神獣転生のはずが半神半人になれたので世界を歩き回って第二人生を楽しみます~

御峰。

文字の大きさ
4 / 48

第4話 死別

しおりを挟む
 ~15年後~

「ルーク! そっち行ったぞ!」

【う~ん! 任せて! ファイアランス~!】

 大きな地鳴りと共に走り抜ける巨大な猪に、上空から待ち伏せしていた弟の大きな炎の槍が貫く。

 突き刺された猪は数秒もしないうちに全く動かなくなった。

「ナイス~ルーク!」

【兄ちゃんのおかげだよ~】

 すっかり3メートルくらいの大きさに成長した弟が、一瞬で50センチ程の大きさに変形して俺の左肩に乗ってくる。

 俺の肩には定位置があり、右肩はクレア、左肩はルークだ。

 二人とも常に無属性の重力魔法を使ってくれて、肩に乗っていたとしても重さは全く感じない。

 神鳥ともなれば、常に魔法で身を守っているため、息を吸うように魔法が使えたりする。

 俺は目の前に横たわっている自分の身体の十倍程の猪に向かって両手を前に出す。

「炎ノ手」

 両手から数メートルの大きさの手の形をした炎が猪をわしづかみする。

 そのまま猪を持ち上げて、とある場所に向かって走り始める。

 今の俺は前世から比べると驚くほどの身体能力を持っており、100メートル何秒とかの次元ではなくなった。

 森の景色が超高速に通り過ぎて、たどり着いたのはとある洞窟の前だ。

 ゆっくりと暗い洞窟の中に入っていく。

「ただいま~」

 俺の声が反響して洞窟の中にまで響き渡る。

 少しすると奥からクレアの【おかえり~】という声が届く。

 そして、洞窟の最奥の広間に到着する。

「ただいま。母さん」

 丸まって、疲れた表情で見下ろすのは、俺達が生まれた時とは打って変わり、弱弱しくなったお母さんだ。

【おかえり。アル。ルーク】

 ルークが肩から飛び出し、そのままお母さんの胸にダイブする。

 そんな微笑ましい姿を眺めながら狩ってきた猪をいつもの場所に置く。

 しかし、そこにはもう一体の猪が置かれていた。

「…………母さん~ちゃんとご飯食べないと元気になれないぞ~」

 振り向き、こちらを申し訳なさそうに見つめる母さんに、心にも思ってない言葉を投げる。

 できるなら…………母さんには長生きして欲しいというのが本心だ。

 でもその願いが届かない事くらい、誰よりも俺が知っている。

 その最も大きな原因を作ったのが他でもなく――――。

【アル。おいで……】

 そんなことを思っていたのがバレたみたいだ。

「母さん」

 母さんの胸の中に飛び込む。

 暖かい体温が伝わってきて、母さんが俺達をどれだけ愛してくれているかがすぐに分かる。

【いつも、ごめんね】

「ううん。俺こそごめん」

【ふふっ。アル。貴方は優しいお兄ちゃんに育ってくれて嬉しいわ】

「まだだよ。もっと母さんに見てほ…………」

 続きが言えなかった。

【さあ、こちらにおいで。子供達よ】

 クレアと共に三人で母さんの羽根の中に抱きつく。

【これから話す事をしっかり聞いてね。私の寿命はもう終わりを迎えるわ】

「っ!? か――――」

【でも悲しむ必要はないわ。私は……ずっと君達の中に生き続けるのだから】

 母さんの言葉に、自分の無力さが心の底から溢れてくる。

 異世界に転生して、俺は前世よりも遥かに大きな力を手に入れたはずだ。

 今では自分よりも何倍も大きい魔物を倒せるし、スキルや魔法を手に入れる事ができた。

 なのに、母さんを助ける事ができない。

 俺が…………俺か母さんから生まれ、母さんのを奪い取ってしまったからだ。

【アル。貴方は長男として生まれて、妹と弟の事を第一に考え、誰よりも優しい兄になってくれたわね。貴方の母で私は幸せよ】

「母さん…………」

【クレア。貴方は少し意地悪なところがあるけれど、とても優しい事を知っているわ……】

【お母さん!? 私、もうわがまま言わないから!】

【ふふっ。弟ともちゃんと仲良くするのよ?】

【する! するから!】

 クレアの泣き声に、俺も止まる事ない涙が溢れる。

【ルーク。兄と姉が貴方を守ってくれるわ。だから自分の意志をしっかり持って羽ばたくのよ?】

【ママ…………】

【私の子供達。愛しているわ。今までも、これからも…………】

 日々弱くなっていく母さんを見てきた。

 俺達の成長をどうにか見たいと…………この15年間、懸命に…………必死に生き続けてくれた。

 時には喧嘩もした。

 だって、日々食べる量が減っていくんだ。そりゃ怒る。

 でも……その怒る気持ちを母さんはちゃんと分かってくれて、いつも笑顔で【ごめんね】と言ってくれた。

 前世の記憶があって、はじめは母さんが神鳥だから気後れしてしまう自分もいた。

