31 / 53
三十一話「カメオ出演」
しおりを挟む
ある時、鬼村の作品をネット配信でドラマ化したいという打診が来た。
鬼村の作品はいくつか映画化とアニメ化がされており、アニメの方は私も携わらせてもらった事がある。だが実写化の話を取り扱うのは初めてだ。一体どんな俳優がキャストになるのだろうとわくわくしながら、私は鬼村の元へ行き事の次第を伝えた。
「どうですか、先生」
「別に良いよ」
自分の作品が映像化されるのはこれが初めてではないせいか、鬼村はしれっとしている。
「でも一つ条件がある」
「はい」
「マチミ役、アタシにやらして」
予想だにしない言葉に、複数の疑問が全く同時に頭の中で弾けた。散らばる疑問符の中からどれを最初にピックアップするべきだろう。私はとりあえず、手ごろな質問を手繰り寄せた。
「ええと、マチミって誰でしたっけ」
「一巻の最後で二、三、意味深な事言うおばさん」
「モブですか?」
「そう」
言われればそんなキャラが居たような気もする。
「まあ、勿論、お願いする事は出来ますけど……」私は腑に落ちないまま鬼村に疑問をぶつけた。「なんでその役やりたいんですか? 先生、役者とかやってましたっけ?」
鬼村は何もない(はずの)空中をぼんやり眺めながら、抑揚のない声でぽつぽつと語り始めた。
「この本、昔アニメ化したのは知ってるでしょ。その時アタシ、マチミ役でカメオ出演するって話になってね。スタジオ行って収録したのよ、4つくらいだったかな、台詞。で、収録は無事に済んだんだけど、後日連絡が来てさ。アタシの音声だけ何故か録音した台詞じゃない事言ってるから使えないんだって。何言ってるか聞いたら、分からないって言うのよ。だから結局カメオ出演流れちゃったんだよね」
あまりにも鬼村らしい事件に思わず閉口する。
その音声を聞いてしまったスタッフの方に、何も起きていなければいいんだけど。
「……つまりリベンジしたいって事ですか?」
「違う違う!」
鬼村は醜い顔をしかめるようにして笑い、大きな歯をむき出しにした。
「実写なら今度は何起きるかなと思ってさ」
「却下です」
やんやとぶーたれる鬼村を前に、この人は撮影現場に遊びに行かせるまいと固く誓った私だった。
鬼村の作品はいくつか映画化とアニメ化がされており、アニメの方は私も携わらせてもらった事がある。だが実写化の話を取り扱うのは初めてだ。一体どんな俳優がキャストになるのだろうとわくわくしながら、私は鬼村の元へ行き事の次第を伝えた。
「どうですか、先生」
「別に良いよ」
自分の作品が映像化されるのはこれが初めてではないせいか、鬼村はしれっとしている。
「でも一つ条件がある」
「はい」
「マチミ役、アタシにやらして」
予想だにしない言葉に、複数の疑問が全く同時に頭の中で弾けた。散らばる疑問符の中からどれを最初にピックアップするべきだろう。私はとりあえず、手ごろな質問を手繰り寄せた。
「ええと、マチミって誰でしたっけ」
「一巻の最後で二、三、意味深な事言うおばさん」
「モブですか?」
「そう」
言われればそんなキャラが居たような気もする。
「まあ、勿論、お願いする事は出来ますけど……」私は腑に落ちないまま鬼村に疑問をぶつけた。「なんでその役やりたいんですか? 先生、役者とかやってましたっけ?」
鬼村は何もない(はずの)空中をぼんやり眺めながら、抑揚のない声でぽつぽつと語り始めた。
「この本、昔アニメ化したのは知ってるでしょ。その時アタシ、マチミ役でカメオ出演するって話になってね。スタジオ行って収録したのよ、4つくらいだったかな、台詞。で、収録は無事に済んだんだけど、後日連絡が来てさ。アタシの音声だけ何故か録音した台詞じゃない事言ってるから使えないんだって。何言ってるか聞いたら、分からないって言うのよ。だから結局カメオ出演流れちゃったんだよね」
あまりにも鬼村らしい事件に思わず閉口する。
その音声を聞いてしまったスタッフの方に、何も起きていなければいいんだけど。
「……つまりリベンジしたいって事ですか?」
「違う違う!」
鬼村は醜い顔をしかめるようにして笑い、大きな歯をむき出しにした。
「実写なら今度は何起きるかなと思ってさ」
「却下です」
やんやとぶーたれる鬼村を前に、この人は撮影現場に遊びに行かせるまいと固く誓った私だった。
2
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
父の周りの人々が怪異に遭い過ぎてる件
帆足 じれ
ホラー
私に霊感はない。父にもない(と言いつつ、不思議な体験がないわけではない)。
だが、父の周りには怪異に遭遇した人々がそこそこいる。
父や当人、関係者達から聞いた、怪談・奇談を集めてみた。
父本人や作者の体験談もあり!
※思い出した順にゆっくり書いていきます。
※場所や個人が特定されないよう、名前はすべてアルファベット表記にし、事実から逸脱しない程度に登場人物の言動を一部再構成しております。
※小説家になろう様、Nolaノベル様にも同じものを投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる