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【魔王333号】マハリ地方で停滞 ”事前の対策を” ▶️6話
#1 発生のメカニズムは解明されていないらしい
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「…人型で強い魔王がカルガ地方で発生し、勢力を保ったまま北上、現在、マハリ地方で猛威を奮っている。」
「…え?」
「…繰り返そうか?『ヒト型で、』」
「あ!いや!いいです、いいです!要らないです!把握しました把握。完全に理解。」
「…今ので理解できたの?本当に?じゃあ、君達への依頼内容も理解したと考えていいのかな?」
「あ!いや、それは無理っす!流石に無理です!一から、一からお願いします!」
「…」
「お願いしまっす!」
「…魔王が発生。勇者は既に選定済み。指名で、S級のルキ君への勇者支援依頼が来ているけど、うちとしては君達パーティ込みでの派遣を考えています。」
呼び出されたギルドの受付、イグナーツさんに言い渡されたのは、ルキ指名で入った魔王討伐遠征の依頼だった。
「…どうだろう?引き受けてくれるかな?」
「いいと、」
何も考えず、いいともーと言いそうになった兄の口を、ルキが塞ぐ。
「…依頼は、俺一人で受ける。」
「っ!?なんで!?」
兄が驚きの声を上げる。私も、驚いてるし凹んでる。出来れば一緒に行きたい。
「…だってよ、勇者ってアレだろ?」
「アレ…?」
ルキの言葉に、兄と二人で首を傾げる。勇者とは、三、四年に一度発生する魔法の討伐を専門とする職業。魔王発生と共に、我こそはと思う人間が王都にある聖剣抜刀チャレンジに挑み、見事チャレンジ達成となれば勇者と認定される。レアな職業ではあるけれど、魔王の発生頻度が発生頻度なので、「世界に一人」というほど珍しくはない。
「…アレじゃないの?ルキが気にしてるのは?」
エルまでが「アレ」と言い出した。しかも、その意味が分かっていそう。どういう意味かと視線を向ければ、
「勇者ってさ、直ぐハーレム作るじゃない?」
「…え?」
「大して顔がいいわけでもないし、下手したら、支援の冒険者の方が強かったりするけど、それでも何故かモテモテ☆魔王討伐終わる頃には、大抵、ハーレム築いてるでしょ?」
「…そう、なんですか?」
「うん☆」
「…しかも、知ってるか?アイツら、魔王討伐の報酬に、一夫多妻の許可求めるんだぜ?…ほぼ全員な。」
「…」
強さに憧れるルキが、S級冒険者には目を輝かせるのに、勇者には塩対応な理由が、今分かった。
「…え?で、なに?勇者がそんな生き物なのは分かったけど。それが何でパーティ参戦反対、に……」
「…そういうことだよ、シオン。」
何かに気づいた兄と、エルの視線がこちらを向く。
(なるほど…)
理解しました。
「…ルキ、私は、魔王討伐に参加したいです。」
「っ!いや、でも、マジで、何あるかわかんねぇし、危ねぇだろ?」
「きちんと、ローブを着て参加します。」
「っ!…けど、なぁ…」
「…ルキと一緒に、行きたいです。ずっと、遠征にもついていけるよう、鍛えてきたつもりです。だから…」
「っ!分かった!分かったけど!ローブはマジでぜってぇ脱ぐな!?で、絶対、俺の側離れんなよ!?半径一メートル以内に必ず居るようにしろ!?」
「…戦闘時に半径一メートルだと、フレンドリーファイアの恐れが、」
「そんでもだ!大丈夫、当たらねぇよう、俺の方で避けっから!」
「…了解です。」
「…ヤバい。うちのパーティメンバーが凄くアホな会話してる…。」
「慣れなよ。セリちゃんの潔さを見習って。僕ももう諦めたし。」
エルのついたため息に、ルキがエルを睨む。それに肩をすくめて応えるエル。
「でもさ、僕、思うんだけど、魔王討伐なんて、それこそ、ヴァイズ・ミレンの出番じゃないの?彼と勇者だけで終わっちゃうんじゃない?魔王討伐って。」
「あー、それなー。」
兄が、苦虫を嚙み潰したよう。それきり黙ってしまったので、代わりに答える。
「…師は、飽きたそうです。」
「は?」
「若い頃に、散々、魔王討伐に参加して、全く興味が持てなくなったと言っていました。」
「…え?興味とかそういう問題?」
「だよなー。でも、マジで、あの人そういう人なんだよ。強キャラのくせに使用制限厳しすぎってゆー…」
「…」
黙ってしまったエルの代わりに、すっかり忘れていたイグナーツさんの声が聞こえて、
