神獣転生のはずが半神半人になれたので世界を歩き回って第二人生を楽しみます~

御峰。

文字の大きさ
21 / 48

第21話 優しさ

しおりを挟む
 ――【才能『先導者』の特典が提示されます。】

 ――【導かれた者は『導かれし者』と認定され、隠れ加護に『導かれし者』が付与されます。】


 宿屋に戻り、自分を落ち着かせようとシャリーが淹れてくれた紅茶を飲みながら思考の海に耽っていると、アナウンスが聞こえてきた。

 『道しるべ』の地図に淡く美しい光を発している小さい点が一つ見かけられる。場所は錬金術点なので間違いなくビゼルさんだろう。

 赤い点には覚醒者と表記されているのも確認できる。

 そもそも『道しるべ』に人が映っているのは初めて見たけど…………これって、考え方によってはプライベートも何もないよな。まぁ建物の名前とか見取り図とか一瞬で分かるんだから、いまさらと言えばいまさらだけど。


 ――【特典として『導かれし者』には全てのステータスの一割上昇が与えられます。】


 ん!?

 特典の内容って、先導者自身ではなく、覚醒者に力を与えるモノになっている。

 てっきり自分が強くなれるモノだとばかり思っていたから、意外な内容に驚いてしまったが、『先導者』という曖昧な才能の名前から考えて、そういうモノでも良いのかも知れないな。

 それもそうだけれど、この青い光は一体なんだろうか。

 間違いなく奴隷位置の鉄檻の中に入っている奴隷達なのは間違いない。

 青い光の点は全部で四つ。

 三つは鉄檻の中だが、一つは建物の中に入っている。

 建物の中に入っている青い光に注目していると、建物の中を歩いていた。

 これは…………奴隷ではないのか?

 思っていたよりも自由に建物の中を歩いているし、動く速度も非常に速い。

 もしかして奴隷ではないのかも知れない。

「アルマくん? 大丈夫?」

 道しるべの地図に集中していると、シャリーが心配そうな表情でこちらを見つめていた。

「奴隷の事で少し考えていてね」

「ずっと難しい顔をしているもんね…………あ、あのね! 私で良ければ、相談に乗るよ? 力になれるか分からないけど……」

 いつからだっただろうか。

 大学に進学するまで女性というモノに全く興味はなく、周りのクラスメイト達は可愛い女子の事を話し合っていたっけ。

 俺にはそういう恋愛だの愛だの遠い世界だと思って、大学に進学したけど、自分が思っていたより恵まれていて、俺に近づいて来てくれた女性は多かった。

 大人の関係なんて持つ事もあったけど、そのどれもが虚無感を覚えて、恋愛や愛は長続きはしなかった。

 そのどれもが俺のせいなのは間違いなくて、だからこそ自分には恋愛は向いていないんだと思っていた。

 就職してからも近づいて来た同僚も多かったが、どれも上司の嫌味を買うだけの装置にしか見えなかった。

 理不尽である世界に俺はいつしか何もかもを諦めていた。

 いま、俺の目の前には今にも泣きそうな可愛らしい女性がいる。

 最初は神獣である妹弟のために近づいて来たはずだけど、彼女の優しさは自分を与えるだけで何かの見返りを求めるモノではないと知った。

 ただ純粋にアルマという一人の人間を心から心配しているからこそ、彼女の心が伝わってくる。

 彼女だけではない。

 道しるべの青い光から伝わってくる気持ちは、何もなかった俺の心を満たすかのような優しさが伝わってくる。

 まるで――――――母さんのように。

「クレア。ルーク」

【【あい~!】】

 いつの間にか仲良くなったようで、妹弟がシャリーの両肩に乗る。

 それもまた彼女の優しさに触れたからこそ、妹弟もこうしていると思う。

「今日見て来た奴隷というのは、借金を背負わされてお金という権力によって、主の命令を聞くしかできない存在なんだ。でも彼らは最初から奴隷だった訳ではない。必ず何かの理由によってああなっているはずだ。きっと自業自得で奴隷堕ちになった者もいるだろうけど、全員が全員そうだとは思わない。俺は彼らを見捨てたくないと思う。ふたりはどうだい?」

