの大事~! 好きって気持ちを形にするのが ”表現” だから!」

 リアナはそう言って、おじさんの答えを真剣に板書していく。次に手を挙げたのは、農夫のおじさんだった。

「わしは酒場じゃな。昼間っから飲むあの一杯が最高なんじゃ」

「じゃあそれ、 ”昼酒ポイント” って書いとこーね!!」

 リアナの言葉に、大人たちは笑い声を上げる。続いて、魔物使いのおばあちゃんが、静かに話し始めた。

「……儂は、昔、妻と散歩した森の小径が……いまも好きでな……」

「……え……めっちゃいい話……やば……そ、そこは ”思い出スポット” ってしようね……(泣)」

 おばあちゃんの言葉に、リアナの目に涙が浮かび始める。子どもたちも、その話に静かに耳を傾けていた。

 そのとき、セリーナがすっと手を上げた。

「わたくしは、この村の ”みんなが笑っている場所” が好きですわ!」

「せ、セリーナちゃーん……それ、もう先生泣いちゃうやつぅ……!!」

 リアナはついに声を上げて泣き出してしまった。

 最後に、子どもたちが描いた「わたしの好きな村マップ」が黒板いっぱいに広がった。そこには、リアナ先生の教室やケルベロスの寝床、ミーニャの木登り基地、そして、アリシアが本を読んでいる秘密のベンチなど、村人たちの ”好き” がぎゅうっと詰まっていた。

「ねえ先生、これ、ずっと飾っておこうよ!」

「うんっ! これ、わたしの宝物になった~!」

 子どもたちの声に、リアナの目からは涙がこぼれ落ちる。セリーナはすまし顔をしていたが、口元は少しだけ微笑んでいた。

「ふふっ……この ”授業” ……悪くないですわね」


♢村の大人たちの協力

 レイニーの提案で始まった「教育支援」プロジェクト。子どもたちの笑顔を守るため、村の大人たちも重い腰を上げ始めた。

 村の広場に差し込む朝日に照らされ、数人の大人たちが集まっていた。中央に立つレイニーは、にこにこと明るい笑顔を浮かべ、両手をパタパタと振って声をかける。

「ねぇねぇ~! みんなーっ! 教育って超だいじなんだって~! だからさ、オトナたちも手伝ってくれたら嬉しいなっ♪」

 その呼びかけに、最初に応じたのは、筋肉モリモリの農夫バスラーだった。彼は照れくさそうに頭をかく。

「んー、文字とかはさっぱりだけどなぁ……。でも畑仕事とかなら、教えられるぞ!」

 こうして、子どもたちは「生活授業:農作業体験」をすることになった。実際に作物を育て、土の感触を五感で感じ取る。ミーニャは人知れず土の上で爪を研ぎながらも、レイニーの隣で嬉しそうにしっぽを振っていた。ルフィアはカカシに変装して「ぎゃー! モンスターだー!」と叫び、子どもたちを驚かせて全員が大爆笑に包まれた。
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