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S級試験 ▶34話
#23 許せなくてマウントとりました。反省は…
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「は…?」
気が付いたら、声が出ていた。かなり、攻撃的な「は?」が。
(だって、え…?何言ってるの、この人…?)
本気?本気なんだろうか?
(自分は、他の人が好きだけど…?ルキは自分のことを好きなんだから…?その人との関係を何とかしろ、と…?)
「…は?」
「え…、ちょっと、セリちゃん、どうしたの、目がマジだよ?」
「セリ…?」
エルとルキに名前を呼ばれた気がするけれど、それどころではない―
「根拠は何ですか?」
「え?」
嗚咽も余韻もなく、綺麗に涙を止めたリリーに近づき、対峙する。
「ルキがあなたのことを好きだという根拠です。」
「そ、れは、だって…」
「だって?」
「…パーティを組んでいた頃、仕事で困っていたら、必ずフォローしてくれて…」
「なるほど。」
リリーの主張に頷く。とてもルキらしい話だと思ったから。
「私も、先日、仕事でナノヌーンの対処に大変困っていたんですが、ルキが代わりに一人で依頼をこなしてくれました。つまり…」
「…」
「ルキは、私のことが好き、ということでいいでしょうか?」
「っ!?それだけじゃなくて!仕事が上手くいった時は必ず褒めてくれて!」
「私もよく褒めてもらいます。何なら、頭まで撫でてもらえますが?あなたも?」
「っ!?私は!だって、それは、私はカッシュの恋人だから、そういうことは…」
「そうですか?何なら、私は、長距離移動の際は、依頼中にも関わらず馬車に乗れと気を遣われますが?」
「…」
「お風呂上りの一杯はルキのおごりで、濡れた髪はふいてもらえます。悪い女の誘惑からは守ってもらえますし、飲んだ帰りは部屋まで送ってもらえます。…何なら、マントはルキのお下がりですが?」
「…」
「あなたも?」
「っ!?」
リリーの顔が歪んだ。先ほどまでの儚げな雰囲気をかなぐり捨てた、憎しみに燃える眼差しを向けられている。
(勝った…)
リリーを沈黙させたことに満足して、思わず口角が上がる。
「どうやら、私の方がよっぽど、ルキに好かれているみたいですね?」
「でも!そんなのっ!」
「ええ。それでも、ルキにとって私はただの弟分でしかありません。恋愛感情なんてなくても、ルキはそれだけ人に優しい。」
「でも、それはあなたが男だから…」
「性別は関係ないと思いますよ?」
「あなたのは、ただの親愛でしょう!?恋愛感情がないからできることだって…」
「そうですか?」
往生際の悪い台詞。でもきっと、彼女も理解し始めている。だからこそ、こんなに必死になって私の言葉を否定する。
さっさと、認めればいいのに―
「恋愛感情でいうのなら、むしろ女性の方が、ルキに甘やかされると思いますけど?」
「っ!?」
悔し気に顔を背けたリリー。その姿に、こっそり溜飲を下げた。ルキを、都合のいい男扱いしようとした彼女に、同情する気持ちなんてとっくに吹き飛んでいる。
(同族…、ルキ沼の住人かと思っていたのに、そうでもなさそうだし…)
ルキの優しさに落ちちゃったのではなく、利用しようとしたのだから、同情したこと自体が間違っていた。
沈黙が続き、それ以上、何も言わなくなったリリーに、ルキが歩み寄る。
「…もういいだろ?」
「…」
「送ってってやるからさ、カッシュんとこ帰れよ。で、二人でちゃんと話せ、な?」
「…」
(ズルい、なぁ…)
彼女なんて、放っておけばいいのに―
ここに来て、それが言えちゃうルキに、またズブズブとはまってしまう。
(逆にもう、コレで落ちないリリーさんを褒めたたえるべきなのでは…?)
横で見ている自分が勝手にはまってしまうくらいなのに、リリーは暗い顔でルキを無視したまま。ルキが、ため息をついて、
「…エル、悪い。こいつ送ってくの付き合ってくんねぇ?」
「うーん、その必要、無いみたいだよ?」
エルの言葉に、全員がエルの方を向く。窓辺に立つエルの視線の先、横に並んで窓から外をのぞけば、暗闇の中、つい先日、目にしたばかりの長身の姿が見えた。
「…カッシュさん。」
口から零れた男の名前に、リリーが分かりやすく反応する。落ち着きを無くした彼女に、ルキがその背を押した。
「…とりあえず、下、降りるぞ。ついてってやるから。」
「…」
ルキに促され、部屋を出ていくリリーの後ろ姿を見送る。暫くすれば、窓の外に二人の姿が見えた。並んで立つ三人、リリーの立ち位置がルキの後ろ、ルキの背中に隠れるように立っていることにモヤっとしたけれど、
「…一件落着、でしょうか?」
カッシュに手を取られたリリーが、ルキの側を離れ、カッシュの腕の中に飛び込んでいく。抱き合う二人を、側で見守っているルキ。
「…うーん、どうだろ?…また繰り返しそうだけどね、あの手のタイプは。」
「…」
エルの言葉に、「確かに」と思ってしまった。でも、だったらそれは、私達が王都から離れた後にして欲しい。切実に、そう思った。
気が付いたら、声が出ていた。かなり、攻撃的な「は?」が。
(だって、え…?何言ってるの、この人…?)