 前世の記憶がなければ、もしかしたら俺も奴隷を見て、そういう想いを抱く事はなかったかも知れない。

 だからこそ、純粋な心を持つふたりにこそ、聞いてみたくなった。

【奴隷はよく分からないけど、ご飯を食べる時もお金が必要だし、こういう宿屋やお家の事も知って思ったのは、こういうルールを決めているから生きやすいんだろうなと思う。猫ノ手で働いている人達もみんな優しいし一生懸命に生きているし、シャリーちゃんも優しくて凄く好き。だからお兄ちゃんが優しい人を助けたいというのは大賛成~! 敵はボコボコにしてやればいいし!】

【ぼ、僕も! 兄ちゃんが優しい人だと僕も嬉しいな! で、でも僕達も生きるために沢山の魔物を狩ってきたのは事実で…………】

【バカルーク! それは仕方ないでしょう! だから私達は自分達が食べる分以上は狩ってないないんだから!】

【う、うん! 僕と兄ちゃんも必要分しか狩ってないし、いたずらに命を粗末にはしてない!】

【うんうん。お母さんからも命は大切にしてあげないとダメだって言ってたからね~】

 クレアとルークの想いを聞いて、自然と嬉しくなり笑みがこぼれた。

 ふたりとも僕が知らないだけで、色んな人や色んなモノを沢山見て考えるようになったんだね。

 …………。

 …………。

 必要以上に命は粗末にしてない。うん。うん。

「ぷふっ。アルマくんの顔、変なの~」

 俺を見ていたシャリーがクスっと笑う。

「や、やましいことはないから!」

「アルキバガン森~?」

「ぐはっ! あ、あれは……ほら、植物は命…………ではあるんだけど、ほら、色々?」

「うんうん。でも良かった~」

「うん?」

「アルマくんがやっと笑ってくれたから。それに聞こえてはいないけどクレア様とルーク様も凄く優しくて、アルマくんも優しい人で」

 妹弟達の声は聞こえていないだろうけど、色々察したようでシャリーが満面の笑みを浮かべた。

 やっぱり美少女ってズルいなと思いながら、自分がやった事に少し後ろめたさを感じずにはいられなかった。
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

【完結】スキルを作って習得!僕の趣味になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》 どんなスキル持ちかによって、人生が決まる。生まれ持ったスキルは、12歳過ぎから鑑定で見えるようになる。ロマドは、4度目の15歳の歳の鑑定で、『スキル錬金』という優秀なスキルだと鑑定され……たと思ったが、錬金とつくが熟練度が上がらない!結局、使えないスキルとして一般スキル扱いとなってしまった。  どうやったら熟練度が上がるんだと思っていたところで、熟練度の上げ方を発見!  スキルの扱いを錬金にしてもらおうとするも却下された為、仕方なくあきらめた。だが、ふと「作成条件」という文字が目の前に見えて、その条件を達してみると、新しいスキルをゲットした!  天然ロマドと、タメで先輩のユイジュの突っ込みと、チェトの可愛さ(ロマドの主観)で織りなす、スキルと笑いのアドベンチャー。

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

異世界帰りの俺、現代日本にダンジョンが出現したので異世界経験を売ったり配信してみます

内田ヨシキ
ファンタジー
「あの魔物の倒し方なら、30万円で売るよ!」  ――これは、現代日本にダンジョンが出現して間もない頃の物語。  カクヨムにて先行連載中です! (https://kakuyomu.jp/works/16818023211703153243)  異世界で名を馳せた英雄「一条 拓斗(いちじょう たくと)」は、現代日本に帰還したはいいが、異世界で鍛えた魔力も身体能力も失われていた。  残ったのは魔物退治の経験や、魔法に関する知識、異世界言語能力など現代日本で役に立たないものばかり。  一般人として生活するようになった拓斗だったが、持てる能力を一切活かせない日々は苦痛だった。  そんな折、現代日本に迷宮と魔物が出現。それらは拓斗が異世界で散々見てきたものだった。  そして3年後、ついに迷宮で活動する国家資格を手にした拓斗は、安定も平穏も捨てて、自分のすべてを活かせるはずの迷宮へ赴く。  異世界人「フィリア」との出会いをきっかけに、拓斗は自分の異世界経験が、他の初心者同然の冒険者にとって非常に有益なものであると気づく。  やがて拓斗はフィリアと共に、魔物の倒し方や、迷宮探索のコツ、魔法の使い方などを、時に直接売り、時に動画配信してお金に変えていく。  さらには迷宮探索に有用なアイテムや、冒険者の能力を可視化する「ステータスカード」を発明する。  そんな彼らの活動は、ダンジョン黎明期の日本において重要なものとなっていき、公的機関に発展していく――。

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

処理中です...