唇を隠して,それでも君に恋したい。

初恋

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ボクの"エラブヒト"

夜風ウタウ,ボクとキミの関係。

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2日の休日を挟み,僕らはまた日常に戻る。

楽しかったあれこれや,予想しなかったハプニングは,すごく前のことのように思えるけど。

僕にとって非日常な存在が,夢じゃないと言うように連絡をくれた。



『飯行かない?』



からからとドアを開け,のれんをくぐる。

その先で,敦は僕を待ち水を飲んでいた。

これって,やっぱりデート? みたいな。

平常を心がけて,僕はきゅっと唇を結んだ。



「おまたせ,敦。もう注文した?」

「いやまだ。何食べる?」



すっと引かれた椅子に,僕はとくんとときめく。

だめだだめだと首を振り,何がだめなのかもよくわからなくなってしまう。

僕はどうしていいかわからなくて,敦の隣りで水を飲んだ。



「敦はある? 僕と何か,その……したいこと。僕は,だから,君のことが好きだったけど。まさか振り向いてくれるなんて考えたこともなかったから。実を言うとどうしていいか分からない」



でも何か望んでくれるのであれば,僕はそれに出来る限り答えたいとも思う。



「デートしたい」



あまりにも余地なく返ってきた答えに,僕はびっくりと目を丸くした。

甘く広がる響き。

だけど,まともなプランも浮かばない。

もじもじと困っていると,敦は続けた。



「クレープ食べたり,こうやって2人で飯来たり。無難に水族館に行ってみたり。ただ,2人で過ごしてみたい」



付き合っているからこそできること。

いつもの皆がいない場所で,ただ2人でいること。



『へいお待ち』

「……うん」



僕は運ばれたラーメンのスープに口をつけて,ぽそりと肯定を示した。



「あと」



すっかり気を抜いていた僕は,ラーメンをツルツルと啜っていたけれど。

譲れないと言うように強く続いた言葉で,僕はむせた。



「抱きしめたい」

「なっ……何を」



そんな,真顔で言うことか?!?

そんな風に思われるのは嬉しい。

だけど,そんな。



「たまにでいいから。2人きりの時,抱きしめたいと思った時に抱きしめたい」



こんな風に,と。

敦は片手を伸ばし,ぼくの頭を自身の方に傾ける。

僕はぴゅっと離れて,またうんと答えた。

慣れない距離にどうしてだろう。

僕の方がずっと好きなはずなのに。

こうもこの関係を受け入れるのに時間がかかり,どこか負けたような気持ちになるんだろう。




「さっきの」

「ん?」

「1個ずつなら,いいよ。クレープでもたい焼きでもたこ焼きでもラーメンでも」

「食いもんばっかだな」

「うるさいな。大きい魚を見るのは苦手なんだよ」




敦が笑う。

僕はそれだけでホッとして,泣きたくなるくらい嬉しいんだ。

僕から返せるものはこんな言葉しかない。

急にいろんなことをするのは怖いから……

1つずつでいい。

1つずつ,作っていけたらそれで。

僕らはいつか,この関係にも慣れて。

幸せになれるかもしれない。

そんなことを夢見ながら,敦と仮にも男である僕はラーメンを完食した。

夜風に吹かれ,不思議な気持ちになる。

そわそわとして,つい敦を向いた。



「送る。行こう」

「……ううん,いい」



僕らーS・Pーは,国運営の施設で育つ。

今は学校の位置関係上一人で暮らしているけれど,それを言えばきっと心配してしまう。

僕が敦を送ってもいいけど,今日はそこまで望まないだろう。

だから


「ん」



僕はバッと両手を広げて横を向く。



「え?」



恥ずかしいけど。

敦の言葉は,どれも同意するものだった。

つまり,これは



「だ……抱きしめるんだろ……ふてぁ……りの,とき」



最悪だ。

ハチャメチャに噛んだ。

赤くなる頬に,それでも唇を噛んで待っていると。

ぎゅっと暖かい体温に包まれた。

ぽす,と顎が頭に置かれる。

僕は恐る恐る,その背中に手を回した。

ドキドキと,僕の鼓動が聞こえる。

ふと,敦が吹き出した。



「は。……やべー」



その,子猫でも愛でるような声色に。

僕はその腕を強める他無い。

ちょっとハグするだけなのに,そんな幸せそうな声,出すなよ……

とんと胸板を押す。

これ以上は僕のほうがどうにかなってしまいそうだ。



「おしまい。帰るぞ」

「ん」



夜風に吹かれる頬は,いつまでも,いつまでも。

ずっと赤いままだった。

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