「…じゃあ、パーティ参加ってことで、申込の手続きはこちらでしておくからね。」
颯爽と受付を後にするイグナーツさんの背中を見送った。
「…え?」
「…繰り返そうか?『ヒト型で、』」
「あ!いや!いいです、いいです!要らないです!把握しました把握。完全に理解。」
「…今ので理解できたの?本当に?じゃあ、君達への依頼内容も理解したと考えていいのかな?」
「あ!いや、それは無理っす!流石に無理です!一から、一からお願いします!」
「…」
「お願いしまっす!」
「…魔王が発生。勇者は既に選定済み。指名で、S級のルキ君への勇者支援依頼が来ているけど、うちとしては君達パーティ込みでの派遣を考えています。」
呼び出されたギルドの受付、イグナーツさんに言い渡されたのは、ルキ指名で入った魔王討伐遠征の依頼だった。
「…どうだろう?引き受けてくれるかな?」
「いいと、」
何も考えず、いいともーと言いそうになった兄の口を、ルキが塞ぐ。
「…依頼は、俺一人で受ける。」
「っ!?なんで!?」
兄が驚きの声を上げる。私も、驚いてるし凹んでる。出来れば一緒に行きたい。
「…だってよ、勇者ってアレだろ?」
「アレ…?」
ルキの言葉に、兄と二人で首を傾げる。勇者とは、三、四年に一度発生する魔法の討伐を専門とする職業。魔王発生と共に、我こそはと思う人間が王都にある聖剣抜刀チャレンジに挑み、見事チャレンジ達成となれば勇者と認定される。レアな職業ではあるけれど、魔王の発生頻度が発生頻度なので、「世界に一人」というほど珍しくはない。
「…アレじゃないの?ルキが気にしてるのは?」
エルまでが「アレ」と言い出した。しかも、その意味が分かっていそう。どういう意味かと視線を向ければ、
「勇者ってさ、直ぐハーレム作るじゃない?」
「…え?」
「大して顔がいいわけでもないし、下手したら、支援の冒険者の方が強かったりするけど、それでも何故かモテモテ☆魔王討伐終わる頃には、大抵、ハーレム築いてるでしょ?」
「…そう、なんですか?」
「うん☆」
「…しかも、知ってるか?アイツら、魔王討伐の報酬に、一夫多妻の許可求めるんだぜ?…ほぼ全員な。」
「…」
強さに憧れるルキが、S級冒険者には目を輝かせるのに、勇者には塩対応な理由が、今分かった。
「…え?で、なに?勇者がそんな生き物なのは分かったけど。それが何でパーティ参戦反対、に……」
「…そういうことだよ、シオン。」
何かに気づいた兄と、エルの視線がこちらを向く。
(なるほど…)
理解しました。
「…ルキ、私は、魔王討伐に参加したいです。」
「っ!いや、でも、マジで、何あるかわかんねぇし、危ねぇだろ?」
「きちんと、ローブを着て参加します。」
「っ!…けど、なぁ…」
「…ルキと一緒に、行きたいです。ずっと、遠征にもついていけるよう、鍛えてきたつもりです。だから…」
「っ!分かった!分かったけど!ローブはマジでぜってぇ脱ぐな!?で、絶対、俺の側離れんなよ!?半径一メートル以内に必ず居るようにしろ!?」
「…戦闘時に半径一メートルだと、フレンドリーファイアの恐れが、」
「そんでもだ!大丈夫、当たらねぇよう、俺の方で避けっから!」
「…了解です。」
「…ヤバい。うちのパーティメンバーが凄くアホな会話してる…。」
「慣れなよ。セリちゃんの潔さを見習って。僕ももう諦めたし。」
エルのついたため息に、ルキがエルを睨む。それに肩をすくめて応えるエル。
「でもさ、僕、思うんだけど、魔王討伐なんて、それこそ、ヴァイズ・ミレンの出番じゃないの?彼と勇者だけで終わっちゃうんじゃない?魔王討伐って。」
「あー、それなー。」
兄が、苦虫を嚙み潰したよう。それきり黙ってしまったので、代わりに答える。
「…師は、飽きたそうです。」
「は?」
「若い頃に、散々、魔王討伐に参加して、全く興味が持てなくなったと言っていました。」
「…え?興味とかそういう問題?」
「だよなー。でも、マジで、あの人そういう人なんだよ。強キャラのくせに使用制限厳しすぎってゆー…」
「…」
黙ってしまったエルの代わりに、すっかり忘れていたイグナーツさんの声が聞こえて、
「…じゃあ、パーティ参加ってことで、申込の手続きはこちらでしておくからね。」
颯爽と受付を後にするイグナーツさんの背中を見送った。
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