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二十二話「祖母の家の写真」
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「一昨日、実家帰ってきたんだよね」と言って、鬼村はおもむろに生八つ橋を差し出してきた。鬼村からお土産を貰うのは初めてで、私は喜び半分驚き半分でそれを受け取った。
「うわ、有難う御座います。先生、京都出身だったんですか?」
「子供の頃こっちに越してきたから、あんまり自覚ないんだけどね。アタシが家出てから親は京都戻って、帰ったの三年ぶりくらい」
「へえ。何かあったんですか?」
「去年ばあちゃんが首吊って死んじゃってさ」
事も無げにとんでもないことを言う鬼村に、私の喉がひくりと痙攣した。家族の訃報。しかも自殺。鬼村のおばあ様と言う事は、もう九十歳は超えているだろう。そんなご高齢の方が首吊り自殺をしただなんて、にわかには信じがたい程ショックである。
言葉をなくす私をを見て、鬼村はスマホを弄りながら肩をすくめた。
「で、ばあちゃん家を解体するって言うから、最後に見に行ってきたの。昔は遊びに行ってた思い出の家だったからね」
「そうだったんですね……」
「でもちょっと間に合わなくて、解体始まってから行っちゃったから、壊れた家しか見れなかったんだ。ま、しゃあないな。ほら、これ」
鬼村に渡されたスマホの画面を見ると、半壊する日本家屋の前で、ねっちょりした笑みを浮かべてピースサインをしている鬼村の写真が映っていた。これまた少し意外だった。鬼村は自分の写真なんぞ撮らないタイプの人間だと思っていたからだ。
「先生も写ってるんですね」思ったことをそのまま口にすると、鬼村は首を縦に振った。
「うん。ばあちゃんと一緒に写真撮れるのも最後だしね」
「え?」
弾かれたように鬼村を見、急いで写真に視線を戻す。その瞬間、鬼村はひょいと私の手からスマホを取り上げてしまった。
「あんまりじっくり見ない方が良いよ」
「……でも」理解が追い付かず、スマホを持っていた形のままで体が固まっている。「先生が見せて来たじゃないですか」
「ふへっ」鬼村は汚く鼻を鳴らして笑った。「そうだわ。まあ、ちょっと見ただけじゃ何てことないから、忘れて」
ポケットの中にしまわれるスマホを目で追いながら、私の脳内ではいやにはっきりと件の写真が思い起こされた。その映像を完璧に忘れられる日がくるかどうか、私の胸の中で不安の種が音もなく芽吹いた。
「うわ、有難う御座います。先生、京都出身だったんですか?」
「子供の頃こっちに越してきたから、あんまり自覚ないんだけどね。アタシが家出てから親は京都戻って、帰ったの三年ぶりくらい」
「へえ。何かあったんですか?」
「去年ばあちゃんが首吊って死んじゃってさ」
事も無げにとんでもないことを言う鬼村に、私の喉がひくりと痙攣した。家族の訃報。しかも自殺。鬼村のおばあ様と言う事は、もう九十歳は超えているだろう。そんなご高齢の方が首吊り自殺をしただなんて、にわかには信じがたい程ショックである。
言葉をなくす私をを見て、鬼村はスマホを弄りながら肩をすくめた。
「で、ばあちゃん家を解体するって言うから、最後に見に行ってきたの。昔は遊びに行ってた思い出の家だったからね」
「そうだったんですね……」
「でもちょっと間に合わなくて、解体始まってから行っちゃったから、壊れた家しか見れなかったんだ。ま、しゃあないな。ほら、これ」
鬼村に渡されたスマホの画面を見ると、半壊する日本家屋の前で、ねっちょりした笑みを浮かべてピースサインをしている鬼村の写真が映っていた。これまた少し意外だった。鬼村は自分の写真なんぞ撮らないタイプの人間だと思っていたからだ。
「先生も写ってるんですね」思ったことをそのまま口にすると、鬼村は首を縦に振った。
「うん。ばあちゃんと一緒に写真撮れるのも最後だしね」
「え?」
弾かれたように鬼村を見、急いで写真に視線を戻す。その瞬間、鬼村はひょいと私の手からスマホを取り上げてしまった。
「あんまりじっくり見ない方が良いよ」
「……でも」理解が追い付かず、スマホを持っていた形のままで体が固まっている。「先生が見せて来たじゃないですか」
「ふへっ」鬼村は汚く鼻を鳴らして笑った。「そうだわ。まあ、ちょっと見ただけじゃ何てことないから、忘れて」
ポケットの中にしまわれるスマホを目で追いながら、私の脳内ではいやにはっきりと件の写真が思い起こされた。その映像を完璧に忘れられる日がくるかどうか、私の胸の中で不安の種が音もなく芽吹いた。
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