 でも誰よりも親身に俺という一人の人を、自分の息子を真っすぐ見つめてくれた。

 妹と弟が喧嘩したら困ったように笑うのも、決まったかのように俺の背中を優しく押してくれるから、いつもそうしてくれるまで二人を止める事はしなかった。

 背中を押してくれる母さんの羽は…………日々日々弱くなっていくのを感じていた。

 母さんがもう自力では立つ事もできなくなったあの日から、俺達は母さんの前では絶対に泣かないと決めて、三人で山の上で沢山泣いた。

 だから、最後くらいは母さんと笑顔で別れたい。

「クレア。ルーク。笑おう。母さんに……笑顔を……届けるんだ」

【お兄ちゃん……】

【兄ちゃん……】

 声を出す事すら大変なくらい弱っていたのに、今日はやけに喋る母さんは、もう今日という日を決めていたんだと思う。

 母さんは少しだけ開いた目で俺達を優しく眺めていた。

 本当に幸せそうに俺達を眺めている。

「母さん。心配すんな! 俺達はずっと家族だ! これからも妹と弟と一緒に楽しく生きていくから! だから、だからっ…………ゆっくり眠っていい。家族は俺が絶対守るから!」

 返事は返ってこない。でも聞こえてくる気がした。【頼んだわ。私の大好きな息子】。

 そうして、俺達の母さんは目を閉じ、その長い生涯に幕を閉じた。

 朱雀という種族は火を象徴する種族だ。

 死んだ朱雀は――――その場で灯火となり、姿形すら残らない。

【私っ……もう、喧嘩しないっ…………お母さんと……約束したっ……から…………】

【僕も弱音吐かない……ちゃんと……約束守るっ!】

 俺の胸で大きく泣いている妹と弟を抱きしめる。

 俺達はその日、母さんのために一日中大泣きした。

 もう会う事ができない母さん…………俺を産んでくれて本当にありがとう。俺に道しるべを示してくれて本当にありがとう。

 これから妹と弟は俺が守っていくと誓った。
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

【完結】スキルを作って習得!僕の趣味になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》 どんなスキル持ちかによって、人生が決まる。生まれ持ったスキルは、12歳過ぎから鑑定で見えるようになる。ロマドは、4度目の15歳の歳の鑑定で、『スキル錬金』という優秀なスキルだと鑑定され……たと思ったが、錬金とつくが熟練度が上がらない!結局、使えないスキルとして一般スキル扱いとなってしまった。  どうやったら熟練度が上がるんだと思っていたところで、熟練度の上げ方を発見!  スキルの扱いを錬金にしてもらおうとするも却下された為、仕方なくあきらめた。だが、ふと「作成条件」という文字が目の前に見えて、その条件を達してみると、新しいスキルをゲットした!  天然ロマドと、タメで先輩のユイジュの突っ込みと、チェトの可愛さ(ロマドの主観)で織りなす、スキルと笑いのアドベンチャー。

異世界帰りの俺、現代日本にダンジョンが出現したので異世界経験を売ったり配信してみます

内田ヨシキ
ファンタジー
「あの魔物の倒し方なら、30万円で売るよ!」  ――これは、現代日本にダンジョンが出現して間もない頃の物語。  カクヨムにて先行連載中です! (https://kakuyomu.jp/works/16818023211703153243)  異世界で名を馳せた英雄「一条 拓斗(いちじょう たくと)」は、現代日本に帰還したはいいが、異世界で鍛えた魔力も身体能力も失われていた。  残ったのは魔物退治の経験や、魔法に関する知識、異世界言語能力など現代日本で役に立たないものばかり。  一般人として生活するようになった拓斗だったが、持てる能力を一切活かせない日々は苦痛だった。  そんな折、現代日本に迷宮と魔物が出現。それらは拓斗が異世界で散々見てきたものだった。  そして3年後、ついに迷宮で活動する国家資格を手にした拓斗は、安定も平穏も捨てて、自分のすべてを活かせるはずの迷宮へ赴く。  異世界人「フィリア」との出会いをきっかけに、拓斗は自分の異世界経験が、他の初心者同然の冒険者にとって非常に有益なものであると気づく。  やがて拓斗はフィリアと共に、魔物の倒し方や、迷宮探索のコツ、魔法の使い方などを、時に直接売り、時に動画配信してお金に変えていく。  さらには迷宮探索に有用なアイテムや、冒険者の能力を可視化する「ステータスカード」を発明する。  そんな彼らの活動は、ダンジョン黎明期の日本において重要なものとなっていき、公的機関に発展していく――。

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

処理中です...