【男装歴10年】異世界で冒険者パーティやってみた【好きな人がいます】

リコピン

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ダンジョン調査 ▶29話

#12 ダンジョン調査再開、最下層を目指して

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「雑魚わき!セリ、後ろ五!」

「!」

「ルキ!『毒霧』来る!」

「オケ!」

ダンジョンに潜って一週間、地下十階までサクサク進んでいったダンジョンの調査。地下十階のボス部屋、下半身が蛇で上半身が女性型のモンスター「ラミア」を相手に、ルキが無双していた。

ラミアの毒霧の範囲外に跳んだついでに、こちらのブルーサーペントを二体狩り、ラミアの注意が逸れる前に戻っていくルキ。こちらも、残り三体のサーペントを火球で倒した後、無防備に背中を向けるラミアに火球を打ち込む。その一撃でラミアが倒れた。

「セリちゃん、ナイスぅー☆」

「ナイスー!」

「ナイッスー!」

「…ルキも、ナイスー。」

今のは、ラミアの体力削り切ってくれていたルキのおかげ。発光したラミアの身体が、地面に溶けていくのを確認する。ラミアがダンジョンに飲まれたところで、エルが声を上げた。

「あ!階段、出たよ!」

「…ってことは、やっぱり、俺達が先頭行ってる、ってことだよね?」

エルが見つけたのは、階層ボスを一度でも倒せば出現する下層への階段。それが、「今」出現したということは、兄の言う通り、ラミアを討伐したのは私達が初めてということ。

「…黎明の人達、どこかで追い抜いたんでしょうか?」

「だなー。探知、引っかかんなかったから気づかなかったけど。…追跡、切れちまったのがマズかったよな。…悪ぃ。」

「いえ、悪くないです。ルキは、探知もして戦闘もして、大活躍してます。」

「…」

謝るルキに首を振る。

大体、初日にダンジョンから離脱した時点で切れてて当然の追跡スキル、それを地下五階までは確実に追えていたのだから、その方が凄い。規格外。

(流石、S級冒険者…)

内心でルキの凄さに惚れ直していたら、フッて笑ったルキ。その手がこちらに伸びてきて─

「っ!」

「…セリ?」

「あ…」

避けてしまった。

多分、頭をなでようとしてくれた手、それを、全力で回避、してしまった─

「す、すみません!戦った後で、まだ気が張ってたというか、ちょっと緊張してたというか、決して、避けようとしたわけじゃ…」

苦しい言い訳。どう見ても、思いっきり避けてた。ルキだって気づかないわけない。

「…あー、うん、いや、悪ぃ。俺も、ちょい無神経だったわ。」

困ったように、でも、こちらを安心させようとして笑ってくれるルキ。その笑顔にキュンとなる。

(私だって、本当は…)

だけど、仕方ない。今の私はお触り禁止、どころか、本当は近寄られるのも怖い。

(だって、多分、ちょっと匂う、はず…)

水魔法で何とか全員分の水を出し、身体は毎日拭いているけれど、髪を洗うのは数日おき。一応、自分だけこっそり清浄薬も使っているけれど、その効力は清浄スキルほどではないし、日に日に効力が弱まってきている気がする。一瓶使えば、ちょっとはマシ?にはなるけれど、綺麗にすっきり爽やかというわけにはいかない。髪も、少しベタついている気がする。

(だから、絶対に、絶対に、ルキにだけは…)

触られたくない。今は─

条件反射、本能レベルで避けてしまうのが良くないのは分かっているから、もう少し自然に、気づかれないよう距離をとるようにしなくては─

「セリちゃん!ルキ!行くよー!」

「はい!」

「…」

エルに呼ばれて移動を開始する。

(うん、これで暫くは…)

移動を開始してしまえば、スカウトの役目を果たすルキと後衛の私の間には兄がいる。兄を盾に距離を確保しつつ、下層への階段を下りて行った。

下りて行った先、

「あ、これ、マズいんじゃない?」

「ヤバい、ちょっと待って。」

地下十一階は、今までの十階層とは様相が変わった。まず、灯り。十階までは、洞窟の壁に含まれる発光する鉱石のおかげでダンジョン内が明るかったけれど、十一階にはそれが無いらしく、進む先は真っ暗。完全な闇が続いている。

「灯り、これで、イケる?かな。」

兄が取り出したのはトーチの形をした魔道具。先端部分にはめられた発光性の鉱石に、兄が魔力を込めた。

「あ。やば、ちょっとショボい。…部屋で試した時は、これでイケたんだけどなぁ。」

「うーん、まぁ、でも、こんなもんなんじゃない?目が慣れれば、少しはマシになるよ。」

「…いや、駄目だな。先の方の地面、荒れてっから、足元が危ねぇ。」

「え?地面って、向こうの?ルキ、見えてるの?」

「『夜目』使ってる。」

「…ルキって、実は何気にあれだよね?」

「あ?なんだよ、あれって?」

言いながら、ルキの視線がこちらを向いた。

「結構、地面の隆起が激しい。慎重に行きゃあ、移動は何とかなるけど、戦闘中、足元が見えねぇの、危ないだろ?」

「…カンテラは、一応、持ってきてます。浮遊で浮かしておけば、両手は空くので…」

「んー、まぁ、探知してっから、急襲されるってことはない、けどなー。」

「…」

言って、難しそうな顔をして黙り込むルキ。だから、私も、考えて─

「…兄さん、今こそ、兄さんの出番。」

「え?何?その、嫌な予感しかしない前振り?」

「あれ、あの、身体ピカーってするやつ。」

「え…?あー、あれ?え?あれやるの?」

「やって…」

妹のお願いに、兄が渋々頷いた。次の瞬間─

「っ!?ちょ、何!?眩しい!眩しいんだけど!?」

「シオンっ!?お前っ!?」

「…兄さん、光り過ぎ、光量、抑えて。」

「えー?俺、そういう微調整、マジで苦手なんだってー。」

皆に文句を言われて、発光していた兄の身体から光が消えていった。

「あ、しまった、全部消えた。失敗。もう一回、」

「ちょっと、待って!その前に、それ何なの?何で、シオンが光り輝くわけ?」

エルの詰問に、ヘラっと笑っている兄。

「面白いでしょ?これ。光魔法で、全身光らせてんの。」

「光魔法…、シオン、光魔法、使えるの…?」

「あー、うん、一応ね?あ!でも、期待しないで!俺の光魔法、殺傷能力ゼロ!光らせるだけしか出来ないから!」

「…」

エルとルキが微妙な顔になってる。でも、今はその「光らせるだけ」がとても重要。

「…兄さん、もう一回、今度はちゃんと加減して。」

「んー、いや、光の微調整って、ガチ目の難易度だから…」

兄が、少し考えるような素振りを見せて、

「…そうだ、セリさん?」

「…嫌。」

「いやいや、そう言わずに。これ、自分光らせるより、何かに流し込む方が調整しやすいと思うんだよね?ここは、セリさんが犠牲になって、」

「嫌。」

断固拒否していたら、横からルキの声がした。

「光らせんなよ、目立ち過ぎ。襲ってくれって言ってるようなもんじゃねーか。俺でもタゲ取り返せねぇよ、そんなもん。」

「えー?じゃあ、どうする?」

「…ルキを、光らせる?」

「やんねーよ?てか、他のもん光らせられるんなら、壁でも地面でも光らせときゃいいんじゃねぇの?」

「っ!?ルキ!天才かっ!?」

「…スゴい、その発想は無かったです。」

「…」

「…ルキ、諦めて。この子ら、これでマジだから。おふざけ無し。純度百パーの本気。」

「…」




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