転生したら王族だった

みみっく

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第三章 ‐ 戦争の影

159話 ダミエンの困惑

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『ああ、アリシアもレイニー様のことが好きだったのか……』ダミエンは娘の表情からそう察し、同時にセリーナ様もレイニー様に明確な好意を寄せていると理解してしまった。その事実を目の当たりにし、彼の心は複雑な感情で渦巻いた。

 正直、ダミエンの中では、レイニー様とアリシアが結ばれることでアリシアの未来が安泰になると目論んでいたのだ。レイニー様の強大な魔法、莫大な財力、人柄の良さ、仲間思いの性格、人望の厚さ……その全てが、アリシアにとってこれ以上ないほど理想的な相手に映っていた。龍王国を属国にしたという実績もまた、ダミエンにとって彼を信頼する一因だった。

 実際、ダミエンの目にはこれまでアリシアとレイニー様が良い雰囲気に見えていた――そう、セリーナ様が訪ねてくるまでは。

『まさかこのような展開になるとは……』ダミエンは客間の豪華なシャンデリアを仰ぎ見ながら、深いため息を一つついた。

 アリシアならば、きっとセリーナ様を押しのけてレイニー様と結ばれるのは容易だろう。娘ながらその容姿は美しく、優しさと気遣いを兼ね備えた魅力的な女性へと成長している。彼女の人柄や能力を考えれば、レイニー様の心を掴むのは難しいことではない。

 だが……その後が問題だ。あの『小さな暴君』と呼ばれるセリーナ様が、黙ってそれを受け入れるはずがない。彼女の機嫌を損ねれば、溺愛している国王をも巻き込み、王宮全体が大騒ぎになるのは目に見えている。

「はぁ……。」ダミエンは深いため息をつきながら、頭を抱えた。セリーナ様の怒りがどれほどの混乱を引き起こすか、彼には容易に想像がついていた。王宮の秩序が乱れるだけでなく、場合によっては王国全体に影響を及ぼしかねない。

『アリシアとレイニー様が結ばれるのは理想的だが……セリーナ様の存在がこれほどまでに厄介だとは……』ダミエンの胸中には、娘の幸せを願う気持ちと、王国の安定を守る責任感が交錯していた。

 彼は静かに目を閉じ、次の一手を考え始めた。セリーナ様の機嫌を損ねず、アリシアの幸せを守る方法――それは、簡単には見つかりそうになかった。

「そうなの? 別に俺に合わせてくれなくても良いのにぃー♪ セリーナはセリーナだろー?」レイニーはまるで友人と気軽に話すような口調で、グリムファング王国の王女であるセリーナに言葉を投げかけた。その率直な一言に、セリーナは一瞬驚いたように彼を見つめる。

「もぉっ。わたしは、レイニー様に好かれたいのっ。」セリーナは少し怒ったような口調で答えたが、言い終えた瞬間、自分の感情を露呈してしまったことに気づき、慌てて両手を口元に当てた。その仕草は普段の彼女の堂々たる態度とは異なり、どこか可愛らしさを感じさせた。

 レイニーはそんな彼女の様子を見て、優しく微笑みながら言葉を続けた。「あはは♪ そんな感じで、いつも通りに接してよっ。それでいいんだからさ。」

 セリーナは一瞬ためらった後、小さく頷きながら答えた。「……は、はーい。」しかしその表情には、どこか納得しきれない気持ちが漂い、視線を逸らしつつもレイニーの隣で小さく座り直した。

 ダミエンとアリシアはそのやり取りを目の前で見ながら、内心では二人の微妙な雰囲気を感じ取っていた。ダミエンは少し考え込みながら心の中で呟く。『やはり、この状況……複雑だな。アリシアの立場もあるし、セリーナ様の思いもある。そしてレイニー様が何を望んでいるのか、そこが鍵だ。』

 アリシアはムスッとした表情を浮かべながら、セリーナの仕草に対する僅かな警戒を胸中に抱いていた。客間には、二人の静かなやり取りを中心に、微妙な空気が流れていた。

「それでセリーナは、どうして夜中にダミエンに会いに来たの?」それは、ダミエンもエリシアも知りたかった情報だった。

「そ、それは……無秩序の森のワイバーンを軽々と魔法を1撃で討伐し、大勢の兵士を蹴散らした者がダミエンの屋敷に招かれたと聞いたからよっ。気になるじゃない、そんんな人がいるなんて。この目で確かめようと……」チラチラとレイニーの顔を見て答えていた。

「あぁ、うん。それ……たぶん、俺だねっ」レイニーは少し照れくさそうに笑いながら答えた。

「……そんなことをできるの、レイニーくんしか、いないでしょ!」アリシアが勢いよく口を開き、軽くツッコミを入れるように言った。その言葉には少し呆れも混じっているようだ。

「え? 俺じゃなくても出来るでしょー。あれ、ただのファイアショットだよぅ?」レイニーは首を傾げながら、気軽な調子で言葉を続けた。

 しかし、アリシアはムスッとした顔で声を強めた。「いえ、あれは、まったく別物ですっ! 普通のファイアショットとは比較になりません!」彼女の真剣な声色に、場の空気が少し張り詰める。

「あ、アリシア……落ち着きなさい。王女殿下の前だぞ。」ダミエンが少し慌てた様子でアリシアに注意を促した。

 その言葉に、アリシアは一瞬驚いたように背筋を伸ばし、セリーナにちらりと目を向けた。セリーナはそのやり取りを興味深そうに見守っていたが、次第に唇を綻ばせ、穏やかな微笑みを浮かべる。
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