転生したら王族だった

みみっく

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第三章 ‐ 戦争の影

145話 きっかけ_13

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 その言葉に、胸が締め付けられる思いがした。あぁ……それでいつも耳を隠すために帽子を被っていたのか。つまり、女の子であることと獣人であることを隠して生活していたんだな。

 改めて話を聞くと、状況が目に浮かぶようだった。どうせ『俺達の縄張りの客を勝手に取りやがって!』とか言われたんだろう。

 それにしても、8人がかりで暴力を振るうなんて……人数差にも腹が立つ。周りにいて助けようともしない者にも腹が立つ。縄張りだというのなら場所代でも取るつもりか? 怒りが込み上げてくるのを必死に抑えた。
  
 納得がいかず、俺はリオンを連れて警備兵の詰め所へ向かい、暴行されたことを訴えた。しかし、孤児で獣人だと分かると、職員たちは露骨に態度を変え、相手にしてくれなかった。

「えーと、孤児なのですよね? この町の住人の登録がないですし……獣人ですよね? 税金を払っていないですし……。」職員は不快そうな目でリオンを見下ろしながら、冷たく言い放った。その言葉に怒りが込み上げるが、リオンの肩をそっと支えながら耐えた。

 ここで俺が王子だと名乗り、スッキリ解決することもできるだろう。しかし、その後リオンはどうなる? お父さまに迷惑が掛かる可能性もあるし、この町が父の王が獣人の迫害を黙認し、放置している現状を考えると、簡単に名乗るわけにはいかない。

 リオンと親しい人や知り合いも、獣人だと知ると挨拶をしても無視するか、嫌な目を向けるようになっていた。その冷たい態度に、リオンがどれほど傷ついているかを思うと胸が締め付けられる。

『ここまで変わるのか』と獣人への迫害を実感した。人々の態度が一変する様子は、言葉では表しきれないほどの理不尽さを感じさせる。

「レイニーくんは、おれと一緒にいていいの? 一緒にいると、レイニーくんまで巻き込むことになると思うけど?」リオンが不安そうに問いかけてきた。その言葉には、自分が周囲に与える影響を気にする彼女の優しさが滲んでいる。

『こんな状態のリオンを放っておけるわけないだろ。お金があっても、食料を売ってくれなくなっているんだぞ?』俺は心の中でそう呟きながら、リオンの肩を軽く叩いた。

 孤児や奴隷でも買い物はできるが、獣人の孤児には売ってくれない店が多い。獣人でも働いている人はいるが、それは特殊なスキルや技能を持つ者だけだ。それでも待遇は悪く、ひどい扱いを受けながらも生活のために我慢して働いている状況だった。

 モヤモヤした気持ちを抱えたまま、二人で当てもなく歩いていると、いつの間にか足はいつも剣の練習をしていた森の入り口の広場へと向かっていた。その場所は、言葉にしがたい安心感を与えてくれる。木々のざわめきや足元の柔らかな土の感触が、少しだけ心を落ち着かせるようだった。

 リオンは広場にぽつんとある倒木に腰を掛け、視線を少し下に向けながら呟いた。「さぁ……て、おれはどうしようかな……。この町に、おれの居場所がなくなっちゃったな……。」その声には、自分の置かれた状況への諦めと、どうにもならない現実への憤りが滲んでいた。

 再び、怒りが胸の奥から溢れてきた。懸命に過ごし、生きているだけなのに、大勢で女の子に暴力を振るい、顔の形が変わるほどの酷い仕打ちをする者たちが、平然と町の中を歩き回り、睨みを効かせている。町や王国が裁かないと言うなら、自分が動くしかないのか――そんな思いが頭をよぎる。

「薪でも拾うか~。リーナは料理担当なぁー!」俺は努めて明るく声をかけた。少し落ち込んでいたリーナが顔を上げる。

「はぁ? まぁ……いいけど、おれの料理が気に入ったの?」リーナは少し嬉しそうに答えた。その表情に、少しだけ安堵を覚える。

「まーねー♪ リーナの料理は好きだよー。座って休んでおいてっ!」俺はリーナの周りに結界を張り、彼女を守る準備を整えた。

 森の奥へと足を踏み入れ、冷たい夜気が肌を刺す。影がじわりと広がり、静寂の中で不気味に揺れた。

 声は低く、冷たく響く――まるで闇そのものが言葉を紡ぐかのように。

「リリィ……仕事だ。」

 影が蠢く。

「リーナを暴行した者――すべて、消し去れ。」

 闇がざわめき、空気が張り詰める。怒りを押し殺しながら、静かに呟いた。

「許さない……決して。」

 その瞬間、影が闇に溶けた。森の中に、死の気配が満ちる。

「うん。わかったっ。」影の中からリリィの返事が聞こえてきた。その声には、迷いのない決意が感じられる。
 
 リーナを傷つけた者たち――。 奴らが大人になれば、抗争はさらに激化し、血で血を洗う未来が容易に想像できる。 盗賊になる可能性も否定できない。遅かれ早かれ、裁きの時は訪れるだろう。

 だが、それを待つつもりはない。 俺の仲間を傷つけた者どもを、見逃す理由などどこにもない。 ただの害でしかないなら、害を断ち切るまで――。

 向こうが暴力で来るのならば、こちらも力で応じよう。 それが唯一の"正しさ"なのならば……俺は迷わない。
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