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ロカール日常シリーズ ▶️50話
【商人さんの護衛】#3 日帰り出張が、温泉旅館でお泊まりに
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「おー、お疲れー!無事逃げきったな!」
「…ルキが連れてってくれたから。」
「ああ、なる。…おっけ、じゃあ、まあ、後は、エルが追いつくの待ってのんびり行こうか。」
「うん。…あの、カガトさん、大丈夫でしたか?」
「え!?あ、はい!私は何とも…」
護衛対象をかなり走らせてしまった。運動慣れしていなさそうなカガトさん、きっと疲れ切っているだろうと思っていたけれど─
「いやー、私、これだけ全力で走ったのは、久しぶり、…いえ!生まれて初めてでして!」
「…」
「しかも!周りの景色があっという間に過ぎていく!まさに風のように走るという体験!いやはや、何とも、素晴らしい経験をさせて頂きました!」
「え?そうっすか?いやー、楽しんでもらえたんなら、良かったです。」
「ええ!シオン殿の付与術、速度強化というのですか?お見事の一言に尽きる!」
(…えっと、これでいいの?…かな?)
「はっはっは」とイイ笑顔で笑っている二人。だけど、多分、何か違う。違うけど、依頼主に不満が無いならいいんだろう。後は、エルが無事に荷物を運んでくれれば、と考えたところで見えてきた。
「…エル、あと、ルキも。」
「お。二人して帰ってきたか。いやー、ほんと、今回、結構危なかったからなー。みんな無事で良かったな。な?」
「…うん。」
二人と合流し、荷物の無事も確認してから、ボッツの街への護衛を再開した。後半、特に問題が発生することもなく、お仕事は完了。カガトさんに、「機会があればまた是非」とのお言葉も頂いて、お別れした。
「さて、んじゃ、帰るかー。」
「えーっ!?温泉はー!?お・ん・せ・ん!」
「あー、んー、けど、温泉はさー。」
兄の視線がこちらを向く。一応、妹の性別偽装に気を遣ってくれてるらしい。
「…いいよ、別に。泊まっていっても。」
「え、けど、セリは…」
「温泉、得意じゃないけど、…私は私で好きにしてるから。」
「んー、でもなー。」
悩む兄に、横からルキが口を挟んだ。
「泊まってこーぜ。シオン、お前、足、どっかやってんだろ?」
「え…?」
ルキの言葉に兄の足を見る。ボロベアーにやられた怪我は完治済み。歩き方も、特に気になるようなことはなかったのに─
「右足、ちょっと庇ってんな。痛むのか?」
「あー、え?けど、ほんと、ちょっとだけだよ?痛みもないし、ちょっと違和感ってだけで。」
(…気づかなかった。)
兄と一番一緒にいる私が気づかないくらいの違和感。それに気づけるルキの観察力は凄い。
「えー!ごめん!僕の回復、完璧じゃなかった!?」
二人のやり取りを聞いてオロオロしだしたエルの言葉に、兄が首を振る。
「違う違う。怪我してすぐ速度強化で爆速で走ったのがマズかっただけ。痛みも無いし、明日には治ってるって。」
「でもー!」
泣きそうになってしまったエルの肩をポンポン叩く。
「兄さんのは自業自得です。ランナーズハイになって楽しんでたから。」
「あははははは!いや、メッチャ楽しかったんだって!」
笑って誤魔化す兄にため息をついた。
「…でも、念のため、今日は本当に泊ってく。兄さんは、温泉つかって一日で治して。」
「おお!いいな!ソレ!なんか、ソレっぽい!」
ソレっぽいって何だ、と思いながら、今夜の宿を求めてみんなで歩き出す。
(温泉、か…。こっそり、女湯に入る?危ないかな。…じゃあ、混浴?)
そこでルキにばったり、なんてことを妄想して、茹った頭を小さく振る。
「…ルキが連れてってくれたから。」
「ああ、なる。…おっけ、じゃあ、まあ、後は、エルが追いつくの待ってのんびり行こうか。」
「うん。…あの、カガトさん、大丈夫でしたか?」
「え!?あ、はい!私は何とも…」
護衛対象をかなり走らせてしまった。運動慣れしていなさそうなカガトさん、きっと疲れ切っているだろうと思っていたけれど─
「いやー、私、これだけ全力で走ったのは、久しぶり、…いえ!生まれて初めてでして!」
「…」
「しかも!周りの景色があっという間に過ぎていく!まさに風のように走るという体験!いやはや、何とも、素晴らしい経験をさせて頂きました!」
「え?そうっすか?いやー、楽しんでもらえたんなら、良かったです。」
「ええ!シオン殿の付与術、速度強化というのですか?お見事の一言に尽きる!」
(…えっと、これでいいの?…かな?)
「はっはっは」とイイ笑顔で笑っている二人。だけど、多分、何か違う。違うけど、依頼主に不満が無いならいいんだろう。後は、エルが無事に荷物を運んでくれれば、と考えたところで見えてきた。
「…エル、あと、ルキも。」
「お。二人して帰ってきたか。いやー、ほんと、今回、結構危なかったからなー。みんな無事で良かったな。な?」
「…うん。」
二人と合流し、荷物の無事も確認してから、ボッツの街への護衛を再開した。後半、特に問題が発生することもなく、お仕事は完了。カガトさんに、「機会があればまた是非」とのお言葉も頂いて、お別れした。
「さて、んじゃ、帰るかー。」
「えーっ!?温泉はー!?お・ん・せ・ん!」
「あー、んー、けど、温泉はさー。」
兄の視線がこちらを向く。一応、妹の性別偽装に気を遣ってくれてるらしい。
「…いいよ、別に。泊まっていっても。」
「え、けど、セリは…」
「温泉、得意じゃないけど、…私は私で好きにしてるから。」
「んー、でもなー。」
悩む兄に、横からルキが口を挟んだ。
「泊まってこーぜ。シオン、お前、足、どっかやってんだろ?」
「え…?」
ルキの言葉に兄の足を見る。ボロベアーにやられた怪我は完治済み。歩き方も、特に気になるようなことはなかったのに─
「右足、ちょっと庇ってんな。痛むのか?」
「あー、え?けど、ほんと、ちょっとだけだよ?痛みもないし、ちょっと違和感ってだけで。」
(…気づかなかった。)
兄と一番一緒にいる私が気づかないくらいの違和感。それに気づけるルキの観察力は凄い。
「えー!ごめん!僕の回復、完璧じゃなかった!?」
二人のやり取りを聞いてオロオロしだしたエルの言葉に、兄が首を振る。
「違う違う。怪我してすぐ速度強化で爆速で走ったのがマズかっただけ。痛みも無いし、明日には治ってるって。」
「でもー!」
泣きそうになってしまったエルの肩をポンポン叩く。
「兄さんのは自業自得です。ランナーズハイになって楽しんでたから。」
「あははははは!いや、メッチャ楽しかったんだって!」
笑って誤魔化す兄にため息をついた。
「…でも、念のため、今日は本当に泊ってく。兄さんは、温泉つかって一日で治して。」
「おお!いいな!ソレ!なんか、ソレっぽい!」
ソレっぽいって何だ、と思いながら、今夜の宿を求めてみんなで歩き出す。
(温泉、か…。こっそり、女湯に入る?危ないかな。…じゃあ、混浴?)
そこでルキにばったり、なんてことを妄想して、茹った頭を小さく振る。
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