本気?本気なんだろうか?
(自分は、他の人が好きだけど…?ルキは自分のことを好きなんだから…?その人との関係を何とかしろ、と…?)
「…は?」
「え…、ちょっと、セリちゃん、どうしたの、目がマジだよ?」
「セリ…?」
エルとルキに名前を呼ばれた気がするけれど、それどころではない―
「根拠は何ですか?」
「え?」
嗚咽も余韻もなく、綺麗に涙を止めたリリーに近づき、対峙する。
「ルキがあなたのことを好きだという根拠です。」
「そ、れは、だって…」
「だって?」
「…パーティを組んでいた頃、仕事で困っていたら、必ずフォローしてくれて…」
「なるほど。」
リリーの主張に頷く。とてもルキらしい話だと思ったから。
「私も、先日、仕事でナノヌーンの対処に大変困っていたんですが、ルキが代わりに一人で依頼をこなしてくれました。つまり…」
「…」
「ルキは、私のことが好き、ということでいいでしょうか?」
「っ!?それだけじゃなくて!仕事が上手くいった時は必ず褒めてくれて!」
「私もよく褒めてもらいます。何なら、頭まで撫でてもらえますが?あなたも?」
「っ!?私は!だって、それは、私はカッシュの恋人だから、そういうことは…」
「そうですか?何なら、私は、長距離移動の際は、依頼中にも関わらず馬車に乗れと気を遣われますが?」
「…」
「お風呂上りの一杯はルキのおごりで、濡れた髪はふいてもらえます。悪い女の誘惑からは守ってもらえますし、飲んだ帰りは部屋まで送ってもらえます。…何なら、マントはルキのお下がりですが?」
「…」
「あなたも?」
「っ!?」
リリーの顔が歪んだ。先ほどまでの儚げな雰囲気をかなぐり捨てた、憎しみに燃える眼差しを向けられている。
(勝った…)
リリーを沈黙させたことに満足して、思わず口角が上がる。
「どうやら、私の方がよっぽど、ルキに好かれているみたいですね?」
「でも!そんなのっ!」
「ええ。それでも、ルキにとって私はただの弟分でしかありません。恋愛感情なんてなくても、ルキはそれだけ人に優しい。」
「でも、それはあなたが男だから…」
「性別は関係ないと思いますよ?」
「あなたのは、ただの親愛でしょう!?恋愛感情がないからできることだって…」
「そうですか?」
往生際の悪い台詞。でもきっと、彼女も理解し始めている。だからこそ、こんなに必死になって私の言葉を否定する。
さっさと、認めればいいのに―
「恋愛感情でいうのなら、むしろ女性の方が、ルキに甘やかされると思いますけど?」
「っ!?」
悔し気に顔を背けたリリー。その姿に、こっそり溜飲を下げた。ルキを、都合のいい男扱いしようとした彼女に、同情する気持ちなんてとっくに吹き飛んでいる。
(同族…、ルキ沼の住人かと思っていたのに、そうでもなさそうだし…)
ルキの優しさに落ちちゃったのではなく、利用しようとしたのだから、同情したこと自体が間違っていた。
沈黙が続き、それ以上、何も言わなくなったリリーに、ルキが歩み寄る。
「…もういいだろ?」
「…」
「送ってってやるからさ、カッシュんとこ帰れよ。で、二人でちゃんと話せ、な?」
「…」
(ズルい、なぁ…)
彼女なんて、放っておけばいいのに―
ここに来て、それが言えちゃうルキに、またズブズブとはまってしまう。
(逆にもう、コレで落ちないリリーさんを褒めたたえるべきなのでは…?)
横で見ている自分が勝手にはまってしまうくらいなのに、リリーは暗い顔でルキを無視したまま。ルキが、ため息をついて、
「…エル、悪い。こいつ送ってくの付き合ってくんねぇ?」
「うーん、その必要、無いみたいだよ?」
エルの言葉に、全員がエルの方を向く。窓辺に立つエルの視線の先、横に並んで窓から外をのぞけば、暗闇の中、つい先日、目にしたばかりの長身の姿が見えた。
「…カッシュさん。」
口から零れた男の名前に、リリーが分かりやすく反応する。落ち着きを無くした彼女に、ルキがその背を押した。
「…とりあえず、下、降りるぞ。ついてってやるから。」
「…」
ルキに促され、部屋を出ていくリリーの後ろ姿を見送る。暫くすれば、窓の外に二人の姿が見えた。並んで立つ三人、リリーの立ち位置がルキの後ろ、ルキの背中に隠れるように立っていることにモヤっとしたけれど、
「…一件落着、でしょうか?」
カッシュに手を取られたリリーが、ルキの側を離れ、カッシュの腕の中に飛び込んでいく。抱き合う二人を、側で見守っているルキ。
「…うーん、どうだろ?…また繰り返しそうだけどね、あの手のタイプは。」
「…」
エルの言葉に、「確かに」と思ってしまった。でも、だったらそれは、私達が王都から離れた後にして欲しい。切実に、そう思った。
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