神獣転生のはずが半神半人になれたので世界を歩き回って第二人生を楽しみます~

御峰。

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第25話 粛清

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「ほぉ。その件、詳しく聞かせてもらいましょうか。ドスグ殿」

 廊下に響く冷たい声。

 一斉にみんなの視線が廊下の遥か先から声を響かせた張本人に向く。

 美しい金色の髪と冷たい瞳がドスグを睨んでいた。

「あ、貴方様は!?」

 ゆっくりと一歩ずつこちらに近づいてくる。

 夜の明かりを受けても光り輝く純白な鎧とマント。

 そこにはアルハマラン王国の紋様が美しく描かれていた。

「なんの騒ぎかと思って来てみれば、面白い事が起きていたようだな。それはそうと、さっきの話を詳しく聞かせてもらおうか? 奴隷達を騙したというのは?」

「ひい!? い、いえ! そ、それは、ち、違う……」

「ふむ。ドスグ殿に後ろめたさは全くないんだな?」

「もももも、もちろんですとも!」

「じゃあ、屋敷を調べさせてもらっても問題あるまいな?」

「!? か、か、かしこまり……ました…………」

 分かりやすく意気消沈する豚は、その場で座り込んだ。

「ア~シツムシツノ~ホンダナガ~」

「!? お、お前は何を言い出すんだ!」

「へ? いえ、俺はただ独り言を言ってみただけです」

「怪しい事を言うんじゃない!」

「別に怪しい事は何も言っていませんよ? ただ執務室と本棚が~としか」

「それは怪しいというモノじゃ!」

 この豚…………分かりやすいな~。

 俺達のやり取りを見ていた美形の彼は、小さく笑みを浮かべて俺達を通り抜ける。

 恐らくそのまま執務室に向かうのだろう。

「べ、ベルハルト様!? ど、どちらに!?」

「自由に調べてもいいのだろ? ドスグ殿の執務室にな」

「ま、待ってくだされ~!」

 次の瞬間、廊下の奥から現れた無数の兵士達が俺達を囲む。

「全員動くな! この一件が終わるまで動く事は許さん!」

 あとから現れた緑色のマントを着用したイケメンが声を上げる。

 俺と私兵はすかさず両手を上げる。

 彼らは王国正規軍で、彼らの介入により今回の奴隷市場は幕を閉じた。



 ◆



「さて、アルマくんと言ったな?」

「はい。アルマです」

「君のおかげでドスグの悪事を全て暴く事が出来た。陛下に代わり感謝を伝えよう。ありがとう」

「いえいえ~こちらこそ、助かりました。あの時、来てくださらないとどうなった事やら……」

 ドスグの執務室に集まった俺と騎士ベルハルト様、その横にソワソワしているシャリーやギルドマスターがいる。

「思っていた以上に黒かったんですか?」

「ああ。想像以上だった。とてもじゃないがドスグ一人でやったとは思えん」

「でしょうね。まぁ、そっちも近々……」

「…………これ以上は何も話すまい。それはそうと、今回の功労者であるアルマくんには報酬がある。何か欲しいモノはあるかい?」

「ええ。ドスグが持っていた全ての奴隷達の権利と、俺が捕まえた黒い装束の人達の権利をください」

「それはいくらなんでも無茶苦茶では?」

 美男子とはいえ、その目は上に立つ者として、威圧感が凄まじい。

 普通の人なら睨まれただけで立つことも出来なさそうだ。

「そもそも黒い装束の人達の事がバレると国としても良くないのでは? なかった事にするだけですよ?」

「…………」

「ですから報酬として奴隷達の権利をください。あ~外の奴隷達だけで構いません。ベルハルト様が鑑賞奴隷を欲していたとは思いもしませんでした」

「――――――くっくっ、あーははは!」

 美男子の美しい金髪が揺れ動く。

 笑うだけで絵になるってズルいっ!

「まさかここまで交渉上手だとはな。俺の負けだ。アルマくんの提案を全て飲もう。ただし、一つだけ伝えておこう」

「どうぞ?」

「奴隷達を蔑ろにした場合、俺は君を一生許さないだろう」

「それはもう。ただ、そういう気持ちがあるなら、二度とああいう風にならないように頑張ってください」

「……それもそうだな」

「それと、メイドさんは引き渡します」

「………………どこまで知っている?」

「全く分かりません。ただそういう・・・・人なんだろうなと思っただけです」

「…………分かった。感謝する」

 ベルハルト様と握手を交わす。

 部屋を後にしたベルハルト様を見て、ギルドマスターが大きな溜息を吐く。

「マスター? 黒い装束の人達の正体は知ってるんですか?」

「いや。正確には知らないが、聞いた事はある。恐らくだが、奴隷を解放する力を持った集団――――――『リベレイト』という集団だと思われる」

 リベレイト……か。覚えておこう。

「では彼女達と話し合ってみましょうか」

「…………よろしく頼む」

 ギルドマスターに頼まれるのも不思議だが、奴隷問題で悩んでいる人は俺が思っていた以上に多い。彼もまたその一人だという事だ。もちろん、ベルハルト様も、王国もね。

 執務室を後にして、彼女達を捕まえている部屋に向かった。
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